現実世界が嫌になったので、異世界で魔王の夢を叶えて来ます!

白星

第51話 イメージ

 「とりあえず…この辺でいいか」

 暮人は、広い訓練場の真ん中に立ち呼吸を整えた。
 「ふぅ…」と一呼吸置き、さっきサラが言っていたことに意識した。
 自分が思いつく中でそこそこの火力を思い浮かべる。ここで1番の火力を選んでしまうと被害がどれほどになるか予想できないからだ。
 暮人がイメージしたのは『木を燃やした時の火』だった。
 頭の中で気が燃えているシーンが浮かぶ。それは、やがてほかの木々にも燃え移り、1つの巨大な火の塊ができた。
 そこまでイメージした暮人は目を開け、自分の手を見た。そこには、いつもと変わらない見た目の魔法があった。
 サラの時と同様、見た目には何の影響も出ず、変わるのは威力や速度だけらしい。
 暮人は、最後まで頭の中でイメージを続け、いつも魔法を放っている的に向けて魔法を放った。

 「うわっ!」

 暮人が放った魔法は、威力が強すぎたのか、放った瞬間に暮人が数十センチ後方へと飛ばされ、暮人が起き上がった時には的に直撃していた。

 「こ、これは…」

 暮人は啞然とした。
 今まで何回もの魔法を放っても、傷1つも付かなかった的が、さっき放った魔法によって、縦に大きくひびが入っていた。それに加え、暮人がイメージした『燃え広がる火』が、完全に再現され、魔法自体は消えたが、火はまだ残っていた。幸い、燃え移るものが周りになかったので安心した。
 暮人は、改めてこの方法の強力さが分かったが、それと同時に危険性も感じた。

 「う~ん…これは練習も必要だが、使う場面も考えないといけないな」
 
 どうやらサラが言っていたことは本当で、暮人は魔法を放った後も全然疲労していなかった。それどころか、あと数十発は放てる余裕さえあった。
 それから暮人は、日が暮れるまでイメージしては魔法を何度も放ち、少し疲れてきたところで、サラの様子が気になり、訓練所を後にした。

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