炎罪のウロボロス

あくえりあす

13、私の為の私だけの王国


三度三度の食事は絶えることなく届けられた。
部屋の前に置かれたそれを、私は扉の前に誰も居なくなったのを見計らって、室内に運び食べた。
次に食べ終えた食器を、注意深く部屋の前に出す。親からすれば、これが私が生きている証拠であったわけだ。

引き篭もって2週間も過ぎると、なんとしても逃れたいと思うある感情がふつふつと私の中で沸き起こり、すぐにそれで心の中は全て占拠され尽くすこととなった。
有り体に言えば、それは苦痛である。
特に日中は嫌で嫌で仕方がなかった。心の中は痛みでいっぱいになった。
やはり良心の呵責というやつだろう。皆が学校に行く時間帯に、自分だけが家に居る。
学校に通っていた時に感じたそれとは種類が違う途方もない孤独を感じ、また罪の意識にも苛まれた。
日が暮れ、夜になるとそうした罪悪感こそ軽減されるが、その分、また大きな不安が押し寄せて来た。
結局のところ、私は私の為の私だけの王国を築いたものの、それは決して幸福足り得ないという当然の事実を、身を持って再確認したにすぎなかったのだ。
それどころかこの行動は、現実からの逃避という最低限の要求すら満たされていなかったことに私は気付かされた。安住の地を求めて引き篭もった自室は、実のところ最初から、どこにも逃げ場のない、ただ息苦しさだけを感じる牢獄に過ぎなかったのだ。

私は大いに困惑した。
そもそもなぜ私は引き篭もったのか?
引き篭もって、私は何を得たかったのか?
いったい、何がしたかったのか?
考える時間だけは豊富にあった。私は自問自答し続けた。

「……そうだ」

そしてその瞬間を私はついに迎えた。
そうだ。そうだった。私はただ普通の生活が送りたかったのだ。普通の家族と、普通の生活をし、普通の幸福を感じる、ごくごく普通の日常。
ずっと憧れていた。それが私の夢だった。
だが、私にはそんな普通の思い出が皆無だったのだ。
現実の生活は、まるで私が理想としていたものとかけ離れていた。

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