声優さえできればいい

東郷 アリス

第38話 最近、世間では歌って踊れるアイドル声優が流行りのようです。



季節は梅雨、六月に入りカノンの仕事も既定路線に戻った頃。


近頃はカノンの声以外のものも買われてか、声優のお仕事だけではなく、テレビや動画配信の出演や撮影、そういった仕事もも増えてきていた。
そのためカノンは、学生ながらほぼ毎日学校に行かずに、朝から晩まで色々なお仕事に駆られていた。


「次の仕事は写真集の表紙撮影、それが終わったら新しく始まるアニメのアフレコにーーーー」


こうやって現場を移動している最中にも、常に予定を確認し、次のお仕事に備えている。
実際にはカノンがお仕事をし、こなしていくのだが、カノンのお仕事が多いため、カノンのマネージャーである姉のメモ帳には、カノンのことが紙びっしりに書かれて、マネージャーである姉も忙しいそうだ。


それでも頑張ってくれている姉には常に感謝を忘れていない。
そしてそんな風に頑張ってくれている人、応援してくれている人達のためにも精一杯お仕事で応えていくのが私、カノンの役目である。


「カノンさん、もう少し右手を……そうそう、そのまま目線くださーいーーーーはい、これでオッケーでーオッケーです。後はこちらで確認しておきますのでお願いします」


「はい、お疲れ様でした。では、失礼します」


撮影も効率よく、そして丁寧に。


「なんでそんなことを言うの!?」


「だって……」


「言い訳なんていらない!!もうお兄ちゃんなんて大嫌い!!」


アフレコでも自分のもてる全てを持って今までやってきた。


そんなため、私、赤宮 カノンは、お仕事が忙しいせいでこの世の中の流行りに疎い。


そして今日、仕事に行く前に久し振りにテレビを付けてみるとーーーー


『歌って踊るアイドル声優が最近流行ですね!そういうことで今日のゲストはその中でも人気を誇るearisの皆さんでーす!!』


うん?歌って踊るアイドル声優のearis?


観てみると、確かに歌って踊っていて、それプラスにちゃんと声優としてお仕事をしているらしい。


でも、なんか私とは波長が合わなそうな気がしそうなのよねぇ……


だから私と共演はないだろうと思っていた。が、それから三日後。ついにそれと共演することが決まってしまった。













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