異世界転生チートクソ野郎を原住民がぶちのめす~ただそれだけの物語~
この世界では
「なによ……あれ……」
極度の高温により白熱した炎の玉が、薄暗い森を照らして彗星のように直進する。
それを遮るものは尽く蹂躙し、無秩序な破壊を撒き散らしながら、森を横断していく。
やがて、【ソレ】は森の中に広がる大きな湖に飛び込んで、ようやく消滅した。
「……規格外にも程があるわね。これでチートまで持ってたら手が付けられないけど、今までの傾向からして、元から強い転生者にはチートは与えられてないはず……。まぁ、異世界言語とか、ご都合主義な盲信とか、その辺の能力はデフォルトで付いてるだろうけど」
ミツルの能力を分析しつつ、無意識に呟くアミラ。
こうして冷静な判断が出来るのは、多くの転生者と相対した経験があるからこそだろう。
その証拠に、ミツルの側で事態を見守っていた大男は、口をパクパクとさせるばかりで、まともな反応が出来ていなかった。
「えっと、こんな感じですかね? “ファイアボール”だと、これくらいが限界なんですけど」
そんな中、魔法を放った当の本人は、得意気になるでもなく、極めて普通のテンションで、そう尋ねた。
自分が、どれだけ非常識な魔法を使ったか、全く理解していないようだ。
「無詠唱で、こんな高威力の魔法を……? お前、いったい何者だ?」
「やだなぁ。さっきも自己紹介したじゃないですか。僕はミツル。故郷で一番、非力な落ちこぼれです。これから、ご指導よろしくお願いしますね?」
……。
…………。
………………。
「……つまり、纏めると、こういうことか? お前がいた世界は、俺たちの世界よりも遥かに発展してて、皆が皆、化け物みたいな強さだと」
改めてミツルから詳しい話を聞き、情報を照らし合わせた結果、大男は、そう結論づけた。
「そういう事みたいですね。いやぁ、僕なんかでも何とか生きていけそうで良かったです」
「何とか生きていけるどころか、その気になれば天下すら取れるんじゃねぇか? ……毒草も見分けられないし、体力も人並み以下。手先も不器用で、泳ぎも苦手。計算も遅いし、読める文字も少なくて、気配にも鈍感とか言ってたくせに」
心底、呆れたような視線を向ける大男だが、ミツルの方は至って涼しい顔だ。
「別に嘘は吐いてませんよ? 僕の世界の毒草は、“擬態”と“幻影”を高度に駆使して人を欺きますからね。……僕以外の人は見抜けますけど。体力だって、一週間、走り続けられる程度ですし。……僕以外の人は平均で1ヶ月近く走れますけど」
「あー、どうせ、この世界の基準じゃ、全部、一流なんだろ? だったら、俺の指導なんて、いらねぇじゃねぇか」
ふてくされたように、足元の石を蹴る大男だが、それほど強い怒りは感じられない。
恐らく根っからの、お人好しなのだろう。
「でも、この世界の常識には疎いですからね。知識の面では、お世話になると思いますよ? 例えば……ほら、あの遺跡の事とか知りませんし」
そう言って、見晴らしの良くなった森の一角を指差すミツル。
そこには、古く朽ち果てた城のように見える建築物があった。
「あん? ……ああ、あれか。なんでも大昔の貴族が建てた物らしくてな。お宝が眠ってるかもってんで長年、調査されてたんだが、結局、何も見つからなかったらしい」
「へぇー。でも、改めて探してみたら、意外と何か見つかるかもしれませんね?」
「お前さんが探せば、そうかもしれんな。どうせ、探索能力も一流なんだろうし……って、おい? なにするつもりだ?」
天高く掲げられたミツルの右手に、不吉な何かを感じたらしく、大男が慌てて手を伸ばす。
しかし、ミツルが手を振り下ろす方が、僅かに早かった。
極度の高温により白熱した炎の玉が、薄暗い森を照らして彗星のように直進する。
それを遮るものは尽く蹂躙し、無秩序な破壊を撒き散らしながら、森を横断していく。
やがて、【ソレ】は森の中に広がる大きな湖に飛び込んで、ようやく消滅した。
「……規格外にも程があるわね。これでチートまで持ってたら手が付けられないけど、今までの傾向からして、元から強い転生者にはチートは与えられてないはず……。まぁ、異世界言語とか、ご都合主義な盲信とか、その辺の能力はデフォルトで付いてるだろうけど」
ミツルの能力を分析しつつ、無意識に呟くアミラ。
こうして冷静な判断が出来るのは、多くの転生者と相対した経験があるからこそだろう。
その証拠に、ミツルの側で事態を見守っていた大男は、口をパクパクとさせるばかりで、まともな反応が出来ていなかった。
「えっと、こんな感じですかね? “ファイアボール”だと、これくらいが限界なんですけど」
そんな中、魔法を放った当の本人は、得意気になるでもなく、極めて普通のテンションで、そう尋ねた。
自分が、どれだけ非常識な魔法を使ったか、全く理解していないようだ。
「無詠唱で、こんな高威力の魔法を……? お前、いったい何者だ?」
「やだなぁ。さっきも自己紹介したじゃないですか。僕はミツル。故郷で一番、非力な落ちこぼれです。これから、ご指導よろしくお願いしますね?」
……。
…………。
………………。
「……つまり、纏めると、こういうことか? お前がいた世界は、俺たちの世界よりも遥かに発展してて、皆が皆、化け物みたいな強さだと」
改めてミツルから詳しい話を聞き、情報を照らし合わせた結果、大男は、そう結論づけた。
「そういう事みたいですね。いやぁ、僕なんかでも何とか生きていけそうで良かったです」
「何とか生きていけるどころか、その気になれば天下すら取れるんじゃねぇか? ……毒草も見分けられないし、体力も人並み以下。手先も不器用で、泳ぎも苦手。計算も遅いし、読める文字も少なくて、気配にも鈍感とか言ってたくせに」
心底、呆れたような視線を向ける大男だが、ミツルの方は至って涼しい顔だ。
「別に嘘は吐いてませんよ? 僕の世界の毒草は、“擬態”と“幻影”を高度に駆使して人を欺きますからね。……僕以外の人は見抜けますけど。体力だって、一週間、走り続けられる程度ですし。……僕以外の人は平均で1ヶ月近く走れますけど」
「あー、どうせ、この世界の基準じゃ、全部、一流なんだろ? だったら、俺の指導なんて、いらねぇじゃねぇか」
ふてくされたように、足元の石を蹴る大男だが、それほど強い怒りは感じられない。
恐らく根っからの、お人好しなのだろう。
「でも、この世界の常識には疎いですからね。知識の面では、お世話になると思いますよ? 例えば……ほら、あの遺跡の事とか知りませんし」
そう言って、見晴らしの良くなった森の一角を指差すミツル。
そこには、古く朽ち果てた城のように見える建築物があった。
「あん? ……ああ、あれか。なんでも大昔の貴族が建てた物らしくてな。お宝が眠ってるかもってんで長年、調査されてたんだが、結局、何も見つからなかったらしい」
「へぇー。でも、改めて探してみたら、意外と何か見つかるかもしれませんね?」
「お前さんが探せば、そうかもしれんな。どうせ、探索能力も一流なんだろうし……って、おい? なにするつもりだ?」
天高く掲げられたミツルの右手に、不吉な何かを感じたらしく、大男が慌てて手を伸ばす。
しかし、ミツルが手を振り下ろす方が、僅かに早かった。
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