先生の全部、俺で埋めてあげる。

咲倉なこ

*8

さっきの会話、先生に聞かれてたかな?
横で歩く先生の顔を少し覗くと、それに気づいた先生と目が合った。
それだけで心臓が大きく波を打つ。
びっくりして目線を逸らして前を見ると、柾木が俺たちの方を振り返った。

「先生、聞いて下さいよー」
前を歩いていた柾木は、俺の横に並んで足並みをそろえて喋りはじめた。

「こいつ最近、付き合い悪いんす」
柾木はさっきの話の続きをしているみたいだ。
「あら、そうなの?」
「放課後誘っても全然遊んでくれないし。先生どう思います?」

「…そんなの先生に聞いてどうすんだよ」
俺は柾木の言葉を遮る。
でも先生は、「へー、それは寂しいわね」と柾木の意見に乗っかった。

「でしょ?彼女できても遊んでくれたてたのに。どういう心情の変化だと思います?」
柾木はどう言うつもりで先生にそんなこと聞くんだろうか。
先生は俺が放課後、いつも図書館にいること知っている。
でもそれを柾木に知られるのは、なんだか少し抵抗がある。


「あ!いい感じの枝はっけーん!」
柾木は自分が先生に話しかけておいたのにも関わらず、先生の言葉を聞く前に枝を拾いに行った。
本当に自由なヤツ。

「放課後、図書館にいること言ってないの?」
柾木に聞こえないように気を使って俺に聞く先生。
それもそれでなんて答えていいか分からない。

「まぁ。別に、特別に言う事でもないかなって」
「あんなに寂しがってるのに?」

寂しがってる?
柾木が?
「何があるかは知らないけど友達は大切にね」
先生はそう言って柾木と一緒に枝を拾い始めた。



木の枝を集めて炊事場所に戻ると、ご飯を炊く準備ができていた。
「お前らおせーよ」
セッティングをしていた同じチームの奴らが俺たちに気づいて声をかけてきた。
「わりー、全然見つからなくて」

火をおこして、「いい感じじゃね?」なんて言い合いながら無事カレーライスが出来上がった。
「外で食べるカレーはうめー」
柾木はくしゃくしゃの笑顔でカレーを口に運んでいる。

ちょっと焦げたご飯。
大きさのバラバラなにんじんやじゃがいも。
見た目はすごく不格好なのに、みんなで作ったカレーは不思議とおいしかった。

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