現実世界が嫌になったので、異世界で魔王の夢を叶えて来ます!

白星

第50話 大事なこと(3)

 「もう大丈夫かサラ?」

 暮人は、魔法を放ち倒れそうになったサラを支えながら、休めるところへと移動させた。

 「は、はい…ご迷惑をかけてすみません暮人様。もう大丈夫です」

 そう言ったサラだったが、暮人が見る限り、まだ完全回復してないようにも見えた。
 サラは立とうとするが、うまく足に力が入らなかった。それに気づいた暮人は、また自分の肩を貸すように少し体制を低くした。

 「あ、ありがとうございます」
 「いいよ、これぐらい。そんなことよりサラ、あの魔法は?」

 まだ力が入らないサラを支えながら、暮人は一番聞きたかったことを聞いた。
 
 「はい。どの魔法も、あることをすれば威力や速度が倍以上になるんです」
 「それは、みてるだけでわかったけど…少し疲労しすぎじゃないか?」

 暮人が知る限り、サラが魔法を1回放っただけで疲労するわけがなかった。むしろ、何回魔法を放っても平然としていそうなサラが想像できるぐらいだった。

 「これは、私だからここまで疲れるんです。暮人様なら、むしろこちらのやり方の方が得意かもしれません」
 「どういうことだ?」

 サラの言葉に暮人は『じゃあなんで最初からそっちのやり方で教えてくれなかった』など、いろいろな疑問が浮かび始めた。

 「これは、リーちゃんが編み出したことなんですが…暮人様は火があったとして、その火どうやって強くしますか?」
 「う~ん…俺なら燃料を入れるかな」

 サラの唐突な質問に、暮人は少し考えながらも自分の考えを伝えた。

 「暮人様はそう考えますよね。ですが、この世界の人々は生まれた時から魔法を見て育っていくんです。なので、この世界の火の認識は、一般的な火属性の魔法になってるんです」
 「なるほど…。つまり、火の火力を上げる方法を知っている俺だからこそ、その方法を使えるということか」
 「そうですね。魔法を唱える時に、一緒にイメージすることで魔法の威力が格段と上がります。私とリーちゃんは、暮人様の世界を少し観察していたので、なんとなくイメージできるんですが…その分体力の消費が大きいんです」

 どうやら、イメージ力が足りない分、魔力でカバーすることによって体力の消耗が激しくなる仕様になるようだった。

 「サラは、もう少し休んでいてくれ。俺、ちょっと練習してくるよ」
 「では、お言葉に甘えてもう少し休ませてもらいますね」

 笑顔で見送るサラを後にし暮人は、もう一度訓練所へと向かった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品