【旧版】自分の娘に生まれ変わった俺は、英雄から神へ成り上がる
第36話 やっとのことで…
「ち、違うんだよ?シア?まっ、迷ってなんか…」
いや、迷ってるから!
「はぁ〜、エリナっていっつもどうしてたの?」
「えっ?いっつも?」
「うん…」
「いっつもは適当にたくさん歩いてたらたどり着く感じなのよ。だから迷ってはいない…はず!」
それって迷ってるんじゃ?
「適当?」
「うん、そうよ。だからよく約束の時間を大幅に過ぎて怒られるときが多くてね?えへへっ」
えへへっじゃねーよ!それってやっぱり、迷ってますよねー?ねぇ!はぁ…本当にダメだこりゃ。
そして俺も本当に諦めかけようとしてていたときだった。
「エリナーどこー!?」
誰かを探し回っている女の人が、エリナのことを呼んでいる。
誰だろ?と思いその人をじっと見る。そしてそのタイミングでエリナもその女の人に気づいた。
「あっ!お母さん!」
「お母さん?」
エリナの顔はさっきまでの真っ青とは違い、キラキラした顔になっている。
変わるのはや…
「?…エリナ?エリナ、やっと見つけたわ!」
その女の人、エリナのお母さん?らしき人がこっちに走ってくる。
「はあ…疲れたわ」
お母さん、こっちも疲れました…
「どうしてお母さんが街に出歩いてるの?お店は?それともなんか用事?早く戻らないとお店が困っちゃうわよ?」
「あなたを探してたからじゃない!?」
「へっ、私?」
「そうよ。エリナが方向音痴だから。エリナが出掛けてくるって言ってお店を飛び出たときはびっくりしたわ。しかも、常連の人もエリナの方向音痴のことは知っているから、「お店は任せろ!」とか言ってくれたから、追いかけようとしてすぐに外に出たら、もうエリナの姿が見当たらなかったのよ?だから私、すーごい探すのが大変だったんだから」
うん、分かりますよ、お母さん。俺もエリナの方向音痴にやられました。本当に大変…
「もう、お母さん、私、そんなやわじゃ無いわよ。もう子供じゃ無いんだからそんなに心配しなくて大丈夫よ。しかも私、方向音痴じゃないし。少し道がわからなくなるだけなのよ。そんなの誰にだってあると思うのよ」
「「誰にだってないわ!!」」
やべ、俺もついカッとなって言ってしもうた。反省反省。しかも子供じゃないしとか言っときながら、エリナの歳なんてなんてまだ二桁にも言ってないだろ!
他にもいろいろ突っ込みたいところ満載だし、俺も呆れているが、エリナのお母さんはもっとエリナに呆れてる。
てか、お店の客人にも方向音痴認定されてるなんて…もう、本人が言うのもなりふり構わず方向音痴認定じゃん。
てか、なんで本人気がつかないんだ?不思議すぎる。やっぱりツンデレというやつだからか?まあ、俺にはあまり関係ない。
…エリナのお母さん。
頑張って!
俺は密かに、エリナのお母さんにエールを送った。
「はぁ…もう良いわ。ところでエリナが連れてる女の子って誰?なんだかどこかで見たことあるような…?」
「この娘は、シトレアっていうのよ。お母さん、仲良くしてあげて」
「ええ、もちろんよ。よろしくね、シトレアちゃん。」
「うん、よろしく…」
一応挨拶しておいた。これからお世話になるかもしれないからな。
「そういえば、シトレアちゃんはなんでエリナと一緒にいるの?」
「あれ、なんでだっけ?」
エリナはすでに、俺との話のことを忘れているらしい。
ひどくない!?
だってそうしたら、今まで俺はただただ歩いただけっていうことでしょ。
無駄じゃん!
そう思うと、どっと疲れが押し寄せてくる。そして俺は、話を忘れているエリナに伝えることにした。
「エリナのお店にお昼を食べに行こうって…」
 
「そうだったわ!」
エリナはやっと思い出したらしい。
「はあ…なんで約束したこと忘れてるのよ。ごめんね、シトレアちゃん、うちの娘がこんなので…」
「いえ、大丈夫です。もう慣れました…」
本当にこんな体験は一生に一度でいい…
「そうね。じゃあ、行きましょうか。シトレアちゃんはまだ小さいけど、同じ苦労かけられる同士気が合いそうね」
「そうですね…」
俺とエリナのお母さんは、とぼとぼと目的地まで歩き進めた。
「二人とも、私のこと忘れないでくれるかしら!?」
「…っああ、忘れてないわよ」
「そ、そうだよ」
「その言い方は忘れてたわよね!?」
こうして俺とエリナのお母さんとエリナは、ふたたび歩き始めた。
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