声優さえできればいい

東郷 アリス

第19話 アイバン



四月が無事に終わり、五月に入った今。
私たち学生はみんなあるものを迎えていた。
それは…


「ゴールデンウィークだよ」


そう、ゴールデンウィークだ。


ゴールデンウィークといえば学生達はみんな思い切り遊ぶチャンスだ。
宿題という後ろ冷たさがある夏休みと違って、何も考えずに過ごすことができる。
夏休みは夏休みでいいところもたくさんあるが。


だけど私は今一番人気を誇る声優、赤宮 カノンだ。
それは声優というジャンルに囚われないほど。
だから私に休みの日は少ない。まあ、通常でも忙しいけれど。


よって私のゴールデンウィークというと…


「カノン、行くわよ〜」


「ふぁ〜い…」


もちろん仕事だ。


今回の仕事はあるゲームのイベントに参加することだ。
去年から配信をスタートし、見事に一年で二千万ダウンロードを突破した。


その名も…アイバン。


このアイバンは、いわゆる音ゲーだ。


今回はこのイベントに参加するのだ。
イベントに参加するということは察しがつくと思うが、私もそのゲームの中で声をやらせて頂いている。


私が声をやっているキャラは音音おとねアリア。
ちょっとクールで感情をあまり出さないが、とても仲間思い。
それもあってか、公式好きなキャラランキングでは、二位と圧倒的な差を付けて見事に一位を取ることができた。
本当にありがたい。


今回のイベントはもちろんコミマなどでもお馴染みの場所、ビックサイトでやることとなっている。
しかも二日間。


私が出演するステージは十時から。
だから打ち合わせとかがあるため、朝五時出発だ。
それは私だけらしい。
拷問か。
でも頑張るしかないか。ステージは楽しいしね。


そんなことを思いつつ、私は移動中の車の中で気合を入れるのだった。





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