先生の全部、俺で埋めてあげる。

咲倉なこ

*7 愛してるってなに?

加ヶ梨先生が赴任してきてから2週間がたった。

今日は珍しく朝から晴れていた。
太陽が眩しいぐらいに俺たちを照らしてる。

2年生は朝から校外授業で近くにあるキャンプ場へ来ていた。
午前中は各クラスが考えたレクレーションをして、その後はみんなでカレーを作って食べて、残りのレクをこなすスケジュールだ。

俺たちのクラスが考えたレク、ぐるぐるバットリレーは最初にやることになった。
バットを中心にグルグルと10回まわって、バットをバトン代わりに次の人にまわすリレー。
各クラス対抗チーム戦で意外と盛り上がった。

俺はトップバッターで、あんまり目が回らないタイプらしく、普通に走ることができて。
「あいつ、おかしいんじゃねーの?!」
なんて柾木に言われる始末。
2番手の柾木は「やべー、足が違う方向にいくー!」とぎゃーぎゃー言いながら、ゲームを楽しんでいた。

各チーム全然リレーが進まなくて。
それでもみんな面白い動きをするから、見てるだけで飽きなかった。
特に先生チームが一番やばくて、生徒たちは先生たちを見て大爆笑。

そんな中でも俺は気づけば加ヶ梨先生を探していて。
先生はみんなを見て楽しそうに笑っていた。
先生が笑っていると俺も嬉しかった。



11時。
他のクラスが考えたジェスチャーゲームも終わって、昼食の準備をすることになった。
俺はご飯を炊く担当で、火をおこすために燃えやすい木の枝を柾木と一緒に探していた。
全然見つからなくて、諦めて顔を上げた時に柾木が口を開いた。

「てか、ずっと気になってたんだけど」
「なに?」
「お前ってさ、放課後どこ行ってんの?」

突然だな。
なんだよ、急に。

「別に」
「最近付き合い悪いじゃん」

柾木とは先生と図書館で会うまでは、毎日のように遊んでいたから、不思議に思われるのも仕方ない。
少し不貞腐れている柾木。

「あ、これ、使えるかな?」
返事に困った俺は、近くにあった小さい枝を拾いながら話を逸らした。
「さすがにちっちゃすぎじゃね?」
柾木が俺の問いに答えた時だった。

「調子どう?」
見回りをしていた加ヶ梨先生が俺たちの方へ近づいてきた。

「先生。全然見つかんないっす」
柾木が少しだるそうに返事をする。
「さっき、あっちにいた子たちはたくさん拾ってたよ」
「まじっすか」
俺たちも行ってみようぜ、と柾木は先生が指差した方へ向かう。
すたすたと行ってしまうから、俺と先生も柾木の後に続いた。


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