異世界救う元漁師

琴瀬 ういは

獄氷の精霊アンジュ

精霊と契約を交わしていたはずなのに、今いる空間はなんなんだろう。

あたり一面が真っ白だ。
俺、もしかして死んだ?
そう思った瞬間、目の前の景色が変わった。

どこかの集落のような場所。
その広場だろうか?結構広いところだ。
でも体が動かない。
身動きが取れない為、散策も出来ない。

しばらくすると十字架に磔にされている人物が粒子のような物が集まって出てきた。

よく見ると獄氷の精霊アンジュに似ている。
いや、きっと本人だろう。

磔にされているアンジュの周りに人型の黒い影が集まってきた。


「お、おい。何をするつもりだ!お前らは何なんだ!」


質問しても回答は帰ってこない。
黒い影たちは手に槍のようなものを持っている。
一斉にそれをアンジュに投げる体勢をとった。
俺はどうすればいい?このままじゃ、あいつは死んでしまう!


「くっそ、お前ら何やってんだ!やめろよ!その槍みたいなの、下ろせ!」


俺がそう言ったが、奴らには聞こえないらしい。
しばらくして黒い影たちはアンジュに向けて槍のようなものを放った。

アンジュの体を無数の槍が襲う。

大量の血を流し、吐き、声も上げず死んだ。


「な、何でそんなことするんだよ。」


黒い影たちはゆっくり俺の方向へ体を回転させた。
気づけば周りを囲まれている。
何か喋っているが分からない。


「次は俺ってことか?最悪だな、夢なら覚めてくれよ。」


1人の黒い影がナイフを持っている。
それを俺の心臓に突き立てようとした瞬間、影たちが消えた。


「全く、このクズ共め。私の主に手を出さないでよ!」

「助かったのか、ありがとうアンジュ。マジでナイスタイミングだった。」

「それより私の記憶見たでしょ?」

「あ、あぁ、あれの事か?槍で刺された—」

「やめてっ!!」


急に怒鳴るように叫ぶアンジュ。
思い出したくないようだ。


「あの黒い影たちはなんだ?なんで俺を襲う?」

「ここは私の記憶がある場所なのよ、あの黒い奴らも私の記憶よ。なぜ襲うかは、そうゆう風に記憶に残ってるから。どうしようも出来ないわ。」

「言いたくないのは分かるけど、あれはお前の過去だろ?何があったんだ?」

「今は言えないわよ。」


そう言って俯いてしまった。
慰めたらいいのか、どうしたらいいか分からない。
取り敢えずここから出たい。
混乱して頭が回らなくて少しイライラする。


「さて、ここから出るわよ。」

「頼む、ここはなんか嫌いだ。」

「そうでしょうね、私の記憶空間だもの。誰しも嫌いになるわ。」


ちょっとした嫌味を言いながら俺は現実に戻った。

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