異世界救う元漁師

琴瀬 ういは

神様ってバレました。

ソフィアはゆっくりと家の扉を開けた。

玄関で靴を脱ぎ、俺もお邪魔する。
一直線の廊下を通りリビングらしき場所に来た。

そこには1人の女性が椅子に座っていた。
窓をボッーと見ている。

まるで心がないような感じだった。
何かを失ったような。空っぽのビンのような、なんというか見てられなかった。

地球にいた時の自分を思い出す。
あの時も、仕事が終わればこんな感じだった。


「・・・お母さん、・・・ただいま。・・・私、帰ってきたよ。」


ソフィアがそう言うと、母親はゆっくりとこっちを見た。
ずっと見ている、しばらくして母親はその目から、雫を垂らした。

震えながらこちらを見ている。


「ソフィー…、か、帰ってきたの?ほんとに?ほ、ほんとにソフィーなのかい?こ、こっちに…おいで。」

「・・・うん、ごめんなさい。・・・ぐずっ、ただいまっ、お母さんっ!」

「あぁ、ソフィー、本物なのね。夢じゃないのね。温かい、あぁ、もう、離したりしないわ。」


俺はそっと部屋から出た。
玄関に向かい外に出る。

こうゆうのは2人っきりにしといた方がいい。

俺は村を見て回ることにした。
ソフィアの家は村から少し離れた場所にある。
そのため、少しだけ歩かないと村にはつかない。




少し歩いて村に着いた。
そこで1人の女の子に出会った。


「あ!さっきの王子様だっ!こんにちわ!」

「こんにちは、君はこの村の子だよね?村長さんの家とかわかる?」

「うん!わかるよ、あっちだよっ。王子様っ連れて行ってあげるっ!」


そのまま手を引かれて連れていってもらった。
なんだろうこの光景は、ちょっとだけ父親の気持ちになった俺氏。


「ここだよ!」

「うん、ありがとう。そうだ、これあげる。ここまで連れてきてくれたお礼だよ。」

「わぁ飴だっ!すごいすごいっお兄さんは貴族様だったんだぁ!ありがとうっ!」

「どういたしましてっ」


それは女の子の頭を撫でた。
目を細めてニコニコしている。


「お兄さんっ、またねー!」


ブンブン手を振る女の子に、俺も軽く手を振る。

振り返り改めて村長の家を見て、ドアをノックした。
すると杖をついたおばあちゃんが出てきた。


「お主は誰じゃ、旅の人かの?どうしたのじゃ?」

「あー!そのお兄さん、ソフィアを連れてきてくれた人だよ!」


若いお姉さんが後から声をあげる。


「おお!そうじゃったか、ほれほれ早う中に入られよ。この村の大事な子を助けてくれたんじゃ、外で話すのも無礼じゃろ。」

「ありがとうございます。お邪魔します。」


村長の家はそこまで大きくなかった。
ソフィアの家と同じぐらいか。

俺はリビングに案内され椅子に座り、ソフィアを連れてきた事、そして左眼の事も話した。


「うむ、旅人さん。ほんとに感謝してもしきれないのぉ。ありがとうなのじゃ、何かお主に感謝の物を渡したいのじゃが、何か望みはあるかのぉ?」

「望みはないです。ただ俺はソフィアを連れてきた事を報告しに来ただけですから。」

「それはダメじゃ、なんでも良いのじゃぞ?」

「ではお金を頂きましょう。」

「・・・」

「ってなるでしょう?ほんとに俺は望みはありません。でも、どうしてもと言うなら、この村に少し滞在してもよろしいでしょうか?それとこの世界のことについても、少し教えてください。」

「うむ、それで良いのか?」

「ええ、それが俺の望みです。」


村長は少し間をあけ、口を開いた。


「生憎、貸す家が無くての。この家なら部屋が余っておるからそれで良いな?それとこの世界の事じゃが、わしも良くはわからん。でも最近ここら辺の魔物が活発になってきよる。この村も危険かもしれん。」

「そうですか、この村にいる間は協力します。それともう1つ聞きたいのですが、この世界を脅かす組織ってご存知ですか?」


ガタンッ


音がした方を振り向くとそこにはお姉さんがいた。
お茶を持ってきたのだが、落としてしまったらしい。


「ごめんなさい、代わりをすぐ持ってくるから。」

「ちょっと待ってください。」

「え?」


お姉さんの額から汗が出ている。


「あなた、何か知ってますね?話してください。それとも言い難い事ですか?」

「えっとそれは…」

「それと、その後ろにいるのは何ですか?ものすごく気になります。」

「え!?精霊が見えるの?なんで!」

「なにぃ?精霊じゃと!?アニマ、掟を破っのか!」



掟?何やら面白そうなワードが出てきたな。
問い詰めるか。
話さないから吐かせよう。
精霊については少し勉強してるからわかる。
神界にもたまに顔を出す存在だ。


「掟ってなんのことですか?」

「た、旅人殿は知らなくても、よ、良いことじゃ。」

「違うの!私はただ精霊の泉の近くに寄っただけ。そうしたらウルルが話しかけてきて。」

「ば、馬鹿者!口を滑らすでないっ!あっ」


うん、話はわかった。
この村の近くに精霊の泉って場所がある。
多分この村の人は近づくなと言われているのだろう。

それがこの女が近くに行った。
それで精霊に話しかけられ、契約したと。

そもそも精霊は人に滅多に姿を現さない。
というより人が嫌いだ。

それがこの女、アニマさんに話しかけたって事は結構人が好きなのか?


「それで?動揺して飲み物をこぼした理由は?」

「えっとこの子が、ウルルがね、貴方が神様だって言うからビックリして。時空と創造の神様だって。ウルルは嘘をつかないし、真実を見抜く精霊だから。」

「な、な、な、何と!お、お主はいや、貴方様は神様だったと!そ、それは無礼じゃ、許してくだされ!許してくだされ!」

「いや、そもそも俺は何もやってないでしょう。はぁ、えっとそうです。俺は神です、その精霊が言ったように。」




この場の空気、完全に凍ってるな、これ。

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