エルフ始めました。

東郷 アリス

エピローグ



パーティーが始まってしばらくが経った。女性陣四人は、俺には到底訳の分からない話で、未だに盛り上がっていた。


オーナーさんは酒の飲み過ぎですでに泥酔してしまっている。そしてその雰囲気に呑まれてしまったのか、何故か未玖も泥酔してしまっていた。
謂わゆる、雰囲気酔いというやつである。
そしてそんな二人を介抱する堀江さん。そしてそれを見て苦笑いしている姉さん。まさにカオスな展開が目の前で起きてしまっている。


テンプレな展開ならば、ここで俺が泥酔してしまい、女の子ぽくなって盛り上がる所なはずだが、俺は酒が好きではない。そのため、置かれていたポッキーやらチョコレートやらをちびちびと食べていた。


しかし、しばらくして泥酔したオーナーさんに絡まれそうになったため、逃げるように休憩室の外に置かれていた椅子に腰を下ろした。


「ふぅ、疲れた……」


一つため息を吐きだして、新しく買った果汁百パーセントのオレンジジュースを口に含んだ。
そしてもう一つため息をと思ったところで、ひょいと休憩室から誰かが顔を出した。姉さんだ。
姉さんは会釈するように手を振ると、空いていた俺の隣の椅子に腰を下ろした。
そしてしばらくはそのまま何もせず黙っていたが、いくらかしたところで口を開いて話し始めた。


「えーくん、今日は楽しかったね?」
「まあ、楽しかったちゃ、楽しかったけどな。でもそれより疲れた……」


そう言って俺がパタパタと手で仰いで疲れたアピールをすると、姉さんは苦笑い。


「でもね、疲れた以上にとても内容が濃くて充実した一日だったと思うよ?うんん、えーくんはこの何日かそう感じてるはず」
「そう……かもな」
「うん、そうだよきっと。だって起きたらエルフの女の子、しかも美少女になってたんだよ?これだけでも十分過ぎるのに、家族三人で出掛けてからもたくさんの出来事があって、一日の時間じゃ足りなくなっちゃうんじゃないかってほどに」
「思い出したくないことも沢山あるけどな」
「うん、そうだと思うけど、それでもえーくんは楽しかったと感じてるはずだよ?」


俺は今日あったことを思い浮かべた。


「確かにそうだったかもしれないな……」


俺は朝起きて美少女エルフになってしまった。最初は戸惑い、いや、今も戸惑っていはするが、姉さん達のおかげで何とかここまでやってきた。(余計なこともあったが)


だから、やっとここで言っても良い気がする。


『俺、エルフ始めました』って。

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