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約束の大空

佳川鈴奈

2.空が割れた日 - 瑠花 -


高校総体当日、私、岩倉瑠花【いわくら るか】は、
親友の花桜が出場するってことで日曜日に、
わざわざ制服に袖を通して会場に顔を出した。


花桜が出てる間の試合は応援して、
いなくなったら携帯電話を触る繰り返し。


花桜の優勝でその試合が
終わったころは、すでに夕方。


親友が着替えを済ませて重たい荷物を持って
顔を見せたのは、その後。



「お疲れ」


にっこり笑って微笑みかけた私。



花桜の隣には花桜の友達、
加賀 舞【かがまい】が姿を見せる。



舞はフローシアではなくて、
他校の生徒なんだけど小さい時から、
花桜のお祖父ちゃんの道場に入門してて、
花桜とは幼馴染。


花桜の家に、小さい時から遊びに行ってた
私にとっても大切な友達。


そんな二人が全国大会で戦って、
一位と二位になった。




「有難う、瑠花。

 応援来てくれてたんだ」

「うん。
 
 花桜も舞も凄すぎるよ。
 二人のお祝いしなきゃ。

 寄り道できるでしょ。
 今日、奢るよ。

 ケーキでも食べに行こうよ」



二人を
誘って会場を後にする。


三人で歩き始めて数分後。

突然の激しい雨。

雷が轟【とどろき】、
空に閃光が走り……割れた……。




その光に飲み込まれながら、
私たちは意識を失った。














目が覚めた場所は真っ暗な世界。



空を見上げると、
お月様の光がやけに眩しかった。




「花桜?
 舞?」





暗闇に手を伸ばして探りながら、
親友の名前を紡ぐ。





さっきまで、
三人で一緒にケーキを食べに行こうって
話してた二人は……そこに居ない。






えっ?






暗闇に視界が慣れ始めた頃、
私の目はテレビの中の見慣れた景色を映し出す。






何?






その場所はまるで時代劇のセットにでも
出て来そうな世界。







肩から掛けた、
鞄の持ち手を握る手に思わず力が入る。





あっ、携帯。




制服のポケットに潜ませてある、
携帯電話に思わず手を伸ばす。




電源は入っているのに、
電波は届いていない。




待ち受け画面の電波レベルを示す
表示は……一本の棒すら立ってなかった。






えっ?






タイムスリップ?






いやいやいや。




そんなの嫌よ。







勘弁してよ。




そりゃ、歴史モノを読んだり、
ゲームしたりするのは好きよ。



勉強もスポーツも大嫌いだけど、
おしゃれと、歴史はベツモノ。



戦国時代とか大好きだし、
その次にお気に入りは幕末だけど。


いやっ、でも……ありえないでしょ。




そうだよ。


夢だよ。






私……夢でも見てるんだよ。







思わず自分の頬をムギュっと
力いっぱいつねる。





イタっ。





自業自得と言えばそうなんだけど、
思いっきり抓った頬を掌でさすりながら
真っ青になる。






痛みがあるってことは、
これは現実なわけで……。





一気に恐怖感が押し寄せて、
私はその町の中を二人を探しながら歩き始めた。





ふいに背後から、首元にかかる腕。



誰かに引っ張られたかのように
その腕をまわされた首元。


視線の先に映るのは銀色の刃。


委縮する体。



「いやぁーっ!!」




恐怖に震えて叫んだ口元には、
首元にまわされた腕が声を封じるように
塞ぐ。




「煩いなぁ-。
 それ以上、騒いだら本当に殺すよ」



まだあどけなさの残る声が
シーンと静まり帰ったその場に流れる。


その口調があまりにも冷たくて
震える体を必死にやり過ごして
恐る恐る背後の人を見たくて、
顔だけを上にあげていく。




あと少しで、
顔が見れる。






そう思った瞬間、
私の首元にまわっていた腕は
離れて、同時に背後へと押しやられ、
入れ替わりにその人が素早く動いて
倒れる間際、その人の切っ先が
暗闇に輝くのを見た……。



絶叫と呻き声が響き渡る。







土の上に倒れこんだ私は、
思わず耳を塞ぎたくなる
現実に、体すら動かすことも出来ずに
そのまま腰を抜かした。









人を斬ったばかりの
その人は、無邪気な微笑みを携えて
近づいてくる。





笑っているのに、
その目は何も笑っていない。










私も殺される……。









覚悟して、目を閉じたとき
私の目の前に手に持った刀を突きつけた。







「見たよね……」





クスリっと笑いを含んだ声が
静かに告げられる。





ゆっくりと顔を見上げた
その人は……まだ幼さの残る
とても綺麗な青年だった。






その視線に浚えられたまま、
何かに暗示でもかかったかのように、
小さく頷いた。





「悪いけど、
 ついてきてもらうよ。

 それとも……
 今すぐ、ここで殺されたい?」




その声に、
慌てて首をフルフルと振ると
その人はゆっくりと刀を鞘へと戻した。




「行くよ」




先に歩き始めたその人が、
ついてこない私に気が付いて戻ってくる。




「君……僕に殺されたいの?」



相変わらず、おどけるように
笑いを含んだ言い方で紡ぐのに、
目だけは全く笑っていなくて。 





「あっ、
 ……あの……。

 腰が抜けちゃって立てないんです。
 だから……」

「立たせてくださいって?
 もう……めんどくさいなー」



そう言いながらも、
私の前に立つとその手を差し出してくれる。


その手をゆっくりと掴み取ると
思った以上の力強さで私を支えながら
引き寄せる。


立つことが出来た私は、
その人の胸の中に抱きとめられる形で
立ち上がることが出来た。




「あっ……、
 有難うございます」





その人の腕の中から
離れて、謝罪する。






見れば……見るほど
……綺麗なんだけど……。






「ほらっ、
 さっさと動いて……」




促されるままに、
その見慣れない町を歩いていく。



その人の歩幅を追いかけるのに
必死で、歩き続けて辿りついた場所は
時代劇に出て来そうなお屋敷。




「総司。
 出掛けていたのですか?」



屋敷に入ってすぐ、
穏やかな声が聞こえる。




「えぇ」

「そちらは?」

「あぁ、見られたんですよ。
 人殺しの瞬間を」 

「総司、それはいけませんね」

「その場で口を封じても良かったんですけど
 とりあえず、近藤さんに指示を仰ぎたくて」

「連れてきたと言うのですね」




耳を澄ませて聞いて捉えられる名前、
総司……って。





まさか、


「沖田総司っ!!」







思わず叫んだ私は周囲を見渡して
慌てて、口に手を当てた。






「貴方、総司の名を
 ご存じなのですね」





落ち着いたら口調で、
ゆっくりと話しかけるその人が
近づいてくる。



私の全身を上から下まで
じっくりと見つめる。






「見れば……見慣れぬ服装を
 纏ってらっしゃいますね」





二人の男性に凝視されて、
鞄を掴む指先に力が入る。




「申し遅れました。
 
 私は山南敬助。
 
 総司の殺しを目撃された
 不可思議な衣を纏った貴女を、
 野放しにすることなど 出来ないのですよ。

 総司、その方を奥の部屋へ。
 他の隊士たちに見つからぬうちに」

「はい。

 始末の判断は、
 上の人に任せますよ。

 ただし……息の根を止めるときは、
 僕に言ってくださいね。

 僕の獲物ですから」




沖田総司。
山南敬助って……。




うそっ、
新選組の名前じゃない。




ってことは、
ここは……幕末?





しかも、私の目の前で
人を殺すや殺さないや、
物騒な会話ばかりしないでくれない?




って、マジ
どうしたらいいのよ。




全国大会のお祝いに
ケーキを食べに行こうとしてただけなのに。




こんなことに
なっちゃうなんて。 






逃げ出せる雰囲気も全くなくて、
そのまま総司と呼ばれた男の子に
連れられて、屋敷の中の奥の部屋に
放り込まれた。






「君、動いたら殺すから」




クスリと相変わらず、
笑いの含んだ顔で告げて部屋を出て行った。




一人になった真っ暗な部屋。





シーンと静まり返った
暗闇に耐え切れず、鞄の中から、
携帯電話を取り出す。




携帯画面のライトが、
周囲を薄明りで照らし出す。





待ち受け画面には、
大好きなアーティスト・YUKIの写真。



データーから、
仲良し三人組の写真を開いてみる。



夏に遊園地に遊びに行った時の
三人で撮った記念写真。







花桜……
舞……






二人は何処に居るの?






……逢いたいよー……。

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