水魔法しか使えませんっ!〜自称ポンコツ魔法使いの、絶対に注目されない生活〜

地蔵さん

常識

「まあそうだな、これからソフィとはずっと一緒なわけだし、俺の秘密を教えておこうか。」
「ず、ずっと一緒!?」
「うん、嫌かもしれないけど少なくとも数年は一緒にいる事になると思う。」
「良いぞ、元々そのつもりだったのだし。」
「、、、全く、そこは『ぜ、全然嬉しくないんだからねっ!勘違いしないでよね!』だろ。」
「その割には顔が赤いぞ、イオリはストレートに弱いみたいだからな。」


ちくしょう、そっち方面じゃ敵いそうにないな。


「と、言う訳でソフィは今魔法が使えません。」
「だからお前急にそんな重大案件ぶちこんでくるなよ!」
「試しに何かやってみ?」


ソフィは手を前に突き出した。
「“ダークボール’’」
彼女の手の平から、紫色のビー玉みたいなものが出て、すぐに消えた。


「おお、すごいぞソフィ!」
「ちくしょう、人を馬鹿にして!魔剣の力を得る前だってここまで酷く無かったんだぞ!」
「いや、少しなりでも発動したことは奇跡に近い。ソフィも相当高い素質があるって事だな。」
「それは一体どうゆう事だ?」


人には常識ってのがある。
これは人と人とが生活をしていく上で非常に便利なものであり、代わりに人々の自由を奪うものでもある。


服を着なければならない。
物を手に入れるにはお金を払わなければならない。
貴族の子は貴族の子らしくあらねばならない。
あの本が面白いと感じないヤツは人としてどうかと思う。


そして、
魔法はキーワードによって発動する。




これがこの世界の常識にして、最大の枷になっている。






「ソフィは子供の時に魔法の契約をしただろ?」
「そうだな、物心がつく前だったはずだけど。」
「その契約は、前の魔石に刻まれていたもので、今のソフィの魔石では契約は行われてない状態なんだよね。」
「ならば、早く契約をせねばな。」
「いや、契約は行わない。」
「お、お前、、、私に一生魔法を使うなと?」
「いや、逆だよ、さっき契約なしで魔法が出ただろ?」
「たしかに、少し発動したな。」
「そう、本当はキーワードなんざ要らないんだよ。だけど、そんな考えは思いつかない。というか、この魔法の行使に関しては常識として考えつかないようになってる。」
「何故だ?」
「契約があるからさ。魔法使用の契約には、登録した魔法しか使えないという制約があるんだ。しかも実際には使用者の適性で更に使用可能な魔法は絞られる。」
「ふむふむ」
「更に、基本的に魔力持ちが分かった時点で、誰もが自然にこの契約を結ぶ事になる。何故なら、契約を交わさない魔法は不安定で危険だ、という常識があるからね。」


そう、基本的に魔力持ちは最初は自分でオリジナルの魔法が使える。
しかし、大体は感情の発露などから発現する為に、周りの物が燃えたり、強風で色んなものが吹っ飛んだりといった現象が起こってしまう。
そこで、神殿で契約を行えばそれらの魔法は発動できなくなるので安全、という訳だ。




便利を手に入れる代わり、何かに縛られてしまっている事に気付かない。
いや、気付けないようになっている。
前世の世界も似たようなもんだ。

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