悪徳令嬢に転生したのに、まさかの求婚!?~手のひら返しの求婚はお断りします!~
町の人と交流します! 11
アリシアが怪我や病気の人を診て回っていると、噂を聞きつけた町の人が次々と集まってきて、結局、すべて終わったころには夕方になっていた。
途中で心配したジーンが簡単な食事を持ってきてくれ、休憩は挟んだが、それでも終わったころにはアリシアはぐったりするほど疲れていた。
だが、その疲労は決して嫌なものではなく、むしろやり切ったというすがすがしさがある。
「騎士団長も、お疲れさまでした。手伝っていただき、助かりましたわ」
帰りの馬車の中でアリシアがフリーデリックに礼を言うと、彼は首を横に振り、穏やかな表情をアリシアに向けた。
「君こそ、疲れたのではないのか? 動き回ったから疲労がたまっているはずだ。帰ったら風呂に入って、ゆっくりした方がいい」
筋肉をほぐしておかないと筋肉痛になるぞと言うフリーデリックに、アリシアは思わず笑ってしまう。
すると、フリーデリックがびっくりしたように目を丸くして、頬を染めた。
突然どうしたのだろうと首を傾げれば、フリーデリックは口元を手のひらで覆い、視線を落とした。
「……君が、楽しそうでよかった」
「はい?」
「そんな風に、笑ってくれるとは……思わなかったから」
アリシアはハッと頬に手を当てた。
(やだ、なんでわたし、リラックスして笑っているの?)
この地へ来てから、フリーデリックのアリシアへの態度が変わったとはいえ、彼のそばにいるとどうしても体に力が入っていた。少なからず緊張していたのだと思う。それなのに、アリシアは今、指摘されるまで気づかないほど自然と笑っていた。
楽しかったのは、事実だ。
人から必要とされて、感謝されて、喜んでもらえて、とても嬉しかった。
受け入れられた気がして、自分が「悪徳令嬢」と呼ばれていることを忘れるほど夢中になっていた。
さっさと死んでしまいたいと思っていたのに、今日、ここへ来て、まだ生きていてよかったと思ってしまった。
(すべて……、騎士団長のおかげなのよ、ね)
まだ、フリーデリックのことは素直に信用できない。心の中にはたくさんのわだかまりがある。でも、事実は事実として受け入れなくてはならないだろう。
今日、アリシアが幸せだと思ったのは――、フリーデリックのおかげだ。
「ありがとう」
そう思えば、自然と言葉が出てきた。
ありがとう。処刑を取り下げてくれて。町に連れてきてくれて。アリシアのすることに反対しないでいてくれて。――手伝ってくれて、ありがとう。
フリーデリックと結婚するつもりはない。けれど――、今日の感謝は、あなたへ。
本当に、素敵な時間だった。
アリシアはもう一度微笑んだ。
「今日、とても楽しかったですわ。久しぶりに生きている気がしました。あなたのおかげです」
フリーデリックは顔を赤くしたまま、ゆっくりと首を横に振った。
「違う、俺は何もしていない。すべて君の行動だ。……君は本当に、優しい人だ」
「それでも、わたしはあなたに感謝したいのですわ」
フリーデリックのことは、まだ許せない。でも、彼は彼自身の役目を全うしていたのだと言うこともわかっている。
突然手のひらを返したように求婚してきたことには怒っているが――、憎んでいるわけではない。
フリーデリックが嬉しそうに破顔する。
(ああ――、どうしよう……)
フリーデリックと結婚は、しない。
結婚式の前に死ぬつもりなのも変わりない。
でも、この人のことは心の底から嫌いにはなれないと――、頬を赤く染めてはにかんだように笑うフリーデリックを見て、思った。
途中で心配したジーンが簡単な食事を持ってきてくれ、休憩は挟んだが、それでも終わったころにはアリシアはぐったりするほど疲れていた。
だが、その疲労は決して嫌なものではなく、むしろやり切ったというすがすがしさがある。
「騎士団長も、お疲れさまでした。手伝っていただき、助かりましたわ」
帰りの馬車の中でアリシアがフリーデリックに礼を言うと、彼は首を横に振り、穏やかな表情をアリシアに向けた。
「君こそ、疲れたのではないのか? 動き回ったから疲労がたまっているはずだ。帰ったら風呂に入って、ゆっくりした方がいい」
筋肉をほぐしておかないと筋肉痛になるぞと言うフリーデリックに、アリシアは思わず笑ってしまう。
すると、フリーデリックがびっくりしたように目を丸くして、頬を染めた。
突然どうしたのだろうと首を傾げれば、フリーデリックは口元を手のひらで覆い、視線を落とした。
「……君が、楽しそうでよかった」
「はい?」
「そんな風に、笑ってくれるとは……思わなかったから」
アリシアはハッと頬に手を当てた。
(やだ、なんでわたし、リラックスして笑っているの?)
この地へ来てから、フリーデリックのアリシアへの態度が変わったとはいえ、彼のそばにいるとどうしても体に力が入っていた。少なからず緊張していたのだと思う。それなのに、アリシアは今、指摘されるまで気づかないほど自然と笑っていた。
楽しかったのは、事実だ。
人から必要とされて、感謝されて、喜んでもらえて、とても嬉しかった。
受け入れられた気がして、自分が「悪徳令嬢」と呼ばれていることを忘れるほど夢中になっていた。
さっさと死んでしまいたいと思っていたのに、今日、ここへ来て、まだ生きていてよかったと思ってしまった。
(すべて……、騎士団長のおかげなのよ、ね)
まだ、フリーデリックのことは素直に信用できない。心の中にはたくさんのわだかまりがある。でも、事実は事実として受け入れなくてはならないだろう。
今日、アリシアが幸せだと思ったのは――、フリーデリックのおかげだ。
「ありがとう」
そう思えば、自然と言葉が出てきた。
ありがとう。処刑を取り下げてくれて。町に連れてきてくれて。アリシアのすることに反対しないでいてくれて。――手伝ってくれて、ありがとう。
フリーデリックと結婚するつもりはない。けれど――、今日の感謝は、あなたへ。
本当に、素敵な時間だった。
アリシアはもう一度微笑んだ。
「今日、とても楽しかったですわ。久しぶりに生きている気がしました。あなたのおかげです」
フリーデリックは顔を赤くしたまま、ゆっくりと首を横に振った。
「違う、俺は何もしていない。すべて君の行動だ。……君は本当に、優しい人だ」
「それでも、わたしはあなたに感謝したいのですわ」
フリーデリックのことは、まだ許せない。でも、彼は彼自身の役目を全うしていたのだと言うこともわかっている。
突然手のひらを返したように求婚してきたことには怒っているが――、憎んでいるわけではない。
フリーデリックが嬉しそうに破顔する。
(ああ――、どうしよう……)
フリーデリックと結婚は、しない。
結婚式の前に死ぬつもりなのも変わりない。
でも、この人のことは心の底から嫌いにはなれないと――、頬を赤く染めてはにかんだように笑うフリーデリックを見て、思った。
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