藤ヶ谷海斗は変われない。
どう考えても、間違っている。
....
「この世界について...か。」
スキルと魔術について書かれた本を渡された。文字も全く違うはずなのに、日本語と同じように読めるのが不思議でならない。
おそらく、異言語理解とやらの力なのだろうが....
....静寂の中で本をめくる音が、パラパラ、と響く。
...スキルについて、書かれていた。
スキルとは、ということについても書かれていた。
いろんなよくあるスキルが羅列されていたが、効果を読んだところで、全く関係がないのが悲しいところである。
異言語理解については、書かれていなかった。
亜月も持っていたこと、皆が普通にこちらの世界の人間と話していたことから、異言語理解は皆同じように持っていると考えられるが...この世界では珍しいスキル、ということだろうか。
まあよく考えてみれば通訳もなにもやり放題なスキルである、簡単に全員が持っていたらそもそも言語文化が発達していないだろう。
...それはいいとして。文字が化けたかのようなあのスキルについて、何か書かれていて欲しいと願いながら本をめくる。めくる。めくる。
...スキルについて書かれているページが終わってしまった。
...分かってた。フリードですら見たことがないのに、フリードに渡された本に書かれているわけがないことも。
だとしても、落胆は隠せない。
「...あぁ、クソ。」
...この本はプレゼントのような物だそうで、これを参考にして欲しい、だそうだ。
とりあえずスキルについては読み込んだが、魔術適性と魔力については、関係がないのでまた今度でいいだろう。
...扉を開くと、フリードはそこにいなかった。
「...どうするか。フリードを待つでもいいんだけど...」
...動いて迷った挙句、フリードとも合流できなくなったら最悪である。
仕方がないので書庫で適当に本を探して暇を潰そう。
...ふとこの世界の創作小説が気になり、物語物がありそうな場所を探してみる。しっかりとした表紙や背をした本が多くあり、この世界の印刷技術が日本と同じほどに発展しているんだな、というのが見て取れる中、個人で作ったのだろうとわかるような、ほかと比べると見劣りする本が端っこに凄く見えづらく置かれているのを、見つけた。
「懐かしい、感じがする。俺たちの部活で作った部誌、というか先輩が作った小説と似ているな。」
思わず、手に取った。
...御伽噺から、話は始まった。
描かれていたことは、マーヴィスから聞いた話とほぼ似ていた。
違ったのは、魔王がいないこと。
魔王という単語は、どこにも出てこないのだ。
「....?この話、この世界の創作物にしては...」
魔王が現れたから、魔人と人間は戦争を始めたわけではない...?
気になる点が多くありながらも、ページを捲る。
...そこには、勇者召喚について、描かれていた。
「....!勇者....?」
勇者は一人、召喚された。そう描かれている。
俺たちのことじゃ......ない。
「この本は....一体。」
推敲されているかも怪しいような文に、引き込まれるように、文字を追いかける。
勇者の魔力は...
「まだ本を読んでいたのかい?」
「ッ!?」
フリードの声にとっさに驚き、本棚に本を戻す。
「あ、ああ。悪いが文字を読むのは苦手でね...」
日本ではいくつも小説を読んでいたし、文字を読むのは好きな方だ。
「そうか、邪魔してしまったかな。その本は持っていっていい、好きな時に読み込んでくれればいいから。とりあえず、みんなと合流しないか?」
フリードの提案に、他のみんなが何をしているのか、という疑問が湧く。
そんな俺の様子を察したのだろうか。俺の前を歩きながら、フリードが話し始める。
「...騎士団の役職には団長、副団長の他に、四人、僕の直属の部下としての役職があるんだ。四騎士と呼ばれるんだけどね。今はその四人に、前衛グループ、後衛武器グループ、後衛魔術グループ、そして能力が特に高かった精鋭グループに分かれてもらっている。」
...あのグループ分けは、なるほどそういうことか。
「精鋭グループってのは...」
...だいたい、想像はついている。
「勇者達、と君たちのことを呼んではいたが、君達の中で、勇者として正確に呼べるのは一人のみなのだ。」
だいたい、話は見えてきたものの。
「じゃあなんで、勇者単体で召喚をしないんだ?」
「...異世界への干渉は、これが初めてでね。勇者の大体の場所はわかったんだが、大雑把な場所の指定しかできなかったんだ。でも、君たちが不要というわけではない。むしろ、圧倒的な力を持っている君達がいなければ、魔王を倒すのは難しいと思う。」
「...その“君たち”の中に、俺は居なさそうだけどな。」
「...そ、そんなことはないよ?」
「あんた、嘘をつくのが下手すぎるんじゃないか?核心を突かれると返答に一回詰まっちゃうし、焦りは声に簡単に出るし。」
「...君は手厳しいなあ。はは。」
騎士団長がこの調子でこの国、大丈夫なんだろうか。心配になってくる。
「僕には、騎士団をまとめ上げるような力があるわけじゃないんだ。」
「...そうは見えないけどな。」
「と、着いてしまったね。この話はまた今度。」
うまく話を切られた気がする。こういうところは抜け目がないのだ。
もしかしたら、嘘をつく時の仕草も、演技かもしれないな、と思いつつ、フリードについていく。
教室のような場所がいくつかあるようで、その中の一つの中の扉を開けるとそこにいたのは高圧的な態度の女の子。
「あんた今までどこ行ってたの?」
というか志波姫未来だった。さらに亜月。委員長。そして早乙女。見たくもないが野口や、etc......
見覚えのある彼らの顔。
何かの間違いだと思いたい。
ああそうだ、俺が連れてこられた場所が精鋭グループであるはずがない。面子は地球では最上位と言える奴らだが...
どんなに否定しようとしても、亜月の能力を見てしまったからわかるのだ。
...ここは。
「君には精鋭グループに入ってもらうよ。」
「...なんで?」
...魔力0、スキル実質0、魔術適正、0。
000の男。なんかカッコよく聞こえる。
そんな現実逃避は、全く意味をなさず。
「お前も精鋭グループか。」
そう言って俺に話しかけてきた金色の髪を靡かせる騎士。おそらく四騎士という騎士の一人だろう。
誇り高き騎士、と言って一番最初に思い浮かべるような高貴な感じがする。
「とりあえず座りたまえ。君たち精鋭グループが、どういう立ち位置になるか、についてこれから話そうとしていた。
空いている席に座らされた。
...そうして精鋭グループに所属することが決定してしまったのだが。
「他のグループは、3つのグループから一人から二人程度ずつを選出して1つのパーティ、というのをいくつも作るのが基本になるのだが。
精鋭グループは、前衛後衛が混合のグループとされている。精鋭グループ内だけでパーティを作る。ここが他のグループとの違いだ。」
勇者率いる能力の高いパーティを代表として出すことで、国の強さを誇示しよう、なんて意志があったりして。
精鋭グループは、他のグループと比べても明らかに扱いが特別すぎて、政治的というか闇的なものを邪推してしまう。
全てただの考えすぎだといいのだが。
「とりあえず、簡単に説明をさせてもらう。お前たちの持つスキル。それは才能であり、能力である。後天的に得ることのできるスキルもあるが......それは今後身につけていけばいい。お前たちが勇者様だ、凄い方だ、と言われるのは、このスキルに大きな要因がある。例えば...勇者適性、というスキルは完全なる先天性であり、私たちの世界に
生まれる人間ではまだ、勇者適性を持つ者は確認されていない、特別なスキルだ。」
その発言に、亜月が手を挙げて質問をする。
「...えっと、じゃあ、僕の勇者適性...というのは。」
「そうだ、お前が勇者だということを示すスキルだ。」
やっぱり亜月君はすごい、というような発言でまたざわざわとした空気になる。
「やっぱり...僕がこの世界に来てから感じている、この力は、本当に人を救える、力なんですね。」
......ん?感じている力.....?そんなもの俺は一回も感じていな......あ。
「それは、魔力だろう。お前たちはスキルも圧倒的ではあるが、それと同じくらいに、保持魔力量が圧倒的である。戦闘経験のない素人の魔力量は、普通なら10もあればいいものだ。なのに、お前達精鋭グループは最低ラインでも200、亜月、と言ったかな。お前の魔力に至っては400に近い数字にものぼる。」
八人程度の人数ではあるが、完全にステータスを頭に入れているようだ。記憶力が半端ではない。
「今入ってきた...お前。黒髪で目つきの悪いお前だ。お前のステータスは後で確認させてもらうが...フリードさんが精鋭に入れると判断したんだ、問題はないだろう。」
....冷や汗がダラッダラと流れる。後でなんらかの文句を言われるのが目に見えているのだ。だって、この金髪の騎士さん、精鋭を任されたことにめちゃくちゃ誇りを持ってそうなのだ。
...俺だって、ここで叫べるものなら叫びたい。
魔力0、最弱の俺が、最強勇者と同じチームなんて、間違っている、と。
「この世界について...か。」
スキルと魔術について書かれた本を渡された。文字も全く違うはずなのに、日本語と同じように読めるのが不思議でならない。
おそらく、異言語理解とやらの力なのだろうが....
....静寂の中で本をめくる音が、パラパラ、と響く。
...スキルについて、書かれていた。
スキルとは、ということについても書かれていた。
いろんなよくあるスキルが羅列されていたが、効果を読んだところで、全く関係がないのが悲しいところである。
異言語理解については、書かれていなかった。
亜月も持っていたこと、皆が普通にこちらの世界の人間と話していたことから、異言語理解は皆同じように持っていると考えられるが...この世界では珍しいスキル、ということだろうか。
まあよく考えてみれば通訳もなにもやり放題なスキルである、簡単に全員が持っていたらそもそも言語文化が発達していないだろう。
...それはいいとして。文字が化けたかのようなあのスキルについて、何か書かれていて欲しいと願いながら本をめくる。めくる。めくる。
...スキルについて書かれているページが終わってしまった。
...分かってた。フリードですら見たことがないのに、フリードに渡された本に書かれているわけがないことも。
だとしても、落胆は隠せない。
「...あぁ、クソ。」
...この本はプレゼントのような物だそうで、これを参考にして欲しい、だそうだ。
とりあえずスキルについては読み込んだが、魔術適性と魔力については、関係がないのでまた今度でいいだろう。
...扉を開くと、フリードはそこにいなかった。
「...どうするか。フリードを待つでもいいんだけど...」
...動いて迷った挙句、フリードとも合流できなくなったら最悪である。
仕方がないので書庫で適当に本を探して暇を潰そう。
...ふとこの世界の創作小説が気になり、物語物がありそうな場所を探してみる。しっかりとした表紙や背をした本が多くあり、この世界の印刷技術が日本と同じほどに発展しているんだな、というのが見て取れる中、個人で作ったのだろうとわかるような、ほかと比べると見劣りする本が端っこに凄く見えづらく置かれているのを、見つけた。
「懐かしい、感じがする。俺たちの部活で作った部誌、というか先輩が作った小説と似ているな。」
思わず、手に取った。
...御伽噺から、話は始まった。
描かれていたことは、マーヴィスから聞いた話とほぼ似ていた。
違ったのは、魔王がいないこと。
魔王という単語は、どこにも出てこないのだ。
「....?この話、この世界の創作物にしては...」
魔王が現れたから、魔人と人間は戦争を始めたわけではない...?
気になる点が多くありながらも、ページを捲る。
...そこには、勇者召喚について、描かれていた。
「....!勇者....?」
勇者は一人、召喚された。そう描かれている。
俺たちのことじゃ......ない。
「この本は....一体。」
推敲されているかも怪しいような文に、引き込まれるように、文字を追いかける。
勇者の魔力は...
「まだ本を読んでいたのかい?」
「ッ!?」
フリードの声にとっさに驚き、本棚に本を戻す。
「あ、ああ。悪いが文字を読むのは苦手でね...」
日本ではいくつも小説を読んでいたし、文字を読むのは好きな方だ。
「そうか、邪魔してしまったかな。その本は持っていっていい、好きな時に読み込んでくれればいいから。とりあえず、みんなと合流しないか?」
フリードの提案に、他のみんなが何をしているのか、という疑問が湧く。
そんな俺の様子を察したのだろうか。俺の前を歩きながら、フリードが話し始める。
「...騎士団の役職には団長、副団長の他に、四人、僕の直属の部下としての役職があるんだ。四騎士と呼ばれるんだけどね。今はその四人に、前衛グループ、後衛武器グループ、後衛魔術グループ、そして能力が特に高かった精鋭グループに分かれてもらっている。」
...あのグループ分けは、なるほどそういうことか。
「精鋭グループってのは...」
...だいたい、想像はついている。
「勇者達、と君たちのことを呼んではいたが、君達の中で、勇者として正確に呼べるのは一人のみなのだ。」
だいたい、話は見えてきたものの。
「じゃあなんで、勇者単体で召喚をしないんだ?」
「...異世界への干渉は、これが初めてでね。勇者の大体の場所はわかったんだが、大雑把な場所の指定しかできなかったんだ。でも、君たちが不要というわけではない。むしろ、圧倒的な力を持っている君達がいなければ、魔王を倒すのは難しいと思う。」
「...その“君たち”の中に、俺は居なさそうだけどな。」
「...そ、そんなことはないよ?」
「あんた、嘘をつくのが下手すぎるんじゃないか?核心を突かれると返答に一回詰まっちゃうし、焦りは声に簡単に出るし。」
「...君は手厳しいなあ。はは。」
騎士団長がこの調子でこの国、大丈夫なんだろうか。心配になってくる。
「僕には、騎士団をまとめ上げるような力があるわけじゃないんだ。」
「...そうは見えないけどな。」
「と、着いてしまったね。この話はまた今度。」
うまく話を切られた気がする。こういうところは抜け目がないのだ。
もしかしたら、嘘をつく時の仕草も、演技かもしれないな、と思いつつ、フリードについていく。
教室のような場所がいくつかあるようで、その中の一つの中の扉を開けるとそこにいたのは高圧的な態度の女の子。
「あんた今までどこ行ってたの?」
というか志波姫未来だった。さらに亜月。委員長。そして早乙女。見たくもないが野口や、etc......
見覚えのある彼らの顔。
何かの間違いだと思いたい。
ああそうだ、俺が連れてこられた場所が精鋭グループであるはずがない。面子は地球では最上位と言える奴らだが...
どんなに否定しようとしても、亜月の能力を見てしまったからわかるのだ。
...ここは。
「君には精鋭グループに入ってもらうよ。」
「...なんで?」
...魔力0、スキル実質0、魔術適正、0。
000の男。なんかカッコよく聞こえる。
そんな現実逃避は、全く意味をなさず。
「お前も精鋭グループか。」
そう言って俺に話しかけてきた金色の髪を靡かせる騎士。おそらく四騎士という騎士の一人だろう。
誇り高き騎士、と言って一番最初に思い浮かべるような高貴な感じがする。
「とりあえず座りたまえ。君たち精鋭グループが、どういう立ち位置になるか、についてこれから話そうとしていた。
空いている席に座らされた。
...そうして精鋭グループに所属することが決定してしまったのだが。
「他のグループは、3つのグループから一人から二人程度ずつを選出して1つのパーティ、というのをいくつも作るのが基本になるのだが。
精鋭グループは、前衛後衛が混合のグループとされている。精鋭グループ内だけでパーティを作る。ここが他のグループとの違いだ。」
勇者率いる能力の高いパーティを代表として出すことで、国の強さを誇示しよう、なんて意志があったりして。
精鋭グループは、他のグループと比べても明らかに扱いが特別すぎて、政治的というか闇的なものを邪推してしまう。
全てただの考えすぎだといいのだが。
「とりあえず、簡単に説明をさせてもらう。お前たちの持つスキル。それは才能であり、能力である。後天的に得ることのできるスキルもあるが......それは今後身につけていけばいい。お前たちが勇者様だ、凄い方だ、と言われるのは、このスキルに大きな要因がある。例えば...勇者適性、というスキルは完全なる先天性であり、私たちの世界に
生まれる人間ではまだ、勇者適性を持つ者は確認されていない、特別なスキルだ。」
その発言に、亜月が手を挙げて質問をする。
「...えっと、じゃあ、僕の勇者適性...というのは。」
「そうだ、お前が勇者だということを示すスキルだ。」
やっぱり亜月君はすごい、というような発言でまたざわざわとした空気になる。
「やっぱり...僕がこの世界に来てから感じている、この力は、本当に人を救える、力なんですね。」
......ん?感じている力.....?そんなもの俺は一回も感じていな......あ。
「それは、魔力だろう。お前たちはスキルも圧倒的ではあるが、それと同じくらいに、保持魔力量が圧倒的である。戦闘経験のない素人の魔力量は、普通なら10もあればいいものだ。なのに、お前達精鋭グループは最低ラインでも200、亜月、と言ったかな。お前の魔力に至っては400に近い数字にものぼる。」
八人程度の人数ではあるが、完全にステータスを頭に入れているようだ。記憶力が半端ではない。
「今入ってきた...お前。黒髪で目つきの悪いお前だ。お前のステータスは後で確認させてもらうが...フリードさんが精鋭に入れると判断したんだ、問題はないだろう。」
....冷や汗がダラッダラと流れる。後でなんらかの文句を言われるのが目に見えているのだ。だって、この金髪の騎士さん、精鋭を任されたことにめちゃくちゃ誇りを持ってそうなのだ。
...俺だって、ここで叫べるものなら叫びたい。
魔力0、最弱の俺が、最強勇者と同じチームなんて、間違っている、と。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
111
-
-
221
-
-
353
-
-
4405
-
-
439
-
-
314
-
-
34
-
-
3087
-
-
4503
コメント