炎罪のウロボロス

あくえりあす

24、怒りは恨みに。恨みは呪いに。


渦巻いていた全ての感情が、焦点を合わせるように一つに絞られてゆく。
それは憎しみだ。
自分がこうしてここに至り、罪を犯し「破滅」したのは、全部あの男のせいだ。
自分は悪くない。
抑えがたい怒りが込み上げる。だが怒りをぶつけるべき対象はここにはいない。
怒りは恨みに変わる。そしてそれは呪いへと負の昇華を瞬時にして果たした。

いっそのこと、こんなクソみたいな世界なんか滅んじまえばいい!

途方もなく身勝手な思考であるが、このときの私にとって、いや、ずっと以前から、これは嘘偽りのない本音であった。
なぜ自分だけがこんな目に合わなければないのか?
悲しく辛い出来事ばかりが間断なく襲い続けてきた、これまでの半生。私はこのとき、遂に感情を爆発させた。

「うおおおおおおおおおーっ!!」

私は叫んだ。全身全霊、可能な限りの力を振り絞り、暗闇の中、天に向かって私は咆哮を上げた。強い憤り、やり場のない怒りを強く込めて。
だがその刹那であった。遠くで鳴っていたサイレン音がこちらに迫りつつあることに私は気付いた。
その音量は次第に大きくなり、より明確に耳に届くようになってゆく。
私は、強張っていた全身から力が抜けていくのを感じた。もちろんリラックスしたわけではない。我を忘れ、怒りの頂点に達した心身が、急に現実に引き戻された瞬間、その均衡を失ったのだ。
だから私は体のバランスを崩し、一瞬その場にへたり込みそうになったがどうにか踏みとどまり、取り敢えずは暗い森の奥へと再び力なく歩を進めたのだった。

この先は……どこに辿り着くんだろう。

ひとたび近付きつつあったサイレンの音は、再び遠ざかってゆくように聞こえた。あたかも一直線にこちらに向かってくるような錯覚を覚えたが、それが解消されると、「恐怖感」がいくらか薄らいだがためか、私はさらに脱力した。その結果、おぼつかなかった足取りは一層不安定なものになった。
だが……一息したのも束の間であった。私はその刹那、まさに心臓が凍るような思いになった。私は背後に何か気配のようなものを感じ、無意識に振り返った……そのとき。クルマのヘッドライトが目に入った。

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