現実世界が嫌になったので、異世界で魔王の夢を叶えて来ます!

白星

第70話 ビィナの覚醒(3)

 何も感じない真っ暗な空間の中に私はいた。
 りーぜおねえちゃんの声だけはずっと聞こえていて、必死に私を安心させようとしていた。
 りーぜおねえちゃんの話を聞いていると、じぶんの状況が段々分かってきた。
 そして最後に聞こえた「頑張ってビィナちゃん」という言葉が聞こえた。その声は少し震えていて、何かを我慢しているように感じた。そして、その言葉を最後にりーぜおねえちゃんの声が聞こえなくなった。
 りーぜおねえちゃんのおかげでこの状況にも慣れてきた私は、とりあえず魔法をイメージしてみることにした。
 まず最初に、頭の中で三人称視点の私を想像した。その瞬間、自分の目から激痛がした。

 「……っ!」

 今までに感じたことのない痛みに動揺した私は、一度想像することをやめた。

 「…今の、なんだったんだろう?」

 理由の分からない痛みに私は、完全に想像する恐怖を覚えてしまった。
 頑張って想像しようとしたが、あの激痛が頭を過ぎり、無意識のうちに想像するのを止めてしまった。

 「ど、どうしたら…」
 「頑張るんだビィナ!」
 「えっ…!」

 真っ暗な空間の中、今度はくれとさまの声がした。
 私はびっくりし、見えもしないのに、くれとさまの声の方を向こうとしていた。

 「俺も頑張るから、ビィナも精一杯がんばれ!」

 くれとさまの声を聞くと、より強く支えられているような感じがし、気づけばさっきまでの恐怖心は消えていた。
 『今ならできる!』と思った私は、もう一度集中し、頭の中で想像しようとした。すると、さっきまでくれとさまの声を聞いていたからか、前に一度、くれとさまが魔法を放っているところを私が見ていたシーンが頭を過ぎった。その瞬間、体に何かが流れている感覚がした。
 りーぜおねえちゃんの魔法で感覚が遮断されているにもかかわらず、確かに何かを感じた。
 次の瞬間にはもう、感覚が戻ったかのように手が自由に動く、私はその手で目を覆っていた布を取り、りーぜおねえちゃんに支えられていた体を自分から起こした。

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