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水魔法しか使えませんっ!〜自称ポンコツ魔法使いの、絶対に注目されない生活〜

地蔵さん

一縷の希望 前編

お父様が去るまでの私は希望に満ち溢れていた。
これで役立たずと呼ばれずに済むと。自分の生きる価値を見出した気持ちだった。






戦い方は魔剣が教えてくれると言った通り、魔剣を手に入れてからの私は魔法も威力高いものが使えるようになり。接近戦もこなせるようになっていた。


これで侵入者でも何でもかかってこい、という気持ちになっていた。


それでも、自分のこの体の変化はなかなか受け入れられるものではなかった。
つい先ほどまで普通の人型の姿だったというのに、、、
醜くなった自分の体を視界に入れる度に、暗澹たる気持ちにさせられた。




しかし、そんな外見上の問題など表面上の事でしか無かった。
一番の苦痛はそれからだったのだ






ここには何も無い。
契約上、この空間以外に行く事は出来ないというのに、食べ物も、ベッドも、服も、本当に何も無い。
ただただ無機質な樹木の壁、天井も枝が絡み合って閉じてしまっている。
食べ物の問題は無かった。
どういう訳なのかお腹が減らない。魔王様に賜った魔剣の効果なのだろうか?


そして、話をする相手がいない。
同居人はもちろんいないし、家族も、家の使用人も、私の侍女も、誰も訪ねてこない。






侵入者もない。


人間どころかネズミ一匹、虫の一匹いやしない。






ここで出来る事は戦闘の訓練と寝ることだけ。


私の精神が限界を迎えるまで、そう多くの時間は必要なかった。
そこで初めて気がついた。この拠点を守り抜くと言ったものの、その期間などを何も確認していなかった事に。




「もう嫌!!どうして誰も来てくれないの!?お父様!?お兄様!?」


恐らくは3ヶ月かそこら経過した所だったろう。
むしろ私がこれだけ我慢できた事自体が奇跡だった。


「もう知ったこっちゃないわ!爵位も家族ももういらない!契約ももう知らない!」


この部屋の入り口は見えている。少々狭いが、体をねじ込んでいけば出られなくはないだろう。


扉に手をかけた所で、半身の蜘蛛部分の内部が痛み出した。
構うモノかと扉を開け放つと、痛みは更に増していく。


あと一歩、あと一歩で外に出られる。
しかし、その一歩が出ない。痛みで体が上手く動かせない。


それだけではない。
痛みの中で私は、魔王様に何を誓ったのか思い出していた。
身命を尽くすと、命を賭けると誓ってしまっている。


もし、この部屋から一歩でも出てしまえば、、、私は、、、








私は、結局勇気を持つことが出来なかった。


それからは全てを諦め、部屋の隅でジッとしていた。


きっと、家族は誰も来てはくれない。
きっと、私はいなかった事になっている。
最初から希望なんてなかった。何も考えずに喜んでいた自分を呪ってやりたい。


長い時が経った、それこそ言葉を忘れてしまう位には長い長い時が経って


ついに、この部屋に初めての侵入者が現れた。



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