TSお姉様が赤面プルプルするのって最高だよね

きつね雨

TSお姉様、囲まれる

 






「皆さん、静かにお願い出来ますか?」

 全部で9人の集団は、近づくと馬の速度を落として止まった。ウラスロの爺様が大きく口を開いたのを見て、俺は一瞬で側に寄り声を掛けたのだ。

 見た事もない三人は俺の魔力強化に驚いたのか、目を白黒させている。その後は顔を赤らめ、鼻息荒く俺に釘付けになった。まあ、俺の美貌は限界を超えてるからね! ふっふっふ……

「……どうした? まだ何かいるのか?」

 ウラスロは声を落としながらも馬から降りて来た。その短い手足でよく馬を操れるなあ……

「いえ、旅の仲間が体調を崩して……今眠っていますから、どうかお願いします」

 ウラスロは俺のキャラ作りに思い切り顔を歪めたが、特に何も言わなかった。良かったね? 余計なことを言う様なら気絶して貰いますから、ええ。

槍蒼の雨そうそうのあめの皆様もお久しぶりです。そちらの方々は初めてですね……私は冒険者のジル、この子はツェツエの勇者でクロエリウス。クロエリウス、ご挨拶を」

 俺は優雅に見えるよう、ゆっくりと頭を下げた。

「ツェツエのクロエリウスです。クロと呼んでください。お師匠様……すいません、ジルさんもそう呼びますから、お気軽にお願いします」

 クロも流石に王都に住む者として、洗練された様子を見せる。うん、格好良いよ、クロ。

「後一人いますが、今はお許し下さい」

 ウラスロは呆れ顔を隠しもしないが、俺は無視を決め込む。いいじゃん! ジルは格好良いのがいいんだから!

「ジル、久しぶりだ。暫くギルドに顔を出さないから気になってたよ。うちの娘がまた会いたいって煩くてな……気が向いたら会ってやってくれ」

 執事バトラー……いや違った、マウリツは口髭を蓄えたダンディなオジ様で、姿勢も素晴らしい。俺は内心、執事と呼んでいるのだ。数少ないダイヤモンド級冒険者の一人。槍を使わせたらアートリスでも一二を争う腕前で、家族思いの良い父親だね。娘さんは6歳になる可愛い子で、何やら気に入られたらしく以前は抱き着いて離れなかった程だ。無茶苦茶可愛いので、嫌じゃないけどね!

「マウリツさん、私も会いたいです。本当に可愛いらしい娘さんですもの……暫く留守にしてたのは、色々ありまして……ご心配をおかけしました」

 まあ、ニートしてたなんて言えないからね! こら!ウラスロ、溜息をつくんじゃない!

 他にも双子のブランコ、ブルーム兄弟。ジアコルネリとピピを合わせた5人がマウリツのパーティだ。双子は魔法士と治癒士、ジアコルネリは剣士、ピピはナイフ使い……俺はピピを内緒で忍者と呼んでるけどね。まん丸おデブのピピが素早く動くのを見た時は思わず、なんでやねん!って内心叫んだもん。

 新人らしい三人は少し遠くから俺を眺めていて、動きそうにない。まあ、初めて俺を見た男は似たような反応をするので驚いたりはしないけど。今はナンパされるより楽でいいや。

「ははは、娘も喜ぶよ。ありがとう」

「ジル、挨拶はもういいな。俺達が此処に来た理由は分かるだろう? まあ、あっちに纏まってる死体の山を見れば殆ど終わりだがな」

 アークウルフ達は街道の脇に寄せてある。クロが片付けてくれたのだ。邪魔だし、ターニャちゃんの視界から消えて欲しかったからね。

 ギルド長として確認に来たんだろうけど、ウラスロは偉いなあ。普通組織のトップが態々来る事無いと思う……まあ、その辺が俺も気に入ってるけどね。

「アークウルフが15頭現れたので、クロと二人で討伐しました。魔素感知も行いましたが、周辺には脅威はありません。何らかの突発的なものかと……」

「実際はジルさんが一人ですけどね」

「クロ……態々言わなくて良いのよ……」

 の討伐で、我が物顔をするつもりはないし、ジルのキャラ的に格好良い方を選ばないとね。案の定マウリツ達は感心した様だ。

「ふん……目撃した者の話しでは、お前一人で討伐したと聞いたからな。まあいい、アークウルフが討伐されたなら、それが一番だ」

「ジルさんらしいね。良ければどうやって倒したか教えて貰えませんか?」

 ジアコルネリが横から口を出したが、その目は憧れ半分欲望半分というところかな。ジルとして生きて来たから男達の目線に敏感になったんだよね。まあ気持ちは分かるから、ニコリと笑ってあげるけど。もちろん手は口元に軽く添えて上品に、ね。

「ふふふ……ジアコルネリさん、冒険者が種明かしなんてしませんよ? でも……行ったのは特別な方法ではありませんから……」

 ジアコルネリだけで無く、双子やピピ、マウリツさえも俺の仕草に目を奪われるのが分かった。うんうん、コレが堪らないんだよなー。

「アークウルフに限らずウルフ系は動きが読み易いですから……特に獲物の数が少ない時は、殆ど一緒です」

「周囲を囲って様子を伺い、一斉に襲い掛かってくるな……大半が同時で」

 ベテラン冒険者なら当然知っている事だが、若いジアコルネリに教える為だろう。マウリツは敢えて言葉にした。

「はい、マウリツさんの言われた通りです。その瞬間を狙って頭上から炎の矢を放ちました。アークウルフに気付かれない様に工夫した上で、ですが。残りは剣で対応して……そんな感じです」

「頭上から……」

 街道にはアークウルフの血痕が円状に残ったままだから、分かりやすいだろう。

「ジアコルネリ……簡単に言ってるが、俺には無理だからな? アークウルフ一体ならともかく、複数を同時に殺るなんて不可能だ。そもそも奴等の防御を抜くのが難しいんだよ。普通はコツコツと戦って、弱らせてからとどめを刺すんだ」

 魔法士のブランコがやれやれと溜息をつきながら答えてくれた。まあ、そうなんだけど。パーティとしての会話みたいだし、俺は口を挟まない。ジルは基本、あまり喋らないキャラだからね。

「俺やお前なら近接で戦う事になる。アイツらを一撃で倒すには、相当な腕が要る。それに、複数が相手なら此方も数を揃えないと話にならんよ」

 マウリツも同調し、俺の話しを基準にするなと警告していた。うんうん。まあ、俺に限らず他の超級なら一人で倒しちゃうだろうけどね。

「なるほど……ジルさん、同じ剣士として聞きたい事が沢山あります。今度時間を貰えませんか?」

 ジアコルネリは熟女好きと聞いていたが……まあ、此処は上手く断って……

「ジアコルネリ! 何を抜け駆けしてるんだ!? 俺達の決め事を忘れたのか? 連中に袋叩きに合うぞ!」

 ん? なんだなんだ? 何か物騒なんだけど……

「あ、あの……?」

「「もういい! ジル!!」」

「は、はい!」

 ブランコ、ブルームの双子が勢いよく同時に向き直ったので、俺はビックリしてしまう。
 
「「俺と食事でも一緒に……」」

 やはり同時に喋る双子は、互いを睨み付けて手を差し出してきた。その横に並ぶジアコルネリも同じ様に右手を差し出し頭を下げる。

「……えっと」

 これって誰かを選べって事だよね……? って言うかクロさん……? お前まで並んでどうする!? いそいそと並びご丁寧に手を服で拭ったクロ……

 四人の男が綺麗に整列し、右手を出して待っている……いやいやいや……あんたら何やってるの!? 特にクロ! お前は後でお仕置きだからな!

「はぁ……マウリツ、帰るぞ。街道の封鎖を解かないと駄目だからな」

 ウラスロは俺の苦境を見もしないで、マウリツを誘導する。マウリツも特に反論しないのか、止めてある馬へ向かって行った。

 ん? あの新人三人も此方に向かって来てるんだが!!

 最近声を掛けられないと思ってたのに、まさか組織的だったなんて……つまりファンクラブ的な……うぅ、マジかよ!

「あ、あのギルド長? マウリツさん……?」

 爺様と執事は談笑しながら馬に飛び乗り、あっさりと立ち去って行く。マウリツだけはこちらに手を振ったのが唯一の救いか。

 再び視線を戻すと……半円状に並んだ7人が揃って右手を出している。新人三人なんて自己紹介すらしてないよね!?

「……あの」

「「「お願いします!!」」」

「うひっ……!」

 何で綺麗に揃うんだよ!

 久しぶりに口説かれたけど、こんなの経験ないぞ……どうしたらいいんだ……?

「うぅ……ご、ごめんなさい!!」

 撤退! 撤退だ!

 魔力強化を行使して、音も無く馬車へと戻る。ターニャちゃんはさっきと変わらず眠っていて、俺はホッとした。全く、アイツら何なんだ……そっと幌を避けて様子を伺う。

「まだ、あのままだよ……こえぇ……もうクロは置いて行こうか……?」

 見ると奴等は変わらない姿勢のまま、動かない。

 うん、キモい。

 あれ……そういえばピピは? あのおデブが居ない……? 気になって周りを見渡すと漸く姿を発見した。此方をジッと眺め……と言うか、俺のはだけたマントの中を見てる……。

「一体いつから……気配をあそこまで絶つなんて……本当に忍者……?」

 俺に気付かれない様に視姦されていたと思うと、違った寒気が走る……あんなにヤバイ奴だとは……バレたんだから目を逸らしてくれよ!

 俺の周りには変態か、軟派野郎しかいないのか?

 うぅ、なんて可哀想なジル……あとでターニャちゃんに癒して貰おうな。

 一瞬[類は友を呼ぶ]と言う言葉が頭に浮かんだか、直ぐに否定する。

 俺は変態じゃない! 今は! 多分!




















 なんだかよく分からない内に解散した俺達は、再び馬車に揺られていた。ターニャちゃんには悪いがこのままだと宿場町到着が深夜になってしまうからね。クロに頼んでゆっくりと進んで貰ってる。

「クロ……さっきの、どういうつもり?」

 ターニャちゃんを出来るだけ起こしたくないし、御者台に二人並んでるけど、狭い! 色々と触れ合ったりなんかして、クロが喜んでるのが丸分かり……少しは隠そうよ?

「なんですか?」

「みんなが並んでたアレよ……! クロまで参加して……」

「ああ、アレですか。そうですね、未来の夫として参加しないのは不自然かと思いまして。お師匠様が他の男を選んだら何をするか自分でも分かりませんし、嫉妬とは恐ろしいものですね」

 恐ろしいのはお前だからな?

「何を言ってるの……せめて助けなさいよ、全く。私が困ってるの分かったでしょう?」

「そうですか? てっきり演技だと思ってました。普段見ないお師匠様は新鮮でしたよ? まるで何処かの国の王女様か貴族かと思いました」

「……王女とか貴族とか、どうでもいいわ。とにかく恥ずかしいでしょ、あんなの」

「毎日男達を千切っては投げ、千切っては投げ、そうお師匠様が言ってました。慣れているのでは?」

 はっ……!

「そ、そうね。 慣れてはいるけど……」

「なら大丈夫ですね」

「あ、うん」

 言いくるめられた気がする……クロの癖に!

 チラリとクロを見ると、ニヤニヤと笑いながら手綱を握り俺を見ていた。くっ……こいつ!

「クロ、前を向きなさいよ!」

「大きな声を出すとターニャさんが起きてしまいますよ?」

「あっ……」

 慌てて後ろを見たが、ターニャちゃんは俺のマントに包まれたまま動いていなかった。あぶねぇ……さっき掛けておいたんだ、マント。

「お師匠様、何であんな風に演技をしてるんですか? 僕はどのお師匠様も好きですから良いですけど……」

「実際はそこまで演技なんてしてないわ。昔お母様に煩くされたから、それなりに身に付いてるだけ。それに格好良いかなって」

「格好良いって、面白いですね。女性なら綺麗とか可愛いとか、望む事が違う気がします」

 そりゃ元男ですから! ジルは俺の理想をギュッと詰め込んだ最高の女だもんね!! 格好良くて、綺麗で、年上のお姉様が好みだからな。あっ、勿論ターニャちゃんは別ね。

「綺麗ではいたいけど、冒険者は甘く見られる訳にはいかないし……クロなら分かるでしょう?」

 クロも見た目通りの子供だから、舐められる事もあるだろう。

「ああ、なるほど。お師匠様、先程お母様に躾けられたと言いましたよね? その割に昔は男言葉でしたけど」

「クロ、黙って。ターニャちゃんに言ったら承知しないわよ?」

「はあ……中々大変ですね、お師匠様も。そのお母様はご存知なんですか?」

「何をよ?」

「お師匠様が危険な冒険者を生業にして、男言葉を使う事をです」

「知ってる訳ないでしょう。もし見つかったら大変な事になるわ。急いで逃げないと……」

 考えただけでも震えが止まらないぜ……男の自意識を持つ俺に、淑女たれと強制されたのは拷問に近い。別大陸まで逃げて来たし、簡単には見つからないだろうが……今は超級として名が売れてしまったから、時間の問題かもしれない。だが、今の俺は昔とは違う! 魔力強化したジルに追いつける者など存在しない! 

 つまり、逃げ切る事が出来る!

 ふっふっふ……超級の名は伊達じゃないぜ!

「お師匠様……逃げ足を自慢されても……」

 うっさいよ!

「クロはお母様の怖さを知らないから言えるのよ……ある意味魔王陛下より恐ろしいんだから……」

「一体どんな人なんですか……将来挨拶に行くのが怖くなって来ましたよ」

「それは無いから」


















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