炎罪のウロボロス
7、妻の笑顔、そして本心。
妻も笑顔を返してくれた。だがその瞳が、隠し切れない本心を雄弁に語っていた。不安であると。
だから私は優しく彼女を抱きしめた。
「ごめんね。お客様が来ているのに……私ったら……」
「いや」
私は妻の肩に手をやり、互いの距離を少し取った。そして彼女の目を見ながら、もう一度微笑んで見せた。
「ヘンな遠慮するなよ。結婚したとき、そう約束しただろ」
「うん。だね。……ありがと」
彼女も再び微笑みを返してくれた。私は察した。その瞳の奥にある本心を悟られまいとする気持ちを。
さすれば――何か、心残りのようなものを感じつつも、私はやるべきことをやるため、踵を返し次の行動に移すこととした。そもそも時間的にも他の選択肢はなかったが。
「お客様をお通しします」
秘書の声だ。
「ああ」
私は一人、応接室へと入って行った。
「ご到着されたら、そのままここにお通しなさい」
「かしこまりました」
応接室に設置されたモニターから秘書の姿が消える。直後そこには、こちらに向かうエレベーターの中の客人たちの姿が映し出された。
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