第83話　訓練の成果

　「お！早かったなサラ」
　「く、暮人様いきなりどうしたんですか？」

　暮人に呼ばれ高ぶる気持ちを抑え、いつも通り接するサラを見て、暮人は話を続ける。

　「少し見せたいものがあるって言っただろ？」
　「見せたいものですか…？」

　特に思い当たることがないサラは小首を傾げる。それを見た暮人は、これから見せるものにサラがどんな反応をするか楽しみになっていた。

　「あっ！一応実戦形式で頼んでもいいか？」
　「はい。それは構いませんが…」

　暮人は早くサラに見せたくて仕方なくなっていた。
　一定の距離を取るため爆速で走る暮人を見て、サラは少し暮人のことが心配になってきていた。「自分が見ていないときに暮人様に何かあったんじゃないか」とサラは思う。一方、サラにそんなことを思われているなんて知らない暮人は、走っていた足を止め、サラの方を向き準備ができるのを待っていた。それを見たサラ、慌てて戦闘態勢をとる。

　「じゃあ３秒後にスタートだ」
　「はい！」
　「3・2・1・0」

　暮人の合図とともにお互いがすごいスピードで接近する。
　先に先手を取ったのはサラだった。サラの右手には光属性の魔法で生成された槍が握られていた。その槍を暮人に向けて投げる。

　「……えっ！」

　サラは驚く。
　いつもなら槍を飛んでかわす暮人だったが今回は１歩も動いていなかった。

　「ふぅ～…」

　暮人は目を閉じ両手に意識を集中させる。右手で炎属性の魔法を左手で闇属性の魔法を展開させ、そして両手を合わせ1つになった魔法を槍に向けて放つ。放たれた魔法は瞬く間に槍を貫通し、空中で爆発した。