現実世界が嫌になったので、異世界で魔王の夢を叶えて来ます!

白星

第41話 不安(2)

 「ただいまー。」
 「今戻りましたー。」

 そう言いながら玄関に入った俺達が靴を脱いでいる途中、こちらへと駆け足で向かってくる音がした。

 「暮人様とサラ!おかえりなさい。」

 リビングの部屋からビィナを抱えたリーゼが玄関まで駆け足できた。
 最初にあった出来事のこともあり、ビィナは完全にリーゼになついていた。

 「少し遅くなってごめん…二人で大丈夫だったか?」
 「はい、全然大丈夫でした!そんなことより聞いてください!」
 「どうかしたのか?」

 リーゼがビィナの背中を押し、ビィナが一歩こっちに近づいた。
 
 「どうかしたのかビィナ?」

 なかなか喋り出さずにずっと俯いているビィナに、俺は目線を合わせるように腰を下ろした。

 「く、暮人お兄…様、おかえりなさい。」

 少し上目遣いでそう言ったビィナは不安そうにこちらを見ていた。
 俺はというと、あまりの可愛さに意識が飛びかけていて、何とか耐えたところだった。

 「く、暮人様!何か言ってあげてください!今日頑張って覚えたんですよ!」

 少し泣きそうになっているビィナを見たリーゼが小声で耳打ちをしてきた。

 「そ、そうだな。」

 俺はもう一度ビィナの方を向き、ビィナの頭を撫でた。

 「よく頑張ったなビィナ、偉いぞ。」

 さっきまで泣きそうだったビィナが瞬く間に笑顔へと変わり、俺に抱き着いてきた。

 「ビィナ、ここまだ玄関だからまた後で…な?」
 「…はい。」
 
 俺のこっとばお聞いてわかってくれたビィナが離れ、リーゼの元へと戻っていった。

 「どうかしたのサラ?自分の頭に手なんか置いて。」
 「い、いえ!なんでもないよリーちゃん。」
 「そ、そう?ならいいんだけど…。」
 「そんなことより!リーちゃん、この匂いってもしかして…」

 俺もリビングからのいい匂いがずっと気になっていた。

 「そうそう、ちょうど暮人様が返ってくる少し前にシチューができたんで早く食べましょう。」
 「そうだな、じゃあ早く着替えて飯にするか。」
 「そうしましょう。」

 玄関から家の中へと上がり、リーゼとビィナはそのままキッチンの方へ行き、外から帰ってきたばかりの俺とサラはお互いの部屋へと移動した。
 その後はみんなでシチューを食べ、風呂に入った後ビィナと少し遊んでから寝床に付いた。

 「そういえば明日は勉強ってサラがさっき言っていたな…」

 最近の出来事で再認識したが、やっぱり俺はこの世界のことをまだまだ知らなかった。
 少しは自分でも勉強したが、それだけではまだまだ知らないことだらけだった。

 「明日の勉強頑張るしかないか…」

 よっぽど疲れていたのか、考え事をしているうちにいつの間にか眠ってしまった。

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