旦那様は魔王様

狭山ひびき

5

ミリーがもったいつけながら取り出したものを見た瞬間、沙良さらは口に含んでいた紅茶を吹き出してしまった。

それは、午後のティータイムのときのことだ。

ミリーが持ってきたアスヴィルお手製のショートケーキに舌鼓を打っていた沙良は、瞳をキラキラさせて「プレゼントがあるんですぅ」とミリーに差し出された箱の中身を見て、そこに入っていた、光沢のあるきれいな布に首を傾げた。

薄紫色の、薄い布のように見える。

フォークをおいて、口の中に残ったケーキを紅茶で胃に流し込みながら、沙良はその布をじっと見つめる。

正直、布なのはわかったが、それ以外はよくわからなかった。

「むふふふふ!」

ミリーは怪しげな笑い声をあげると、箱の中にきれいに畳んでおさめられている布を取り出した。

「じゃーん! 沙良様の新しい夜着ですよぉ」

「ぶっ!」

――こんなくだりで、沙良は紅茶を吹き出してしまったのである。

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