水魔法しか使えませんっ!〜自称ポンコツ魔法使いの、絶対に注目されない生活〜

地蔵さん

ブラック確定

「じゃあ、一緒にいくか?」


赤くなってしまった頬を隠すように、顔を指でかきながら提案してみる。


「え?」
「別に、最初に回るのは魔族領でも良いだろうし、良い場所があればそこに定住することになるかもしれないし」
「ここだって快適だぞ?ここじゃ駄目なのか?」
「ここじゃ駄目だ。俺は狭い視野、狭い世界で生きることを止めようと誓ったんだ。少なくとも一回はこの大陸を一周する。」


そう、自分にはここしかないっていう固定概念をぶっ壊すんだ。


「やっぱりイオリは私が嫌いなのか?」
「目に涙をためるな!、、、、好きだよ、友達として。」
「じゃあここに住んでもいいだろ?私はこっから動けないんだし。」
「いや、好きと住むとは話しが違、、、、、、動けない??」




そういえばこいつがこのボス部屋から出たとこ、見たことないな。




「アラクネ、ここから出られないのか?理由は言えるか?」
「魔物には体内に魔石を持っているだろう?」
「そうだな、それは知ってる。」
「魔王様にこの樹海を守るという大任を与えられた時に、ここを命をかけて守ると誓った。その時に魔石に仕掛けを施された。」
「契約魔法か!」
「そんな感じかな。私の魔石には小さな剣が刺さっている。私が使っている黒い剣があるだろう?それの本体が刺さっているのさ。魔剣パラポネラ、、、それが私に力を与え、そして私をここに縛っている。」




アラクネの言葉を聞きながら、魔法で彼女の体をスキャンする。


、、、あった。
蜘蛛の胴体の真ん中あたり、こぶし大の魔石を細い剣が貫いてる。
確かに剣からは魔力が溢れ、魔石を強化しているように見える、、、が。


「、、、こいつは、契約っていうより呪いの類いだな。」
「でも、魔王様はここを守り切ったら契約は終了、それに報酬だけでなく、この魔剣もくれると約束して下さった。」


守り切るって、、、期間が設定されてないやん。
もう詐欺の入門レベルのやつやん。
しかもこの魔剣、縛るってどころじゃない。違反があれば即座に魔石の魔力を逆に吸いつくして、所有者の元に返っていく仕組みだ。






魔族もブラック確定ですわ。
そりゃ森から出られないわな、出たら死ぬんだもん。




「じゃあ、アラクネはここから出られるなら出てみたい?」
「出てみたい!でも、、、無理だよ、魔王様との契約を破るなんて。しかも魔王様を裏切るような真似をしたら、何にせよ生きてはいけないし。」




ふと、こいつが前世の自分と重なってしまった。
どんなに酷いことをされても、そこが自分の居場所なんだと、そこで生きるしかないんだと、そこを出されたら死ぬしかないんだと思っていた。






、、、ああ、だめだ。こいつだけは連れて行こう。
連れて行って、世界はそんなもんじゃないと教えてやろう。
これは俺の自己満の為の行為だ。
アラクネにとっては迷惑な話になるかもしれないけど、付き合ってもらうとしよう。



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