【旧版】自分の娘に生まれ変わった俺は、英雄から神へ成り上がる

東郷 アリス

第1話 終わりの始まり



「アキ!」


そう呼んだ少女の目の前には、ちょっとした血の湖ができている。
その中心には、二十に届かないくらいの少女が、アキと呼んだ少年が倒れている。


そしてその近くには、彼が対峙したであろう邪神が倒れている。 
そう彼は、この世界を脅かす邪神を倒したのだ。


だがそう簡単にはいかなかった。


彼が世界で一番強いといっても相手は邪神、腐っても神なのだ。


彼はその邪神に遅れを取らない闘いを繰り広げたが、邪神と共に彼も致命的な怪我を負ってしまった。


彼はもう助からない。


彼女の世界に誇る回復魔法を使っても助からない。
目の前に広がっている血の量を見ればわかる。
そう、わかってしまう。嫌でもだ。
彼女もそれは理解している。


彼女は、瞳から溢れそうな涙を我慢しながら、彼の元へ駆け寄る。 


「アキ!」


彼はまだ何とか息をしていた。
彼は彼女が近くに来たことを理解して、最後の力を振り絞り彼女に向かって言った。


「愛してる」


その途端、我慢していた彼女の瞳からは、溢れんばかりの涙が溢れた。






       ーーーーーーーー






ここはどこだ?


自分は邪神と相見えて死んだはずだ。 


だが、周りは光が放たれていてよくみることは叶わない。


くそっ、眩しくて見えない!


そんな状況が続いていた中、自分の視界に何かが入ってきた。 


「こんにちは。私は女神フローラと申します」


その声が聞こえた方を振り向いてみると、女の人がいた。
どうやら彼女は自分で言うには女神らしい。
だが、まわりが眩しくて全てを直視できない。


「それは当たり前です。女神の私を普通の人間が見てしまうと、大変なことになってしまいますから」


ああ、そういうことか。


「では、疑問が解けたことのようですし、本題に入ります」


俺はゴクリと息を飲む。


「あなたは死にました。あなたが思っている通りで邪神と闘い倒しましたが、あなたも死んでしまいました」


そうか、倒したか…
それは良かった。


でも、ヨナとの約束だけは守りたかった。
ごめんな、ヨナ。
最後までそばで守ってられなくて。


「死んでしまったあなたには新たに生まれ変わってもらう、転生をしてもらいます。まだたくさんの疑問があると思いますが、時間が来てしまったようです。あなたの新たな人生が良いことであることを勝手ながら祈っております」


心優しい女神だ、ありがとう。
俺は覚悟を決めて目をつぶろうとした。


「あと、転生特典付けときましたよ!」


「えっ!?」


女神の不意打ちな言葉にびっくりしてしまった俺は、へんな声を上げてしまった。






       ーーーーーーーー






女神と別れた俺は、またどこかわからない空間にいた。動き出そうにしても、手足が思い通りに動かない。だけどどこからか安心感を生み出し、心地よい。


そんな時だった。 


何かに触られた感触があった。
だがこの手は、俺をここからだそうとしている。
それなら好都合だ。


俺は、その感触があるほうにじぶんができる最大の力で動き出した。


そしてすぐに視界が変わった。


そう、俺はとうとうこのへんな空間から抜け出した。


でも、抜け出したのは良かったが光が、あまりにも眩しすぎて目が眩んでしまう。


「おめでとうございます!元気な赤ちゃんですよ!」


赤ちゃんだと…?


さっきまでいた所は、俺が新しく生まれ変わった母親のお腹の中だったらしい…


俺は、目が眩んで詳しくは分からないが、誰かに抱かれている。


「さあ、お母様、この子を抱いてあげてください。」


そして俺は、母親らしい人に抱きかかえられた。


「ふふふっ、可愛いですね。やっぱり私に似ています。でも…"あの人"にも少し似てるかも…」


そう言うと、その場の空気が少し暗くなった。
俺の母親らしか人の声も暗くなった気がする。
でもどこかこの声聞いたことあるんだよな…


「初めてまして、私はヨメナ。あなたのママよ。そして、今日からあなたの名前は、シトレア・シルフォリウムよ。よろしくね、シア?」


ん、待てよ。
シルフォリウム…まさか…なぁ?


そう思い、母親の顔を確認するために恐る恐る目を開ける。


マジか!


そう、俺の母親は、ヨメナ・シルフォリウム、前世の俺の嫁だったのだ。


えっ、ええええ〜


俺は俺の子供になったってことか?
なんだそれ。


こうして俺の新たな人生は、自分の娘に生まれ変わって幕を開けたのだった。







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