あの滑走路の向こう側へ

きさらぎ ねこ

第1章✈︎ 一、プロローグ

出発ロビーから見える滑走路向こうの山が
白々と染まり始めた。

今年の初日の出も、職場か…

芹沢唯せりざわゆいは、搭乗口で出発便の準備に取りかかる。

予約者情報など再度確認すると、
ボーディングブリッジの小さな窓から
少し昇り始めた朝日をちらっと見て
唯はCAとのブリーフィングに向かった。

年末の帰省客も落ち着いた元日の空港は
しばしの長閑さを取り戻していた。

今日の夕方の到着便で、佑香ゆうかが帰省する。

勤務時間が終わっても、
ユーターンラッシュの対策準備などをしていると、気が付けば、
佑夏の到着時刻が迫っていた。
唯は、到着ロビーに向かった。

オシャレなコートに身を包んだ佑夏を見つけると唯は、静かに手を上げた。

「おかえり。急いで着替えてくるから、
到着ロビーで待ってて」
「ただいま、おつかれさん」

着替えた唯は、祐夏と職員駐車場に向かった。

郊外にある空港から、
唯達の育った中心地までは、車で50分。
愛菜まなはもう帰省したんだよね」
「そう、猫ちゃんがいるから新幹線で」
「えー、猫ちゃんも飛行機乗れるよ?」
「でも貨物でしょ、心配なんだよ」
「そっかー」

今晩は、中高の仲良し3人で
久々に集まる予定になっていた。
繁忙期の年始は忙しい唯と
短い帰省の祐夏と愛菜の予定が合うのは
この元旦の夜だけであった。

「そいえば、きよさんも到着で会った」
「ああ、弟くんの先輩の?」

清さんこと、大橋さんは、弟の先輩で、
中高とも女子校に通った唯にとって
数少ない地元の男友達であった。

「そう、でも私、夜空いてるの今日だけなんだよね」
「ふーん、会ってみたかった、残念。」
「清さんも、今日は友達と会うって言ってたし。
 この仕事してたら、友達減りそう」

佑香の実家により、年始の挨拶をすませ、
愛菜の待つアジアン料理店へと急ぐ。

3人は再会の祝杯をあげると、
思い出話に花を咲かせていた。
アジアン料理も一通り食べ尽くした頃、
唯の携帯にメールの着信音が鳴った。

「あ、清さんからだ。
 今から合流する?だって」
「料理も食べ尽くしたし、行きますか!」
「じゃあ連絡するー!」


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