夢の中でも愛してる
8
アンヌとセリーヌへのお土産のマカロンを買ったあと、寄りたい店があると言うクロードに連れられて、遥香は大通りから少し外れたところにある宝石店へ立ち寄った。
あまり広くない店内に、指輪やブレスレットなど、ほんの少しだけ商品が並べられているが、店だと言われなければ気づかないほど閑散としている。
クロードにオーダーメイドの装飾品を作っている店だと教えられて、なるほど、だから並んでいる商品が少ないのかと納得した。おそらく、店に並んでいる商品は見本として並べているのだろう。
「これはこれは、クロード王子。いらっしゃいませ」
奥から店主と思しき初老の男が目を丸くしながら現れた。
「急に悪いな」
どうやら顔見知りらしく、クロードは気さくに声をかけると、クロードから一歩下がったところに立っていた遥香を紹介する。
「婚約者のリリーだ」
「噂のセザーヌ国の姫君ですか。お初にお目にかかります」
店主が頭を下げたので、遥香は慌てて会釈を返す。
「ところで、頼んでいた石は見つかったのか?」
「ピンクダイヤですよね。はい、仕入れております。少々お待ちを」
店主は店の奥に一度引っ込み、小さな箱を持って戻ってきた。
店主に店の一角にあるソファをすすめられ、遥香とクロードが腰を下ろすと、店主は持ってきた箱の蓋を開けてテーブルの上におく。
中には、小指の先ほどの大きさの淡いピンク色をしたダイヤモンドが入っていた。
「きれい……」
柔らかい色合いの透明感のある宝石に、遥香が感嘆をこぼすと、クロードが満足そうな顔をする。
「いい石だな。どうだ、気に入ったか?」
クロードに訊ねられて、遥香は顔をあげると、きょとんと首を傾げた。
意味が通じていない様子の遥香に、クロードが苦笑して、遥香の左手を取る。
「指輪にしようと思う。婚約指輪は母の形見で俺が用意したわけではないだろう。俺からも一つ贈らせてほしい」
「え……?」
遥香は目を丸くした。遥香の左の薬指には、婚約式の日にクロードにはめてもらって青い宝石の指輪が輝いている。もうこんなに素敵な指輪をもらっているのに、クロードはもう一つ用意してくれると言うのか。
「この指輪はこれできれいだが、なんとなくお前のイメージじゃないんだ。その……、お前はこのくらいの、温かみのある色の方が似あっている気がする」
クロードが少し照れたような顔をしながら、ピンク色のダイヤモンドを指す。驚いて何も言えなかった遥香だが、徐々に嬉しさがこみあげてきた。
「ありがとうございます……!」
すごく嬉しかったのに、そんな簡単な言葉しか出てこなくて、うまく気落ちを伝えられない自分が情けなくなってくる。
指輪自体は大体出来上がっていると言う店主とデザインの確認をするクロードを見つめながら、遥香はどんどん気持ちが高揚していくのを感じていた。
(信じられない……)
クロードとは政略結婚なのに、個別で指輪まで用意してもらえるとは思わなかった。出会った当初はこんなにも優しくしてもらえるなんて露にも思っていなかった。日に日にクロードが優しくなっていく気がして、こんなにも胸がドキドキさせられることになるなんて、想像すらできなかったのに。
遥香はそっと左の薬指を見た。もう一つ用意してくれるという指輪はどこにはめよう。新しい指輪を左の薬指にはめて、青い石を右の薬指にはめたらだめだろうか。青とピンクの石の指輪を二つ重ねてつけたらおかしいだろうか。
左の薬指を見つめて幸せそうな表情を浮かべる遥香は気がつかなかった。
店主と打ち合わせを終えたクロードが、とろけるほどの優しい笑顔を浮かべて、そんな遥香を見つめていたことに――
あまり広くない店内に、指輪やブレスレットなど、ほんの少しだけ商品が並べられているが、店だと言われなければ気づかないほど閑散としている。
クロードにオーダーメイドの装飾品を作っている店だと教えられて、なるほど、だから並んでいる商品が少ないのかと納得した。おそらく、店に並んでいる商品は見本として並べているのだろう。
「これはこれは、クロード王子。いらっしゃいませ」
奥から店主と思しき初老の男が目を丸くしながら現れた。
「急に悪いな」
どうやら顔見知りらしく、クロードは気さくに声をかけると、クロードから一歩下がったところに立っていた遥香を紹介する。
「婚約者のリリーだ」
「噂のセザーヌ国の姫君ですか。お初にお目にかかります」
店主が頭を下げたので、遥香は慌てて会釈を返す。
「ところで、頼んでいた石は見つかったのか?」
「ピンクダイヤですよね。はい、仕入れております。少々お待ちを」
店主は店の奥に一度引っ込み、小さな箱を持って戻ってきた。
店主に店の一角にあるソファをすすめられ、遥香とクロードが腰を下ろすと、店主は持ってきた箱の蓋を開けてテーブルの上におく。
中には、小指の先ほどの大きさの淡いピンク色をしたダイヤモンドが入っていた。
「きれい……」
柔らかい色合いの透明感のある宝石に、遥香が感嘆をこぼすと、クロードが満足そうな顔をする。
「いい石だな。どうだ、気に入ったか?」
クロードに訊ねられて、遥香は顔をあげると、きょとんと首を傾げた。
意味が通じていない様子の遥香に、クロードが苦笑して、遥香の左手を取る。
「指輪にしようと思う。婚約指輪は母の形見で俺が用意したわけではないだろう。俺からも一つ贈らせてほしい」
「え……?」
遥香は目を丸くした。遥香の左の薬指には、婚約式の日にクロードにはめてもらって青い宝石の指輪が輝いている。もうこんなに素敵な指輪をもらっているのに、クロードはもう一つ用意してくれると言うのか。
「この指輪はこれできれいだが、なんとなくお前のイメージじゃないんだ。その……、お前はこのくらいの、温かみのある色の方が似あっている気がする」
クロードが少し照れたような顔をしながら、ピンク色のダイヤモンドを指す。驚いて何も言えなかった遥香だが、徐々に嬉しさがこみあげてきた。
「ありがとうございます……!」
すごく嬉しかったのに、そんな簡単な言葉しか出てこなくて、うまく気落ちを伝えられない自分が情けなくなってくる。
指輪自体は大体出来上がっていると言う店主とデザインの確認をするクロードを見つめながら、遥香はどんどん気持ちが高揚していくのを感じていた。
(信じられない……)
クロードとは政略結婚なのに、個別で指輪まで用意してもらえるとは思わなかった。出会った当初はこんなにも優しくしてもらえるなんて露にも思っていなかった。日に日にクロードが優しくなっていく気がして、こんなにも胸がドキドキさせられることになるなんて、想像すらできなかったのに。
遥香はそっと左の薬指を見た。もう一つ用意してくれるという指輪はどこにはめよう。新しい指輪を左の薬指にはめて、青い石を右の薬指にはめたらだめだろうか。青とピンクの石の指輪を二つ重ねてつけたらおかしいだろうか。
左の薬指を見つめて幸せそうな表情を浮かべる遥香は気がつかなかった。
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