現実世界が嫌になったので、異世界で魔王の夢を叶えて来ます!

白星

第80話 ごめん

 暮人が魔王と神に呼び出された日の翌朝、いつも通りにみんなで朝食をとっていた。

「はぁ~…。やってしまったな」

 見る限り落ち込んでいる暮人のネガティブ発言を聞いた3人の箸を持っている手が止まる。
 サラとリーゼはどちらが暮人に声をかけようか目で話し合う。
 暮人の珍しい状況にどうしていいか分からない2人は、普段なら取り合いになるところを今回は譲り合っている。このままじゃらちが明かないと思ったサラが意を決して呼吸を整える。

 「どうかなされたんですか暮人様?」
 「昨日の夜に魔王様と神様にあったんだ」
 「えっ…!そうだったんですか?」
 「それで…久しぶりだったんでいろいろ話をしたんだけど…」
 「だけど?」

 暮人が言葉をためる。
 暮人が次の言葉を発する間、3人は異様な緊張感に苛まれる。しかし、ビィナは別として、サラとリーゼに関しては自分達の親族にあたる者が暮人に何か失礼なことをしたのではないかと考えていた。
 遂に暮人の口が動き始める。

 「それで、話をしたのはいいものの肝心の【称号】のことを聞くのを忘れてて…本当にすまない!」

 暮人はせっかくのチャンスを棒に振ったことを謝罪し頭を下げた。そんなことはお構いなしに、サラとリーゼは予想していたこととは違うことと分かり安堵する。

 「過ぎてしまったことは仕方ありませんし、また自分たちで調べていきましょう」
 「そうですよ。暮人様がそんなに落ち込むことありませんよ」

 慰めてるだけでそんなに笑顔になるか?と暮人が思うぐらい2人の表情は笑顔で満ちていた。

 「それより…そろそろ訓練の時間ですよ」
 「そうだな…行くか」

 少しぐらい怒られることを予想していた暮人だったが、特にそんな雰囲気もなく、今日も今日とて訓練が始まる。

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