霧夢 〜運命って信じますか〜

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プロローグ 

キーンコーンカーンコ〜ン
学校のチャイムが鳴る。
前の学校より、少しゆっくりめなチャイムが今の葵には心地良い。

はずだった...。

朝の会恒例の転校生紹介で葵は自己紹介をしていた。きっと誰も聞いてないくらいの気持ちで、

「家庭の都合で...白川葵です。よろし」

最後までいう前に…、

「あ〜 ︎葵じゃん。よろしくなっ!」

一番後ろの席で制服を着崩してニコニコと笑う、ちょっと顔面偏差値高めの男の子。

(おまえにだけはよろしくされたくない。)

従兄弟で現在居候先の息子、貴志だった。

そもそも、どうして学校を転校することになったかというと...。


母の日に、葵の父と母は介護病院のおばあちゃんに逢いに行った。
その日は夕飯を外で食べる予定になっていて、葵はそれまでにと、母とお揃いの携帯ストラップを探しに小物屋さんに来ていた。

猫の可愛いストラップを見つけて悩んでいたら、カバンの中の携帯が鳴る。
マナーモードだから音はないけど、

知らない番号だなー、

なかなか切れない。あーめんどくさい。

仕方なく店の外に出て電話に出た。

「葵ちゃん?」

知らない人の声で名前を呼ばれて"ドキッ"っとした。けど、

「新手のオレオレ詐欺でしょうか?」
すごく冷静になって聞いてしまった。

電話の人はフッと笑って、少し困った声で
「守だけど、叔父さんは詐欺師では無いかなぁ」
「守おじさん?」
電話の向こうで少し笑って「あたり」と。

「ちょっと急な事故があってね。迎えに行くから今どこにいるか教えてくれる?」

数分後、守さんと合流し、車で病院へ向かった。
車内で祖母の所に向かう途中で両親が事故にあった事を聞いた。対向車線の車がはみ出して...。

ドライブレコーダーの検証で対向車線の運転手が前方不注意で運転していたことがわかった。
裁判の事や事故処理について話を聞いた。けど、事故の話より、裁判にかかる費用とか、お金の話ばかり。
中学1年の葵には正直よくわからない。
どうしたらいいか、悲しみより不安で、

守おじさんは保護者代理として、しばらく家にいてくれる事になった。
とは言え、このままずっとというわけにもいかない。

神様がいるのなら答えを教えてほしい。

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