悪徳令嬢に転生したのに、まさかの求婚!?~手のひら返しの求婚はお断りします!~
町の人と交流します! 9
アリシアはびっくりして、何度も目を瞬いた。
罵られることを覚悟で城から出てきたのに、待っていたのは縋りつくような町の人々の視線。
アリシアと一緒に城から出てきたジーンも驚いている。
想定外の展開にアリシアが固まっていると、真っ先に我に返ったフリーデリックがアリシアをかばうように前に出た。
「突然、アリシア……嬢に何を言い出すんだ」
フリーデリックの横顔は困惑していた。
アリシアも同じく困惑していたが、想像していた侮蔑を含んだ視線ではなく、ただ助けを求めてくる人々の視線に、強張っていた体からゆっくりと力が抜けていく。
「だって、アリシア様は昨日、クラゲに刺された男を助けたんだよ!」
子供を助けてほしいと訴えた女性が叫び、アリシアはそう言うことかと合点した。
クラゲに刺された男を助けたことで、アリシアが医療行為が行えると噂になったのだろう。十五歳の少女が営む小さな診療所しかない町では、医療行為が行える人物を切望していたのかもしれない。
「うちの子の熱が高いんだ! お願いだよ、診ておくれよ!」
「じーちゃんが昨日腰を痛めて立てなくなったんだ! アリシア様、頼むよ!」
「うちの人が数日前から胃が痛いと言うんだよ!」
「だから、アリシア……嬢に何を……」
フリーデリックが町人を止めようとするが、彼らの訴えは止まらない。
(熱……、腰に、胃痛……)
熱はどの程度高いのかはわからないが、まず頭を冷やして、クララが育てているというミントを借りよう。ミントには解熱作用もある。
腰は、もしかしたらぎっくり腰かもしれない。炎症を起こしている可能性もあるから、腰を冷やした方がいいはずだ。町に井戸があったが、井戸水は冷たいから布を濡らして、それで腰を冷やすようにしようか。
胃痛にはカモミールがいいかもしれない。これも、クララの診療所に採取したばかりのものが軒下に吊るしてあるのを見た。
考えながら、困っている人を前に不謹慎かもしれないが、アリシアは自分がわくわくしてくるのがわかった。
頼られている。人から手を貸してほしいと、今、アリシアは頼られているのだ!
今までどこにいても避けられ続け、最後には家族も使用人もみんないなくなった。使用人たちが逃げていく中、ぎりぎりまでただ一人、一緒にいてくれた年老いた執事に逃げてほしいと告げた処刑が決まった夜――、アリシアはこの世界に一人ぼっちになる覚悟を決めた。
そのアリシアが、人から必要とされている。どうしよう、すごくどきどきする!
「だから、アリシ――」
「わかりましたわ。準備をしてまいりますから、少しお待ちくださいな」
「え!?」
フリーデリックがぎょっとして振り返った。
「アリシア嬢!?」
「わたしでお役に立てるかどうかはわかりませんが、できる限りのことはさせていただきますわ!」
アリシアは紫色の瞳を宝石のようにキラキラと輝かせて、ぐっど拳を握りしめた。
罵られることを覚悟で城から出てきたのに、待っていたのは縋りつくような町の人々の視線。
アリシアと一緒に城から出てきたジーンも驚いている。
想定外の展開にアリシアが固まっていると、真っ先に我に返ったフリーデリックがアリシアをかばうように前に出た。
「突然、アリシア……嬢に何を言い出すんだ」
フリーデリックの横顔は困惑していた。
アリシアも同じく困惑していたが、想像していた侮蔑を含んだ視線ではなく、ただ助けを求めてくる人々の視線に、強張っていた体からゆっくりと力が抜けていく。
「だって、アリシア様は昨日、クラゲに刺された男を助けたんだよ!」
子供を助けてほしいと訴えた女性が叫び、アリシアはそう言うことかと合点した。
クラゲに刺された男を助けたことで、アリシアが医療行為が行えると噂になったのだろう。十五歳の少女が営む小さな診療所しかない町では、医療行為が行える人物を切望していたのかもしれない。
「うちの子の熱が高いんだ! お願いだよ、診ておくれよ!」
「じーちゃんが昨日腰を痛めて立てなくなったんだ! アリシア様、頼むよ!」
「うちの人が数日前から胃が痛いと言うんだよ!」
「だから、アリシア……嬢に何を……」
フリーデリックが町人を止めようとするが、彼らの訴えは止まらない。
(熱……、腰に、胃痛……)
熱はどの程度高いのかはわからないが、まず頭を冷やして、クララが育てているというミントを借りよう。ミントには解熱作用もある。
腰は、もしかしたらぎっくり腰かもしれない。炎症を起こしている可能性もあるから、腰を冷やした方がいいはずだ。町に井戸があったが、井戸水は冷たいから布を濡らして、それで腰を冷やすようにしようか。
胃痛にはカモミールがいいかもしれない。これも、クララの診療所に採取したばかりのものが軒下に吊るしてあるのを見た。
考えながら、困っている人を前に不謹慎かもしれないが、アリシアは自分がわくわくしてくるのがわかった。
頼られている。人から手を貸してほしいと、今、アリシアは頼られているのだ!
今までどこにいても避けられ続け、最後には家族も使用人もみんないなくなった。使用人たちが逃げていく中、ぎりぎりまでただ一人、一緒にいてくれた年老いた執事に逃げてほしいと告げた処刑が決まった夜――、アリシアはこの世界に一人ぼっちになる覚悟を決めた。
そのアリシアが、人から必要とされている。どうしよう、すごくどきどきする!
「だから、アリシ――」
「わかりましたわ。準備をしてまいりますから、少しお待ちくださいな」
「え!?」
フリーデリックがぎょっとして振り返った。
「アリシア嬢!?」
「わたしでお役に立てるかどうかはわかりませんが、できる限りのことはさせていただきますわ!」
アリシアは紫色の瞳を宝石のようにキラキラと輝かせて、ぐっど拳を握りしめた。
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