あの滑走路の向こう側へ

きさらぎ ねこ

第3章 十、新しい地



まだ残暑の残る10月、
美香は、新居から電車で新しい職場に向かっていた。

1階に発券カウンターを設けたオフィスビルの4階が美香の新しい職場だ。

自己紹介を済ませると、
美香は、予約課と経理課のちょうど間に
デスクを与えられた。

予約センターの発券や払戻しした航空券や
空港から集札された航空券の処理が、
美香の新しい仕事だった。

お昼休み、休憩室で何人かとご飯を一緒にした。
「上原さんもグラホ出身かー、
 ここの女性は8割そうだよ」
「結婚したり出産して、シフトが難しくなった人とか転職しがちだよね」
「上原さんも?」

美香は苦笑いして答えた。
「私はまだ結婚は…
以前、足を骨折した時、集札ばかりしてて、航空券を扱う仕事に興味があって」

「え、じゃ、独身?
このビル、保険会社のビルでしょ、
4階出入りしてたら、声掛けられるよー」
経理課の矢野がはやした。



コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品