TSお姉様が赤面プルプルするのって最高だよね

きつね雨

TSお姉様、お着替えを愉しむ

 














 うむ、美味い。


 マリシュカの店は住居兼店舗になっていて、奥にある扉から生活空間へ移動出来る。勿論玄関は別にある様だが、今は殆ど使ってないらしい。


 扉を開けて直ぐの場所は日本で言う土間になっていて、テーブルと椅子、採光用の丸窓、簡易的な水回りが目に入るこれは所謂井戸端会議ならぬ土間会議用に準備されているのだろう。日頃からお喋りに興じているのが丸分かりな使用感だ。


「ジル、そのお茶美味いだろう?」


「はい、香りも良いですし、不思議と何処か懐かしい感じもして美味しいです」


「そうかい! 凄く珍しい茶葉でね……別の大陸から来たモノだから、なかなか飲めるものじゃないよ!」


 ターニャちゃんはフーッっと息を吹き掛けて熱を逃がしている様だ……可愛い。


「……別の大陸ですか?」


 マリシュカは全身からドヤ感を醸し出しながら、ニヤリと腕を組んだ。俺もそれを見ながらお茶を舌で転がす。


「知り合い繋がりで土産を貰ったのさ! バンバルボア帝国産の特級茶葉らしいよ」


 ブーーッ!


 俺の生まれ故郷であり出奔して来た国の名前が思わぬ所から出て来て、口に含んだお茶を吹き出してしまった。あんな遠いところからどうやって!?


「何だい汚いね! 幾ら綺麗な顔してても、そういう所が貴族らしくないって判るんだよ!」


「けほっけほっ……す、すいません。少し気管に入ったみたいで……」


 学ランに入っていたのだろう青色のハンカチをさり気なく渡してくるターニャちゃん。キミ、モテたでしょう? うぅ……その上目遣いタマラン……。


「ありがとう、ターニャちゃん」


「いえ……バンバルボアと言えばジルさんの生まれ故郷ですね?」


 うっ……絶対内緒でもないけど、余り広めたくも無い情報だ。


「そ、そうだったかな? まあ、その話しはいいとして……」


「ジルの生まれ故郷だって!? そりゃ新しい情報だね! 皆が詳しく聞きたがるよ!」


 ヒィ……アートリスの拡声機ババアに知られたら明日にも街全域に伝わってしまうぞ!? 街中はまだ良いが、本国の奴等に伝わる可能性は消さなくては! 今の俺の立場上時間の問題なのは分かっているが、態々早めたりしたくない!


「おば様……バンバルボアの件は聞かなかった事にして貰えませんか? その……色々とあって余り知られたくないんです」


「……そうなのかい? ふーん、まあ其れならしょうがないね。誰にも秘密はあるし、美人なら尚更さ」


 頼むぞ……ホントに。


 ふと横を視線を送るとターニャちゃんが此方をジッと見ていた。直ぐに目を逸らしたが、何処か観察してるようで怖くね!?


「そういえば……」


 バンバルボア帝国産のお茶とやらで再び喉を潤すと、ターニャちゃんに聞かないといけない事を思い出した。


「ターニャちゃん、さっきの事だけど」


「はい、何でしょう?」


 ターニャちゃんは手に持ったカップをテーブルに置き、此方に耳を傾けてくれた。


「ほら、三人組に上手に反撃してたじゃない? なんて言うか、手慣れてるなぁって」


 正に流れる様な動きで三人中二人を戦闘不能にしたのだ。三人目すら僅かに狙いが逸れただけで、結果は変わっていたのかもしれない。


「……そうですね、彼等が何度か私の身体に触れようとして凄く不愉快になったんです。どうも勝手に触られるのが嫌みたいです、私。何故あんな事が出来たのかは分かりません」


 ……森からアートリスに帰るまで、ずっと手を握ってたんですが……勝手に。あわわわ……もしかして嫌だったのか? 謝った方が良いのか!?


「ターニャちゃん、ゴメンね? 知らずに森からずっと手を繋いで……」


 ターニャちゃんはキョトンと俺を見た後、両手で口を押さえて吹き出した。


「ブフッ!! ふふふ……ジルさん、面白い人ですねぇ。ジルさんに触られるのか嫌な訳ないじゃないですか! 嫌ならとっくに逃げてますから! ふふふ……ハハハ!」


「そ、そう? 良かった」


「そうですよ、」 


「お姉様!?」


 完全に遊んでるよね!? 目が笑ってるから!


 調子狂うなぁ……




























「おば様、また後で来ますね。選んだ商品お願いします」


「あいよ、纏めておくから帰りに取りに来な。 おまけも付けとくから楽しみにね!」


「おまけですか? ありがとうございます」


 礼をする俺を見たマリシュカは、ニヤリとした後ターニャちゃんに話し掛けた。


「ターニャちゃん、ジルを頼むよ? この娘、自分ではしっかり者と思ってるけど、はっきり言っておバカだからね。戦う力は最高らしいけど、女として抜けてるところが沢山あるんだから……」


「ちょっと……おば様?」


 失礼なオババだな! 俺の何処がおバカだって!?


「はい、任されました。 お姉様は私がしっかりと見ておきますので……弄り甲斐ありますし……」


「ターニャちゃん? 何か不穏な言葉が聞こえたんだけど!? て言うか、二人とも失礼ですよ!」


「冗談ですよ、お姉様。私は右も左も分からない余所者ですから、お姉様が頼りなんです。どうかよろしくお願いします」


 神妙な表情で頭を下げて、チラッと上目遣い。


「そう? まあ、このジルに任せておけば大丈夫だからね! さあ、行きましょうか!」


「ちょろい」


 何か聞こえた気がするが、可愛いターニャちゃんに頼られたからには頑張るしかないでしょう!


 まだ大事な用事が残ってるからね。
























 異世界転移、或いは転生。


 現代日本とは違うその世界は、剣と魔法の力が席巻している。送り出された世界に順応し、特有の知識を以って無双する彼等は正にヒーローだ。


 魔物相手に魔法をぶっ放し、剣を振り回す。 そのなんと気持ち良いことか。人々から称賛と羨望の眼差しを受ければ、脳内に快楽物質が溢れ満ちて絶頂を迎える。


 TS転生……男性の自意識を持ちながらも女性へと転じた俺は、自らの隠された願望が爆発した。


 蛹が美しい蝶に変わる様に、自身の理想を自身に課したのだ。魔力は万能では無いが、理想の追求には随分と役に立った。ジルは大空へ羽ばたき、俺以外は誰一人手の届かない高みへと達した。


 そして今……俺は更なる夢へ向かい、挑戦を始めたのだ。








「ターニャちゃん、下着と服を揃えないとね? 私のお勧めのお店に行きましょう」


 遂に……遂にこの時が来た……俺的TSイベントTOP3の一つ、[お着替え]だ!


 ターニャちゃんは俺の知る中学生とは少しだけ違う様だが、所詮は子供。思春期真盛りであろう元男の子現女の子には刺激が強過ぎるかもしれない。だがそれこそが俺の挑戦には重要なのだ。


 ターニャちゃんが生まれて初めての下着を装着し、やはり初めてであろう女の子の服に袖を通す。


 恥ずかしいだろう、他人に見られたく無いだろう。


 ターニャちゃんがプニプニの頬を紅く染め、プルプルと震えて恥じらいを覚えるのを見たい! ククク……予定と違い俺が弄られていた気がするが、それも此処までよ……あの店は直ぐ其処だ。




「さあ、このお店だよ。パルメさん、居ますかー? お客さんですよー?」


 ーー此処は「パルメの店」


 たった一人、僅か20歳で衣料店を開いたのはパルメさんだ。開店から10年近く経ち、今やツェツエ王国では名の知れた場所となった。ほぼ全てが女性用の衣服で、パルメさん自らがデザインと縫製を行なった商品も数多い。


「あら? 滅多に来てくれないからギルドに依頼を出そうとしてたのに……手間が省けたわ」


 色鮮やかな生地や布地が整頓された棚の向こう側から、銀髪の頭をひょっこりと覗かせた人こそパルメさんだ。何時もの白いエプロン姿で、何かを裁縫していたのだろう。手には針と毛糸らしき物が握られている。


「依頼って何ですか……?」


「新作のモデルに決まってるじゃない! 貴女程の逸材は探しても居ないから、アイデアばかり溢れて大変なのよ?」


「冒険者ギルドにそんな依頼出さないで下さい! 冒険者らしい依頼しか受けませんからね!?」


「はあ!? 私にとっては冒険と一緒よ! ジルと呼ばれる秘境への旅路を馬鹿にしないでくれる!?」


「そんな秘境は無いですから!」


 折角の綺麗系お姉さんのパルメさんなのだが、少し残念な人なのだ。ターニャちゃん……お前も仲間だろうって視線やめてくれない?


 ハアハアと息を荒げる私達にターニャちゃんからそんな冷ややかな視線を感じる。拙い……またペースが乱れてるぞ……


「……パルメさん、今日はそんな用事で来た訳じゃ無いんです。この娘、ターニャちゃんの服を揃えたくて」


「そんなの最初から分かってるわよ」


 この野郎……絶対値引きさせてやる!


「お姉様、終わりました? パルメさん、ターニャです。よろしくお願いします」


「あの……ターニャちゃん、何か私に冷たくない?」


 学校の出し物じゃないからね!?


「ターニャちゃんね? ようこそパルメの店へ。とりあえず、ジルで遊ぶのは此処までにしておくわ」


「パルメさんまで!?」
















「あれぇ……?」


 目の前でパルメさんは真剣な眼差しを送っている。


 ターニャちゃんはブルーとグレーの下着を両手に持ち、角度を変えたりしながら吟味している様だ。俺的お勧めのピンクや白には目もくれず、かと言って可愛らしさも忘れていない。


「パルメさん。私は成長もまだですし、どうなるかも分かりませんよ?」


「これからサイズも変わっていくわ。窮屈な物より柔らかく包む物を選びなさい。その生地は伸縮するし、肌触りも良いでしょう? 今は無理に形を整えたり、支えたりするのは要らない。合わなくなったらジルにどんどん買わせればいいから」


「成る程……試着はして大丈夫でしょうか?」


「ターニャちゃん、普通はお金を貰わないと駄目だけど特別に許可するわ。条件付だけどね」


 パルメさんはターニャちゃんの耳に口を寄せて何かを呟いている様だ。うんうんと頷くターニャちゃんはニッコリと笑い、勿論大歓迎ですと返事をした。


 ……なんの相談だろう?


 因みに現代日本と違い、試着は普通行わない。各家庭で購入した物を調整するのが当たり前だからだ。そもそもサイズに種類が無い。全く同じ種類の服に複数のサイズなど有りはしないのだ。


 勿論貴族は別だ。屋敷や城に人を呼びつけオーダーメイドするし、一度着たら二度と袖を通さない事も良くある。 


「よし、此処だとアレだからあのカーテンの向こう側で試着してみて。確認するから着たら呼んでね?」


「分かりました。お姉様、何枚くらい買えば良いでしょうか?」


「……う、うん? そ、そうね……気に入ったのが有れば何枚でもいいけど」


「お姉様、そういう訳にはいきません。最低限で充分ですから」


「ターニャちゃん、ジルに経済観念を期待しちゃ駄目よ。ジルと一緒に住むのよね? ならアレがあるからとりあえず5,6枚で大丈夫でしょ」


「アレですか?」


「ジルの反則技よ。魔力を利用した洗浄装置で乾燥までしてくれる理不尽で巫山戯た代物よ」


 ターニャちゃんは洗濯機と小さく呟き、カーテンの向こう側へ消えていった。


「ほら、アンタも選んであげなさいよ? その手に持ってるのは却下で」


 サテンのピンクが駄目だと!?


「サテンは吸水性も強度も弱いのよ? 肌触りは良いだろうけど取り扱いも難しいし、あの子にはまだ早いわ。最初に選ぶのがソレって、アンタ相変わらず男みたいで残念な子……まあ、ドレス位なら良いけどね」


 ……確かに俺目線で選んでいた事は否定出来ない。 だって大人の下着と少女のギャップが見たかったんだ……変態と呼ばれても構わない。


「ジル……貴女はとんでもない美人よ。スタイルも完璧と言っていいし、どんな衣装も着こなすでしょう。でも、残念なの。貴女は残念美人だと自覚しなさい」


「パルメさん、さっきから酷くないですか!? ほら、今も頑張って選んだの着てますから!」


「ソレは冒険者の装備でしょう。貴女、装備のセンスは良いから。頑張ったわ、偉い偉い」


「パルメさん、着ました。確認して貰って良いですか?」


「了解。ジルも確認しなさい、お姉様なんでしょう?」


「……はい」














 可愛い、凄く可愛い。身体の凹凸は少なく、如何にも子供らしい体型は非常に可愛らしい。選んだ下着も丁度いいみたいだ。


 当たり前だが色気などは全く感じない。俺は前世でも子供を育てた経験は持たないが、親心とはこんな感じなのだろうか?


 パルメさんも少し確認しただけで、問題ないわねとすぐにターニャちゃんから離れた。


「お姉様、これにします。パルメさん、さっきのグレーとブルー系で揃えたいと思います」


「それだけじゃ駄目よ。お姉様はピンクが好きみたいだから少しだけ付き合って上げなさい」


「ピンクですか? 如何にもですねぇ……」


 ターニャちゃんの発した言葉の後半は聞こえなかったが、ピンク色も手に取ってくれた。 


 次は服ですねと、ブルーの下着姿で仁王立ちのターニャちゃん。






 可愛いよ? 益々好きになりましたよ?


 でも、俺の挑戦はどうなったん?


 紅く染まった頬とプルプルと震える恥じらいは何処に?










「あれぇ……?」



























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