あの滑走路の向こう側へ

きさらぎ ねこ

第2章 十六、滑走路の向こう側で見つけたもの




4月、
本社人事と上司の権田所長の面接などを
経て、唯は晴れて契約社員になっていた。

紘太も、研修最後の5年目となり、
新幹線通勤や、新たな病院で励んでいた。

新たなステージで忙しい二人だったが、
入籍に向けての準備も始めた。

弟の歩崇の根回しもあり、
歩崇の先輩である大橋の友達であり、
歩崇の友達の賢太の兄である紘太への信頼は盤石で、
唯の父も母も、諸手を挙げて大賛成だった。

昨年の夏にお見合い攻撃を仕掛けた祖父も、祖母に説得されたようだった。

唯が心配だったのは、
紘太の家が医者一家で、
そうではない唯が受け入れられるか、
という事だった。

しかし、それは杞憂に終わった。

「唯さんは芹沢教授のとこのお嬢さんなんですってね」
紘太の母の言葉に、
祖父も父も教授だが、祖父の方が偉そうだし、祖父の事をいってるのかなと考えあぐねていると、

紘太の父が続けた。
「芹沢教授とは、福祉のまちづくり協議会でご一緒しましてね、大変お世話になりました」

うわー、何だか分かんないけど、パパありがとう! と心の中で叫びながら、唯は談笑していた。

そして、両家の顔合わせを済ませた翌日、
紘太と唯は、区役所の夜間休日窓口に
婚姻届を提出した。

滑走路の向こう側へ、
そのまた向こうへ、唯は紘太と歩き始めた。


 ︎ ︎第2章 完 ︎ ︎




 ︎筆者より ︎
唯と紘太のラブストーリー、
最後までお読み頂き、
ありがとうございました。

続いて第3章では、
唯の同僚、美香のラブストーリーで、
舞台はまた空港へと戻ります。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品