声優さえできればいい

東郷 アリス

第4話 初めて赤宮 きりんが赤宮 カノンになったとき。



「声…優?」


俺はその言葉に食いついて返事を返した。


「そう声優よ。そしてただ普通の声優じゃなく、それも世界観を変えるような」


「世界観を変える…」


「そう。貴方が笑えばみんなが笑う。貴方が泣けばみんなが泣く。それぐらいの影響力。それだって貴方が望む"メインヒロイン"も夢じゃない」


「メインヒロインも…?」


「そうよ。だから貴方、いえ、赤宮 きりん」


「どうして俺の名前を…」


「それは貴方の成したただならぬ努力と才能ゆえに導かれた運命だから。貴方はこれまで散々努力をしてきた。そして少しずつ積み重ねてきた。そしてそれが私に認められた。だから貴方の長年の夢をこうして叶えてあげることができる」


「俺の夢が…」


「私が貴方に必要なモノを授けてあげる。貴方はどうしたい?」


「俺は…」


ずっと憧れていた声優。そしてメインヒロインの声を演じることを、ずっと夢見て練習してきた。だけど途中で自分にはなることができないことを知った。だけど俺は諦めずに練習した。そして今も俺は…


そうだ。最初から迷うことなんてなかった。だって最初から答えは決まってるんだから。


だから…


「だから俺はメインヒロインになりたい!」


俺は覚悟を被せるように顔を上げた。


「っ!」


そして俺が顔を上げた瞬間、何者かが俺の唇にキスをした。


その正体は…この世の人とは思えないほど美人な女の子だった。


その女の子は、しばらくして俺とキスをやめた。


「ぷはぁ…その答えを待ってた」


「えっ…?」


そしてそれを言ったのとほぼ同時に、彼女の姿が光になって消えていった。


「私は貴方との約束を果たしに来ただけ。役目を終えた人が消えていなくなるのは当たり前じゃない?」


「そう…なのか…」


俺はただ沈黙しているだけ。そう、ただそれだけ。悲しくなんかない。だけど彼女は俺の頬をの何かを拭ってくる。


「泣かないで。きりん」


「俺が?」


そう、俺は泣いていた。なぜか泣いていた。今日あったばっかりの女の子なのに。別れが悲しい、寂しいと思ってしまっている。だけど、彼女はそんな状況でも慌ただしくはならなかった。


「きりんが泣いている理由は分かる。だからね?約束しない?」


「約束?」


「そう。もし貴方がーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


それを言った彼女は、完全に光となって消えていった。


そこには赤宮 きりん宛の手紙が一枚、地面に落ちているだけだった。






   ーーーーーーーー




秋葉原でそんなことがあった次の日の朝。


「ピピッピピッ」


目覚ましの音が聞こえた俺は、目覚ましを止めてベッドから起き上がった。


「うーん…朝か…」


だるいけど今日は学校だ。俺は仕方なくベッドから離れて学校の制服に着替えようとした。そして服を脱ごうとした時だった。


俺の胸に何か柔らかいモノが。それもかなりでかい。俺は確認するべく自分の胸にある柔らかいモノを揉んだ。


「んっ!?」


だけど、自分の口から女の子っぽい声が出るだけだった。


「…えっ?女の子っぽい?」


俺は慌てて部屋にある鏡を覗いた。


「えっ?…えぇええ!?俺女の子になってる!?」


そう、鏡の前に立っていたのはいつもの俺ではなく、初めて見た美少女だった。


「きりん、朝からうるさいわよ?近所の迷惑になるから気をつけてね?ってきり……ん?」


ちょうど良いのか悪いのか分からないが、姉が俺の部屋へやってきた。


「うぅ…ねぇ…どうしよう?」 


「誰!?この可愛い子!?……って、もしかしてきりん?」


「う、うん。朝起きたらこうなってた」


「原因は分からないの?べつに可愛いからこのままでもいいかもだけど」


「それはひどいと思うんですけど!!…っ、本当にどうすれば…あっ、そうだ!」


「何か思いついたの?」


「うん。昨日、秋葉原で女の人と会って困ったらこれをみてって…そう、手紙をもらったんだ!!」


手紙は机の引き出しにしまっていたはず!


「あった!」


「なんて書いてあるの?」


「え、えーと…」


俺はその手紙を読み始めた。


「きりんちゃんへ……ちゃんじゃない!!俺は男だ!!」


「いちいち突っ込まない。キリがないし、内容が入らなくなるでしょ。しかも今はどう見ても女だし」


「うっ」


「じゃあ続けて」


「う、うん。


この手紙を開いたということはきっと女の子になって戸惑っているのだと思う。私が授けた力。それを説明するわ。
私が授けた力…まずは貴方の身に起こっている変化、女の子になること。そして二つ目、声よ。
貴方の声を聴いた誰もを魅了する力。


…姉、魅了されてる?」


「べ、べつに」


姉は頬を少し赤らめて俺から目をそらす。
反応からして本当に魅了されているらしい。


「じゃあ続けるよ? えっと…


そして最後は声優の適性を最大限に引き出し発揮させること。でも貴方は元からすごい才能があったみたいね。だから貴方は絶対誰もを凌駕する声優になれるはずよ。だから…頑張ってちょうだい。ね?


これで話の趣旨は終わりかな?」


「ていうことは他にもあるの?」


「一応…えっと…男に戻る方法…へー戻れるんだ…っ!?」


「うん?どうしたのきりん?早く方法を言ってよ。すごい気になるんだけど」


「い、言いたいんだけど…方法が凄すぎて…い、いうよ?」


「へっ?う、うん」


「姉とディープキスすれば八時間だけ男に戻ることができる…だって?」


「ディープキ、キス!?嘘でしょそんなの!?見せてよ!!」


姉は俺から手紙を奪い取る。


「本当に書いてあるでしょ?」


「うん…本当だ…きりん」


「ん?」


「どうひよう!!」


あっ、かんだ…

















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