第49話　大事なこと(2)

　「最初に、今から私が2種類の方法で同じ魔法を放つので見ていてください」

　頷いた暮人は、サラから少し距離を取り、安全な位置でサラを見ることにした。
　暮人が距離を取ったのを確認したサラは、一回目の魔法を放った。
　サラの放った魔法は風属性の初級魔法だった。
　サラは、風属性の上位の『暴風属性』を持っているため、普通の風属性よりは威力が高く、速度も速くなっている。しかし、初級魔法なだけあって、放った魔法は数メートルで威力がなくなり消えていった。

　「これが何もせずに魔法を放った場合です。では、今からもう1種類の魔法をお見せしますね」
　
　「わかった」そう言った暮人は、もう一度サラに意識を集中させた。それを確認したサラは、少し息を整え、手中するかのように目を閉じた。そして、もう一度魔法が放たれた。

　「…なっ！」

　暮人は驚いた。
　サラが放った魔法は、1回目も2回目も同じ魔法だった。しかし、威力・速度・持続時間などが全て異なっていて、まるで全く別の魔法を見ているかのように思えるほどのものだった。
　放ち終わったサラは、どこか疲れたように体が脱力していた。

　「だ、大丈夫かサラ？」
　「は、はい。なんとか…」

　脱力しきってそのまま倒れそうになったサラを、暮人が慌てて支えた。
　よほどの集中力がいるのか、たった1回魔法を放っただけで倒れそうになったサラを見て、暮人は少し恐怖を感じた。
　そのままサラが、立ち上がれるようになるまで暮人は、サラの体を支え続けた。