第79話　久しぶり

　「ここは？」

　見覚えがあるような空間に暮人は立っていた。
　辺りは真っ暗だが、やっぱりどこか暮人には見覚えがあるどころか一度来たことがあるような感じがしていた。

　「おお暮人殿、会うのは久しぶりじゃのう」
　「か、神様！」

　真っ暗な視界の中から神のロータムが突然現れた。そこで、暮人は気付いた。ここは魔王や神と初めて会った場所だということが分かった。

　「か、神様。俺はなんでこんな場所にいるんでしょうか？」
　「うむ、それは我が暮人直々に現在の状況を聞きたくてな」

　神の後ろから魔王のヴォルディア登場。
　目の前に魔王と神がいる状況に少し懐かしさを感じた暮人だった。若干ほっこりしていた暮人のことを魔王と神は見ていた。

　「あ！現状報告ですね。とは言ってもまだ特に何もしてないですし…」
　「なーに、そっちの方はわしらもここから見てるから大丈夫じゃ」
　「では何の？」
　「サラかリーゼ、どちらかもう選んだのか？」
　「え…」

　暮人は思った。
　「これは…言っても言わなくても詰みなんじゃ」と。もちろん、現状ではどちらかに好意が偏っているわけではなかった。だから暮人は今思っていることを正直に伝えた。

　「サラとリーゼ、どちらにも違った魅力があると思うので、今の段階ではまだ何とも…」
　「ほうほう…」
　「まぁ、そうだろうな」

　どうやら暮人の言葉に納得した魔王と神を見て、暮人は内心よかったと思いつつも、今後のことを考えざるを得なくなった。

　「今回はいきなりこんな所に呼んでしまって悪かったのう」
　「いえ、久しぶりに話せて楽しかったです。ありがとうございました。」
　「暮人よ、我の夢でプレッシャーを与えてるかもしれないが、そんなに慌てなくてもよいぞ。お前はかなり強くなっているからな」
　「はい。地道に頑張ります」

　暮人がそう言い終わると、次に映った視界は暮人の部屋の天井だった。この時の暮人はせっかく魔王と神に会えたのに【称号】のことを聞くことを忘れて後悔するなんて思ってもいなかった。