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約束の大空

佳川鈴奈

4.子猫と呼ぶ人 - 花桜 -




気がついた時、
私が居たのは狭い真っ暗な場所。




……柔らかい……。





えっ?




慌てて、その場所から飛び起きようとして
頭を打ち付ける。




「やっ、やばっ」



その人は舌打ちをした後に言うと、
私を軽々と抱えてその場所を走っていく。




「はっ、放して!!」



暴れる私の口元を塞いで走り続ける。




えっ?

屋根?





その人に抱かれたまま
キョロキョロと周囲を見渡した私は、
私を抱く人が屋根の上を走っていることに
気が付いた。 





「やっぱり。

 だよなぁー。
 ばれてたよなー」





私を抱いたまま、
小さく独り言を呟く。




「あっ、あの……。
 何が?」

「あぁ。

 今、ちょっと待ってな。
 取り込み中だから。

 ちょっと、怖いかもだけど
 オレのこっち側にしがみついててな」



何が何だか、わからないままに
言われるままに、その人の体に
しがみつくと背後で……何かが風を切る音を感じた。



私を抱きながらも屋根の上をかける
スピードの速度が落ちることがない。


それよりも益々、スピードが上がっていくようで。




「まけたか……。

 しつこいんだよ。
 しつこいのは嫌われるって知んないのかねぇー」



一人……また呟きながら、
片手で支えていた私をあろうことか……
お姫様抱っこに抱えなおして行き詰った屋根から、
そのまま下に飛び降りた。




「きゃぁぁ」




突然のことで、
咄嗟に目を閉じる。




「あのさぁー。

 お前、きゃーって悲鳴ばっかあげてないで
 なんか言うことないの?」



呆れたように紡がれた言葉の後、
私はお寺っぽい境内の見える庭先へと下ろされた。






えっ……。





これ、何処?






さっきから今、自分の身に
起きたことばかり整頓するのに夢中になって
状況整理が……追いつかないよ。




私……。



確か……瑠花と舞と一緒にケーキ食べに
行くことになって。



歩いてたら、そうだ……雷。



雨が降って、雷が鳴って空が割れたんだ。





その中に吸い込まれた……。





えっ?




「瑠花?
 舞?

 ねぇ、瑠花と舞は何処?」




思わず、目の前に居た私を助けてくれたらしい
男の人の肩をガシっと掴んでゆさゆさとゆさぶる。



「おいっ。
 
 ったく……お前さぁー、
 やめろよ。

 それに……ちょっとは自分の置かれた状況考えたら?」



男の懐には、
キラリと輝く光。



ゆっくりと一歩ずつ
後ずさりしながらも
相手を真っ直ぐに見据える。




「ちょっと待った。

 オレ、お前とやりあうつもりはないからな。

 仕事に忍びこんだ屋敷で、
 いきなり上からオレつぶすように降ってくるし、
 オレ、ちゃんと受け止めたったやろ。

 まぁ、お前……柔らかくて
 オレも嬉しかったけどもうチョイ、
 ふっくらしとるほうが好みやけどな」



はぁ?
何言ってんの?

コイツ。




「まぁ、そうやってオレ睨んでも
 問題は 解決せーへんよ。

 で、アンタなんであんなとこ、
 おったんや?」




なんで、
あそこに居たって?






そんなの私が聞きたいよ。





ここ……ホント何処なんだろう。



見れば見るほど時代劇の中みたいな景色で、
目の前には、うす暗い空が広がるばかり。




見慣れた電柱の柱も、
電線も見当たらない。




「あの……。

 ここ、
 何処ですか?」



突然、そう尋ねた私にびっくりしたのか、
その人は、私の額に手を触れる。



「熱、出てへんな」

「ほぇっ?」



戸惑いのあまり、
間抜けな声を出してしまう。



「頭、打ったりしてないか?」


続いて、両手で私の頭を
ガシっと掴むと髪をかき分けながら
何かをしてた。



「あのっ。

 別に頭なんて打ってません」


「打ってない言うてもお前、
 今、何処かわからんのやろ?

 記憶……なくなったんか?」



目の前で、ふざけた態度をとりながらも
冷静に私のことを分析している観察力。




誰……この人?




ゆっくりと深呼吸をして
まずは自己紹介からだよね。



この場合。




一応、この人……私のことを
助けてくれたみたいだから。



「記憶喪失じゃないです。

 初めまして。

 私、山波花桜
 (やまなみ かお)です。

 友達と逸れてしまって……。

 私の他に二人いませんでしたか?」





二人と会わなきゃ。





「いやっ。
 
 降ってきたの、
 花桜だけだし。

 オレは、山崎」




名前を名乗った、
山崎さんに初めて頭を下げた。





「山崎さん、
 ここは何処なんですか?」


「何処って、
 文京二年の京」




文京二年?



えぇーっと何時代だった?





でも……現代じゃないことだけは
確かだよね。




「それでは山崎さん。
 
 いろいろとお世話になりました。

 ごきげんよう」



にっこりと笑って
その場を歩いていく。



「んで、お前……そのまんま、
 どこ行くの?」



気が付くと私の目の前に音もなく着地して、
真っ直ぐに見据えたまま声を発する。




えっ?



今……着地音なかった。



それに……この身のこなし。




さっきの屋根の上での
戦闘にしても……強い……。




「決まってません。

 どこに行くかなんて
 わかりません。

 でも……行かなきゃいけないんです。

 友達が二人、
 私を探してくれてるはずだから」





そう。



舞も瑠花も、
ちゃんと見つけなきゃ。



ちゃんと見つけて、
三人で……この世界から帰る道
見つけるんだから。





「夜の京は物騒なんや。

 女の子一人で人探しなんか
 するもんちゃうで」

「でも……」

「わかったわかった。
 
 子猫、拾たんオレやから、
 責任もって面倒みたるわ。

 花桜の友達、探すんも、
 手伝う(てつどう)たる。

 だから、そんな思いつめた顔しなや。

 可愛い顔してんのに、そんな顔しとったら
 だいなしや」



山崎さんはそう言うと私に笑いかけた。



それと同時に、手刀が入って
鈍い痛みと共に私は意識を失った。




 





「花桜っ、花桜っ起きて」





誰?



誰かが体をゆっさゆっさ……してる。





そして……次の瞬間、
身の危険を感じて慌てて飛び起きると
危険物を素早く受け止めた。






「あっ、瑠花……」


「ったく、花桜。
 
 あっ、瑠花じゃないわよ。
 
 アンタ、良く今の状況下で
 寝られるよね」




寝られる?


何?



ここ、何処?




慌てて、キョロキョロと見渡すと、
破れかけた障子に時折、隙間風の入る一室に
へったんこの布団を敷かれて
眠らされてたらしいことに気が付いた。





「君たち何話してるの?
 怪しい動きしたらすぐに殺すよ」




まだ幼さの残る冷たい声が
部屋の外から響いてくる。




そして……次に姿を見せたのは、
山崎さん。




屋根から、またまた足音を立てずに
部屋の中に入り込むと言葉を発しようとする
私と瑠花の口を一斉に塞いだ。







『まてや』

待てや。


『さっきは わるかった』


さっきは悪かった?





声を発せずに、口を動かして
言葉を伝える山崎さん。




『ここは 
 おれのしごとば』



ここはオレの仕事場。




『えらいひとには
 かおのこと
 はなしてきた』



えっ?

偉い人に、
私のことを話してきた?



『だから、かたのちからをゆるめろ』



だから肩の力を抜けって。




「肩の力を抜けって
 バカいってるんじゃないわよ。

 こんなとこで、肩の力なんて
 抜けるわけじゃないでしょ」



ささやき声でまくしたてる。



『おちつきやー。

 おとなしい
 しとったら

 なるよーにしたるから』




それだけ告げて、山崎さんは、
また一気に屋根の方に消えてしまった。





二人だけになった部屋。





ようやく再会できた、
瑠花と肩を抱き合った。





どうなってくんだろう。
私たち……。





それに……舞、
貴方は何処に居るの?

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