【旧版】自分の娘に生まれ変わった俺は、英雄から神へ成り上がる

東郷 アリス

第133話 ココロの試合後



という壮大なバトルシーンはなく、実際にはココロが優勢で、一方的な試合になった。


だがココロは、一回戦だからといって気をぬくことはしていなかった。小敵と見て侮らずだ。


確かにココロの心には隙もあらずだった。ただし、作戦がすごくいいというわけではなかった。
相手がココロよりも弱者だったゆえに、その作戦がうまくいっただけだ。今後必ず、自分が叶わない相手が絶対に現れる。それをどう乗り切るかが今後の鍵となる。


とはいえ、この歳であんなに魔法が放てるのは確かに有能だ。とてもいい試合だったと思う。 






とな感じで、ココロは待機室へと戻ってくる。


「ふぅ…」


「お疲れさま、ココロ」


「ありがとうございますわ。でもシトレアさん、自分の試合はどういたしましたの?」


そう、ここで気づいただろうか?俺は試合が近いから待機室へ来たのに、まだ待機室にいる。


「試合の時間を間違えたんだよ」


「うふふっ、シトレアさんにもそんなかわいいところがあるだなんて」


「笑うなぁー!」


さっきウンティーが待機室へやって来たのは、場を和ませるためでもなく、俺に宣戦布告をしに来たわけでもなく、試合のために来たのでもなかった。俺に試合時間を間違っていることを伝えに来たからだった。


すごい恥ずかった…


その後もしばらくの間、俺はココロにからかい続けられた。






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だが、そうやってずっと恥ずかしがっているわけにもいかない。そうやっている中でも、どんどんと試合は進んでいく。俺たちは、その進んでいく試合をしっかりと観戦した。


でも、全体的にまだ完成度は高くはなかった。
みんなここで魅せる!というものしか特技が無かった。その一つがそこそのの出来で出来ているのだが、それ以外が不自然なほどに全くと言っていいほどできていなかった。


自分が思うに、その一つに時間を長けすぎて、他のものが疎かになってしまったんだろう。だが、それは時期的にも仕方がないこと。まだこれからがある。無論、みんなが見違えるほどに今後成長していくことだろう。


だが、そんな試合が全部が全部そうだったわけでもなかった。


多彩な魔法を放てる人も何人かいたし、見事な剣技を披露していた者もいた。ココロもその中の一人である。


だから、観ているのもそんなに飽きはしなかった。むしろ、新鮮味があっておもしろかった。


だが、まだ試合の半分も終わっていない。まだまだこれからだ。その中に俺の試合ももちろんある。だが、自分の試合よりも気になることが俺にはあった。 


それは…サラのこと。


ご存知の通り、サラは試合で姉と当たることになっている。それが心配なのだ。


サラはいつも通りのような顔をして今行われている試合を観ているが、どこかいつもより辛そうにしているように感じた。


そして、サラの試合が近づいてきた。


「サラ…」


「サラさん…」


「……行ってくる」


サラはそれだけを言葉にして、一人で試合へ向かった。

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