異世界転生チートクソ野郎を原住民がぶちのめす~ただそれだけの物語~
転生者の魔法
「うっし、この辺でいいか。それなりに深いとこまで入ったから、周りに被害が出ることもないだろ」
「この森が、さっき言ってた良い場所……なんですか?」
転生者の少年ミツルと、先輩冒険者の大男が足を踏み入れたのは、昨晩、アミラたちが密談を交わしていた森だ。
当然、既にメンバー全員が気配を殺して、ミツルたちを包囲するような配置に着いている。
ここまで尾行した限りでは、気配に気付かれた様子はないが、念には念を入れて、それなりの距離を取っているため、まず危険はないだろう。
視覚や聴覚を強化する魔法も併用しているので、状況把握にも問題はない。
「ここは、土壌に魔力が満ちてるからな。少し暴れたくらいじゃビクともしないし、仮に荒れ地になっても一晩たてば元通りになる。木々が密集してるから流れ弾の心配もない。だから訓練には打って付けなんだ」
大男の言葉を聞きながら周囲を見渡していたミツルは、納得がいったのか深く頷いた。
「なるほど。確かに豊富な魔力の流れを感じますね。これなら安心です」
「おう! 遠慮なんてしなくて良いから全力でな! もし魔力枯渇で、ぶっ倒れても背負って帰ってやるから!」
太い腕を組み、厚い胸を張って、頼もしい笑みを浮かべる大男。
アミラ的にタイプではないが、世の女性からは、それなりにモテそうだ。
「では、なにから始めましょうか?」
「そうだな。まずは今のミツルが、どれだけ魔法を使いこなせるか確認したい。まず俺が手本を見せるから、同じ魔法を使って見せてくれ」
そう言って、大男は両手を前に突き出し、呪文を小さく呟きながら精神を集中させていく。
淀みのない魔力の流れが彼の全身を巡り、やがて前方に赤い魔法陣が形成される。
そこからカッ! と強い光が瞬いた次の瞬間、巨大な火の玉が放たれ、正面にあった巨木を撃ち抜いた。
そして、その巨木は周りの木々を巻き込みながら、バキバキと耳障りな音を響かせて倒れていく。
周囲からは鳥や獣の悲鳴が上がり、森全体が騒然としている。
「へぇー。ただの“ファイアボール”で、この威力かぁ。あのオジサンも、まぁまぁ、やるね。まっ、この大魔法使いアミラちゃんほどじゃないけど」
ちょうど二人の背後にいて、被害を免れたアミラが呑気に寸評を下す。
ちなみに、アミラが本気を出せば、この森を焼け野原にする程度は造作もない。
あの大男の全力は不明だが、今の魔力運用の精度から考えると、せいぜい森の一部を開拓できるくらいだろう。
さて、ミツルの実力は、どれほどのものか。
アミラは期待半分、不安半分の気持ちで、ミツルの背中を見つめた。
「えっと……今の魔法を真似すればいいんですか?」
「ああ、そうだ! つっても、いきなり俺みたいな威力を出そうとかは考えなくていい。まずは無理をせず、自分が扱える限界の魔力で魔法を使ってみろ。なぁに、失敗したって笑ったりしねぇし、キッチリとフォローしてやるから心配すんなって!」
あまりの威力に、ミツルが萎縮したと思ったのか、大男は励ますように彼の肩を叩く。
一方で、ミツルは何か困惑している様子だ。
しかし、ひとまず疑問は横に置くことにして、取り敢えず実践してみるらしい。
その片手が前に掲げられ、すぐに魔法陣が姿を現す。
そして、一言、“ファイアボール”と呟いた。
その瞬間ーー、
世界は真っ白に染まった。
「この森が、さっき言ってた良い場所……なんですか?」
転生者の少年ミツルと、先輩冒険者の大男が足を踏み入れたのは、昨晩、アミラたちが密談を交わしていた森だ。
当然、既にメンバー全員が気配を殺して、ミツルたちを包囲するような配置に着いている。
ここまで尾行した限りでは、気配に気付かれた様子はないが、念には念を入れて、それなりの距離を取っているため、まず危険はないだろう。
視覚や聴覚を強化する魔法も併用しているので、状況把握にも問題はない。
「ここは、土壌に魔力が満ちてるからな。少し暴れたくらいじゃビクともしないし、仮に荒れ地になっても一晩たてば元通りになる。木々が密集してるから流れ弾の心配もない。だから訓練には打って付けなんだ」
大男の言葉を聞きながら周囲を見渡していたミツルは、納得がいったのか深く頷いた。
「なるほど。確かに豊富な魔力の流れを感じますね。これなら安心です」
「おう! 遠慮なんてしなくて良いから全力でな! もし魔力枯渇で、ぶっ倒れても背負って帰ってやるから!」
太い腕を組み、厚い胸を張って、頼もしい笑みを浮かべる大男。
アミラ的にタイプではないが、世の女性からは、それなりにモテそうだ。
「では、なにから始めましょうか?」
「そうだな。まずは今のミツルが、どれだけ魔法を使いこなせるか確認したい。まず俺が手本を見せるから、同じ魔法を使って見せてくれ」
そう言って、大男は両手を前に突き出し、呪文を小さく呟きながら精神を集中させていく。
淀みのない魔力の流れが彼の全身を巡り、やがて前方に赤い魔法陣が形成される。
そこからカッ! と強い光が瞬いた次の瞬間、巨大な火の玉が放たれ、正面にあった巨木を撃ち抜いた。
そして、その巨木は周りの木々を巻き込みながら、バキバキと耳障りな音を響かせて倒れていく。
周囲からは鳥や獣の悲鳴が上がり、森全体が騒然としている。
「へぇー。ただの“ファイアボール”で、この威力かぁ。あのオジサンも、まぁまぁ、やるね。まっ、この大魔法使いアミラちゃんほどじゃないけど」
ちょうど二人の背後にいて、被害を免れたアミラが呑気に寸評を下す。
ちなみに、アミラが本気を出せば、この森を焼け野原にする程度は造作もない。
あの大男の全力は不明だが、今の魔力運用の精度から考えると、せいぜい森の一部を開拓できるくらいだろう。
さて、ミツルの実力は、どれほどのものか。
アミラは期待半分、不安半分の気持ちで、ミツルの背中を見つめた。
「えっと……今の魔法を真似すればいいんですか?」
「ああ、そうだ! つっても、いきなり俺みたいな威力を出そうとかは考えなくていい。まずは無理をせず、自分が扱える限界の魔力で魔法を使ってみろ。なぁに、失敗したって笑ったりしねぇし、キッチリとフォローしてやるから心配すんなって!」
あまりの威力に、ミツルが萎縮したと思ったのか、大男は励ますように彼の肩を叩く。
一方で、ミツルは何か困惑している様子だ。
しかし、ひとまず疑問は横に置くことにして、取り敢えず実践してみるらしい。
その片手が前に掲げられ、すぐに魔法陣が姿を現す。
そして、一言、“ファイアボール”と呟いた。
その瞬間ーー、
世界は真っ白に染まった。
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