炎罪のウロボロス

あくえりあす

30、アルファとオメガ


目が慣れた影響も当然あっただろう。そして頼りないとはいえ、外から入ってくる幾筋もの光のおかげもあって、室内の様子がこの場に限ってよくわかった。
上階へと続く、あたかも巨鳥が広げた両の翼を畳みこもうとしかけているようなデザインの対の大階段。部屋の中心、その天井には巨大なシャンデリアもあった。
結婚式場であろうか。
ふと気になり、私は後ろを振り向いた。
そこには観音開きのドアが朽ちて倒れてしまっていたため、開きっぱなしになった入り口があった。
なぜか、その奥の一室はエントランスよりも明るいように感じられた。
いや、間違いなく明るい。
私はまた、どうしてもその奥へと進みたくなり、欲望にその身を任せた。

「ステンドグラス……」

一歩踏み入れると、まず目に入ったのは正面に張り巡らされた大きなステンドグラスだ。
エントランスの窓ガラスとは違い、不思議とほぼ無傷の状態でそれらはあった。
中央にはステンドグラスへと続く一本の道。両脇には木製の長椅子が並ぶ。
私はさらに歩を進め、ステンドグラスへとどんどん近付いて行った。
正面下には7~8段ほどの階段があり、登り切った奥には高さが3メートルにも及ぶ十字架があった。
ここで見たものをすべて勘案した上で推論をまとめるなら、そこは式場内に設けられた教会だと結論付けるのが妥当であろう。

『Α Ω』

他に比べ明らかに見やすいとはいえ、やはり光量が余りに不足しているためはっきりとは確認はできないが、恐らくは様々な色彩が使用されているであろうステンドグラスには、5~6人ほどの人物が描かれていた。みな宗教上の重要人物ばかりだと思われるが、私にはそれらがどこの誰なのか、まるで分らなかったが為、それらには特に注意が向くことはなかった。
それに対し、正面の最上部に描かれていたこのΑ(アルファ)とΩ(オメガ)という文字は、しっかりと認識することが出来た分、強く印象付けられた。
もっとも――それが真に意味するところまで深く把握することなど当然、まだ15歳だった私には出来はしなかったが。

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く