異世界救う元漁師

琴瀬 ういは

この世界とお別れ(死にました)

時に海は静まり返る。

時に海は荒れ狂う。

それはまるで人の感情のようだと思う。

この日もそうだ。荒れている。
今日の海は波が高く、風が結構吹いており、かなり危険だ。

しかし、仕事はやっている。
この時の仕事はだるさが込み上げてくるものだ。

そして俺はいつも通りに虐められながら仕事をしていた。

「おーいww早くその仕事終わらせろよww」

クソっ。なんで俺一人に押し付けるんだ、このクズ共は。

そう俺は今たった1人で仕事をしている。

周りはみんな見ているだけ、毎日こんな感じた。
そしてこいつらは、船長が寝ている時に限ってこんな事をする。




そこで、ものすごい風が吹き、波が高くなり、船が大きく揺れた。

背中に誰かがぶつかった感じがした。
いや、ぶつかったんじゃない。
押されたんだ。俺は体勢を維持出来ずに倒れた。

おい。嘘だろ。なんで目の前が海なんだよ。


周りの声が聞こえてくる。


「おいっ!あいつ落ちるぞっ!」

「ヤベーよっ!俺やりすぎたっ!」

「やりすぎたとかそんなんじゃねぇーだろっ!海に落ちるぞっ、あいつっ!」


あぁ、死ぬのか、俺は。


普通、人間は死ぬ事に対して恐怖や絶望するはずだ。
けど俺は、そんな感情は出なかった。
でもたった一つ、思ったことはある。


これで救われる。


俺は海に落ちた。
落ちた痛みと、海水の冷たさに俺は何も出来なかった。

いや、何もしなかった。
ただこのまま一人になれるならと、そう思った。

全身に冷たい水が襲う。
体に対し、無数の針が刺さるような痛さだ。

息も出来ない。その苦しさに水の中で体を動かすが、意味がない。

そして俺は無意識に、肺の中にある酸素を水の中に吐き出した。

沈んで行く体。
思考停止しそうな脳。
霞んでゆく視界。
これでいい、やっと死ねる。

前から死にたかった。
一人になりたかった。

俺は、荒波 零はゆっくりとその人生を終えた。

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