旦那様は魔王様
10
「ごめんなさいってばぁ、沙良様ぁ」
ミリーは両手を合わせて謝っていた。
シヴァの腕に抱き込まれて寝ることになった昨夜、沙良はほとんど眠ることができなかった。
朝、寝ぼけ眼の沙良が完全に覚醒するより早く、沙良はシヴァによって部屋に戻された。
そこへ、満面の笑顔を浮かべたミリーがやってきて、「昨夜はどうだったんですかぁ」と嬉しそうに訊ねるのを、沙良は恨めしげに睨みつけた。
ミリーは沙良の顔を見て、まずい、と思ったのか、慌てて取り繕うように謝りはじめたのだが、沙良はぷいっと顔を背けて、スケスケの夜着からドレスに着替えはじめる。
「機嫌なおしてくださいよぉ」
ミリーは沙良の着替えを手伝いながら機嫌を取るが、沙良の機嫌はなかなか直らなかった。
なぜなら、すっごく恥ずかしかったのだ。
スケスケの夜着もさることながら、シヴァの腕に抱き込まれて、彼の体温と鼓動を聞きいている夜の間、恥ずかしすぎて死にそうだった。
(シヴァ様は、すぐ寝ちゃうし……)
沙良は緊張で目が冴えてしまって、どんなにがんばってもなかなか寝付けず、ようやくうとうとしはじめたのは、明け方近くなってからだった。
だからすごく寝不足だし、一晩中緊張して体に力を入れていたせいか肩も痛いし、なによりまだシヴァの体温が残っているような気がして、脳が沸騰しそうだ。
シヴァな沙良を花嫁と言ったが、今までスキンシップらしいスキンシップは一度もなかったのに、突然同じベッドで眠るなんて、沙良には難易度が高すぎたのだ。
「沙良様ぁ」
本当に反省しているのかどうかは怪しいが、ミリーは必死で謝っている。
沙良はぷくっと頬を膨らませて拗ねたまま、それでもミリーをこのまま無視し続けるのは良心が咎め、しぶしぶ口を開いた。
「もう、あんなことしないでくださいね」
「わかりましたぁ! もうスケスケ夜着姿でシヴァ様の部屋には飛ばしません!」
「……約束ですよ?」
本当にわかっているのか、と胡乱な目つきでミリーを見るが、彼女はにっこりと微笑んで頷いた。
「もちろんです! ……でもぉ」
ミリーの笑顔が、なにやらワクワクと楽しそうなものに変わる。「んふふ」と口元に手を当てて、ミリーはにやにやしながら言った。
「どうだったんですかぁ? 昨夜はぁ。……らぶらぶ? らぶらぶですか?」
ぼん、と沙良の顔が火を噴いた。
「な、ななな、何言いだすんですかぁ!」
顔を真っ赤にした沙良は、大慌てでブンブンと首を振る。
「えー? だって、朝までシヴァ様と一緒でしょぉ? 何もなかったんですか? ぜんぜん? これっぽっちも?」
ミリーは、親指と人差し指で長さを図るような仕草をする。
「ありません!」
「ええー? ないんですかぁ? なにも? スケスケ夜着で突撃して、なにも?」
沙良は突撃していない。無理やりシヴァの部屋まで飛ばされただけである。
「健全男子として、それってどうなんですか。ありえません!」
よほど不満なのか、ミリーはチッと小さく舌打ちしている。
一体ミリーが何を期待していたのか、沙良は怖くて訊けなかった。訊いたが最後、どんな爆弾発言が飛び出すかわかったものではない。
「い、一緒に眠っただけです……」
シヴァに抱きしめられて、という部分の説明は、恥ずかしいので割愛した。そのせいか、ミリーの目が半眼になる。
「ほんと、あり得ません! あの人は五歳児ですか!? 一緒におねんねしましょうね~なら、五歳児だってできるんですよ! いいえ、五歳児だって手ぐらいはつなげるんです!五歳児以下!!」
「………」
もはや、沙良には突っ込む気力もなかった。
ミリーは、沙良が半ば放心状態のようにぐったりしていることには気づかず、爪を噛んでぶつぶつ言いはじめた。
「スケスケも効かないんですか。あんなの、ほかの誰かさんならイチコロなのに。ああ、もう、次はどうしてやりましょう……」
頼むから、もうこれ以上変な気は起こさないでほしい――
沙良は、切実にそう思った。
ミリーは両手を合わせて謝っていた。
シヴァの腕に抱き込まれて寝ることになった昨夜、沙良はほとんど眠ることができなかった。
朝、寝ぼけ眼の沙良が完全に覚醒するより早く、沙良はシヴァによって部屋に戻された。
そこへ、満面の笑顔を浮かべたミリーがやってきて、「昨夜はどうだったんですかぁ」と嬉しそうに訊ねるのを、沙良は恨めしげに睨みつけた。
ミリーは沙良の顔を見て、まずい、と思ったのか、慌てて取り繕うように謝りはじめたのだが、沙良はぷいっと顔を背けて、スケスケの夜着からドレスに着替えはじめる。
「機嫌なおしてくださいよぉ」
ミリーは沙良の着替えを手伝いながら機嫌を取るが、沙良の機嫌はなかなか直らなかった。
なぜなら、すっごく恥ずかしかったのだ。
スケスケの夜着もさることながら、シヴァの腕に抱き込まれて、彼の体温と鼓動を聞きいている夜の間、恥ずかしすぎて死にそうだった。
(シヴァ様は、すぐ寝ちゃうし……)
沙良は緊張で目が冴えてしまって、どんなにがんばってもなかなか寝付けず、ようやくうとうとしはじめたのは、明け方近くなってからだった。
だからすごく寝不足だし、一晩中緊張して体に力を入れていたせいか肩も痛いし、なによりまだシヴァの体温が残っているような気がして、脳が沸騰しそうだ。
シヴァな沙良を花嫁と言ったが、今までスキンシップらしいスキンシップは一度もなかったのに、突然同じベッドで眠るなんて、沙良には難易度が高すぎたのだ。
「沙良様ぁ」
本当に反省しているのかどうかは怪しいが、ミリーは必死で謝っている。
沙良はぷくっと頬を膨らませて拗ねたまま、それでもミリーをこのまま無視し続けるのは良心が咎め、しぶしぶ口を開いた。
「もう、あんなことしないでくださいね」
「わかりましたぁ! もうスケスケ夜着姿でシヴァ様の部屋には飛ばしません!」
「……約束ですよ?」
本当にわかっているのか、と胡乱な目つきでミリーを見るが、彼女はにっこりと微笑んで頷いた。
「もちろんです! ……でもぉ」
ミリーの笑顔が、なにやらワクワクと楽しそうなものに変わる。「んふふ」と口元に手を当てて、ミリーはにやにやしながら言った。
「どうだったんですかぁ? 昨夜はぁ。……らぶらぶ? らぶらぶですか?」
ぼん、と沙良の顔が火を噴いた。
「な、ななな、何言いだすんですかぁ!」
顔を真っ赤にした沙良は、大慌てでブンブンと首を振る。
「えー? だって、朝までシヴァ様と一緒でしょぉ? 何もなかったんですか? ぜんぜん? これっぽっちも?」
ミリーは、親指と人差し指で長さを図るような仕草をする。
「ありません!」
「ええー? ないんですかぁ? なにも? スケスケ夜着で突撃して、なにも?」
沙良は突撃していない。無理やりシヴァの部屋まで飛ばされただけである。
「健全男子として、それってどうなんですか。ありえません!」
よほど不満なのか、ミリーはチッと小さく舌打ちしている。
一体ミリーが何を期待していたのか、沙良は怖くて訊けなかった。訊いたが最後、どんな爆弾発言が飛び出すかわかったものではない。
「い、一緒に眠っただけです……」
シヴァに抱きしめられて、という部分の説明は、恥ずかしいので割愛した。そのせいか、ミリーの目が半眼になる。
「ほんと、あり得ません! あの人は五歳児ですか!? 一緒におねんねしましょうね~なら、五歳児だってできるんですよ! いいえ、五歳児だって手ぐらいはつなげるんです!五歳児以下!!」
「………」
もはや、沙良には突っ込む気力もなかった。
ミリーは、沙良が半ば放心状態のようにぐったりしていることには気づかず、爪を噛んでぶつぶつ言いはじめた。
「スケスケも効かないんですか。あんなの、ほかの誰かさんならイチコロなのに。ああ、もう、次はどうしてやりましょう……」
頼むから、もうこれ以上変な気は起こさないでほしい――
沙良は、切実にそう思った。
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