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悪徳令嬢に転生したのに、まさかの求婚!?~手のひら返しの求婚はお断りします!~

狭山ひびき

背水の陣の計画 4

 フリーデリックがアリシアを捕えに行ったとき、彼女は抵抗しなかった。

 ユミリーナに毒が盛られたと告げたときのアリシアの表情が、脳裏に焼き付いて離れない。

 美しい紫色の瞳を小さく見張って、それから長いまつ毛を震わせながら目を伏せた。その表情にあったのは、諦めだ。

 フリーデリックは己の手のひらを見つめる。

 馬車に連行するときに、いつも通り、アリシアの手首をつかんだ。――痛く、なかっただろうか。

 フリーデリックは、今まで何度もアリシアの手首をつかんで引っ張った。もしも抵抗されて、逃げられては大変だからと、強い力で引っ張ったこともあった。

(……細かった……)

 アリシアの手首は、折れそうなほどに細かった。

 今まで一度も気にも留めなかったその細さに慄いて――、できるだけ力を入れないように気をつけたけれど、武骨なフリーデリックは、女性への力加減がよくわからない。

 痛くなかっただろうか。一度気になると頭から離れずに――、一向に眠りにつけそうになかった。

 手のひらを見つめたまま、フリーデリックはベッドの上で寝返りを打つ。

 結局、アリシアを城へ連行したけれど、証拠も何もないという理由で、取り調べ後に解放された。

 わかりきっていたことだ。

 それなのに、見せしめのように王の前に連れて行かれ、側近や貴族連中から責めたてられた彼女は、ただ目を伏せて唇をかみしめ、ひたすらに耐えていた。

 フリーデリックは目を閉じる。

 アリシアは王都の公爵邸にいる。国王が命令したのだ。離れたところで、何をしでかすかわからないからと、睨みが聞くところにいるように。

 フリーデリックには変わらず、アリシアの同行に目を光らせておけと命令が下されたが、アリシアが王都にいるため、彼も王都の伯爵邸にもどってきている。

 フリーデリックは目を閉じる。

 瞼の裏に思い描くのは、アリシアの泣きそうな顔だけだった。

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