夢の中でも愛してる
7
婚約披露の舞踏会当日。
昼すぎにほくほくと嬉しそうな顔で婚約者の部屋を訪れたクロードは、部屋の中に散乱しているドレスや装飾品、靴の数々に沈黙した。
「あら、クロード王子」
セリーヌがにっこりと満面の笑顔でクロードを出迎えると、さすがは親戚、クロードはすべてを悟ったような顔をしてセリーヌを睨みつける。
「ばらしたな」
「あら、なんのことでしょうか?」
セリーヌはしれっととぼけて見せる。
クロードは大きく嘆息すると、ソファの隅の方にぽつんと座っている遥香に歩み寄った。
遥香がクロードを見上げて困った顔をすると、隣に腰を下ろしたクロードが、テーブルの上においてある真珠が五連になって、大きなダイヤモンドをトップにあしらったネックレスをつまみ上げた。
「これは王妃のじゃないか。……はあ、驚かせて楽しもうと思っていたのに、王妃まで一緒になって俺の邪魔を……」
「何が俺の邪魔を、ですか。女性の支度にはすっごく時間がかかるんです! それなのにギリギリまで黙っていようなんて、性格が悪いですわ」
「ギャーギャーうるさいからお前にも知らせていなかったはずなのに、どうして知ってるんだ」
「あら、お忘れですか? この舞踏会にはわたしの父も出席することになっていますもの。当然わたしの耳にも入っていますわ」
「……そうだった」
すっかり忘れていたらしいクロードが肩を落とす。
すると、勝ち誇ったような表情を浮かべたセリーヌが、さも当然のようにクロードを追い立てた。
「わかったら、部屋から出て行ったくださいませ! リリー様はこれから支度があるんですのよ」
クロードはムッと口を曲げたが、支度の邪魔をするつもりはないらしい。両手をあげて降参するようなポーズを取ると、あっさり部屋から出て行った。
クロードが部屋から出て行くと、遥香は極上の笑みを浮かべるセリーヌとアンヌによって、普段着のドレスをはぎ取られ、レースやフリルたっぷりの、白と水色のドレスに着替えさえせられる。
次々にアクセサリーを身につけさせられ、パタパタと白粉をはたかれて、コテで髪をくるくると巻かれる頃には、遥香はぐったりとしていた。
(重い……)
セリーヌが王妃から借りてきたアクセサリーの数々は、とても豪華だが、恐ろしく重い。首も耳も手首も重くて、座っているだけで遥香の体力をどんどん奪っていく。
支度が終わって、ようやく紅茶を飲んで一息ついたころ、クロードが部屋に迎えに来た。
「ずいぶん派手に着飾ったな。だが、似合っている」
遥香の手を取ってソファから立ち上がらせたクロードが、頭の先から足の先までに視線をやって、満足そうに頷いた。
クロードに褒められて、嬉しくなった遥香が頬を染める。
「いってらっしゃいませ」
アンヌとセリーヌに見送られて、遥香はクロードにエスコートされながら、舞踏会の会場に向かった。
昼すぎにほくほくと嬉しそうな顔で婚約者の部屋を訪れたクロードは、部屋の中に散乱しているドレスや装飾品、靴の数々に沈黙した。
「あら、クロード王子」
セリーヌがにっこりと満面の笑顔でクロードを出迎えると、さすがは親戚、クロードはすべてを悟ったような顔をしてセリーヌを睨みつける。
「ばらしたな」
「あら、なんのことでしょうか?」
セリーヌはしれっととぼけて見せる。
クロードは大きく嘆息すると、ソファの隅の方にぽつんと座っている遥香に歩み寄った。
遥香がクロードを見上げて困った顔をすると、隣に腰を下ろしたクロードが、テーブルの上においてある真珠が五連になって、大きなダイヤモンドをトップにあしらったネックレスをつまみ上げた。
「これは王妃のじゃないか。……はあ、驚かせて楽しもうと思っていたのに、王妃まで一緒になって俺の邪魔を……」
「何が俺の邪魔を、ですか。女性の支度にはすっごく時間がかかるんです! それなのにギリギリまで黙っていようなんて、性格が悪いですわ」
「ギャーギャーうるさいからお前にも知らせていなかったはずなのに、どうして知ってるんだ」
「あら、お忘れですか? この舞踏会にはわたしの父も出席することになっていますもの。当然わたしの耳にも入っていますわ」
「……そうだった」
すっかり忘れていたらしいクロードが肩を落とす。
すると、勝ち誇ったような表情を浮かべたセリーヌが、さも当然のようにクロードを追い立てた。
「わかったら、部屋から出て行ったくださいませ! リリー様はこれから支度があるんですのよ」
クロードはムッと口を曲げたが、支度の邪魔をするつもりはないらしい。両手をあげて降参するようなポーズを取ると、あっさり部屋から出て行った。
クロードが部屋から出て行くと、遥香は極上の笑みを浮かべるセリーヌとアンヌによって、普段着のドレスをはぎ取られ、レースやフリルたっぷりの、白と水色のドレスに着替えさえせられる。
次々にアクセサリーを身につけさせられ、パタパタと白粉をはたかれて、コテで髪をくるくると巻かれる頃には、遥香はぐったりとしていた。
(重い……)
セリーヌが王妃から借りてきたアクセサリーの数々は、とても豪華だが、恐ろしく重い。首も耳も手首も重くて、座っているだけで遥香の体力をどんどん奪っていく。
支度が終わって、ようやく紅茶を飲んで一息ついたころ、クロードが部屋に迎えに来た。
「ずいぶん派手に着飾ったな。だが、似合っている」
遥香の手を取ってソファから立ち上がらせたクロードが、頭の先から足の先までに視線をやって、満足そうに頷いた。
クロードに褒められて、嬉しくなった遥香が頬を染める。
「いってらっしゃいませ」
アンヌとセリーヌに見送られて、遥香はクロードにエスコートされながら、舞踏会の会場に向かった。
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