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悪徳令嬢に転生したのに、まさかの求婚!?~手のひら返しの求婚はお断りします!~

狭山ひびき

背水の陣の計画 3

 アリシアの公爵邸を見張っていて、フリーデリックは愕然とした。

 広い公爵邸の庭は、秋になって枯れた草木で荒れ放題で、使用人らしきものは、年老いた執事一人しか見当たらない。

 アリシアは毎日、邸の玄関の前を箒ではいていた。

 公爵令嬢の手に箒があることにフリーデリックは驚き、どうして使用人がいないのだと疑問に思う。

 アリシアは働き者で、邸の掃除をして、庭の井戸から水をくみ上げ、年老いた執事が重たいものを持ち上げようとすれば、手を貸した。

 観察すればするほど、フリーデリックは「アリシア」がわからなくなる。

 王女に危害を加えていると噂の悪徳令嬢、アリシア・フォンターニア。

 そして、目の前で優しく微笑み、転んだ男の子に手を差し伸べる、優しいアリシア・フォンターニア。

 彼女の微笑みは本当に美しくて――、どうしてあんなに美しく微笑むことができるのだろうと不思議に思う。

 気がつけば、フリーデリックは以前ほどアリシアに反感を持たなくなっていた。

 それどころか、アリシアがユミリーナに危害を加えたという話も、信じられなくなってきている。

 何かの間違いではなかったのか――、そんな思いがフリーデリックの胸を占めはじめた、そんなある日のことだった。

「ユミリーナ王女に、毒が盛られた!?」

 フリーデリックの宿に、副官のジョシュアがアリシアを捕えよという王の命令を持ってやってきた。

「アリシア嬢はずっとこの地にいたし、俺も見張っていたんだ。王女に毒を盛る暇なんてなかったはずだぞ!?」

 すると、ジョシュアはあきれたように嘆息した。

「今更何を言っているんだ?」

「なにって……」

「今まで、アリシア嬢を捕えたときに証拠なんて用意されていたか?」

 指摘を受けて、フリーデリックは言葉を失う。

 そう――、そうだった。

 今まで幾度となくアリシアを捕えたが、証拠なんてどこにもなかった。すべては王の命令で――、本当にアリシアのしたことなのか、そんな疑問すら持たなかった。

 フリーデリックの脳裏に、アリシアの優しい笑顔があらわれる。

 違う――、フリーデリックの心が告げた。

「違う。アリシア嬢じゃない。アリシア嬢は、王女に毒なんて盛っていない」

 拳を握りしめて否定すれば、ジョシュアは銀縁の眼鏡を押し上げて、淡々と返した。

「だから?」

「――だから?」

 ジョシュアは狭い宿のベッドの淵に腰を下ろして、組んだ膝の上に頬杖をついた。

「アリシア嬢はやっていない。そうかもね。だから何だと?」

 フリーデリックは目を見開いた。

「王の命令は絶対。それは過去、お前がアリシア嬢に向けて言ったことだ。王の命令だ、同行しろと――、お前が言い続けたことだ」

「………」

 そうだ。確かにフリーデリックは、王の命令に逆らうことは許されないと、何度もアリシアを捕えた。

 だがそれは――、アリシアが犯人だと、疑わなかったからだ。疑問を持ってしまった今、素直にその命令に従っていいものなのか、フリーデリックにはわからない。

「とにかく、アリシア嬢を城へ連行しなくてはいけない。これは王の命令だ。俺たちがしなければ、第一、第二の騎士団が動くだけだ。――考えることがあるなら、あとにしろ」

 ジョシュアはまるで自分には興味のない事柄だと言わんばかりに返す。

 だが、フリーデリックの言い分を否定しない言い方に、彼は不思議に思った。

「ジョシュア――、お前の言い方ではまるで、アリシア嬢が犯人ではないと、わかっていたと言っているようだ」

 ジョシュアははしばみ色の瞳に、心底あきれたような光を宿した。

「――お前まさか、噂通りアリシア嬢が魔女だとでも思っていたのか?」

 もしも本当にアリシア嬢が呪いの使える魔女であるなら、こんなちまちましたやり方はせずに、さっさと王女も国王も、俺たちも殺しているだろうよ――

 ジョシュアの言葉に、フリーデリックは鈍器で殴られたような衝撃を受けた。

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