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アパートのとなりに引っ越して来た年上のお姉さんが美人でしかも巨乳だったけど、紳士でいたいからひたすら目を逸らしていたら『普通に見て良いよ』と言ってくれた

三葉 空

16 彼女の前なのに、人妻の色香に惑わされて……

 ぐつぐつ、と鍋の煮立つ音が聞えている。


「どうぞ、召し上がって」


 その鍋を振る舞うのは湯崎さんだ。


 ずっと、笑顔の彼女に対して、俺と光さんはぎこちなく笑いながら、


「「い、いただきます」」


 と言う。


「山本くん。私がよそってあげる」


 湯崎さんはスッとおわんを持って言う。


「あ、ありがとうございます」


 俺は半ば感心しつつ、そう言った。


「町田さんは……」


「私は自分で取りますので」


「そうですか」


 二人とも、笑顔なんだけど……何か怖い!


「はい、どうぞ」


「あ、どうも」


 俺はホカホカと湯気が浮かぶそれを見つめた。


「じゃあ、いただきます」


「召し上がれ」


 湯崎さんは微笑んだまま言う。


 俺は遠慮がちに食べた。


「……あっ、美味い」


「本当に? お口に合わなかったらどうしようかと思ったの」


「いやいや、美味しいですよ。さすがは主婦ですね」


「やだもう、照れちゃう」


 湯崎さんはそう言って、さりげに俺のふとももにタッチをした。


 何だか、ドキリとしてしまう。


「いやぁ、本当に美味しいですね。ぜひとも、味付けなど教えてもらいたいですよ」


 光さんもまた笑顔のままで言う。


「ええ、良いですよ。うふふ」


「うふふ」


 な、何かメッチャ怖いんですけどー!


「あ、湯崎さん。ご自宅の旦那さんとかお子さんは大丈夫なんですか?」


「ええ。二人とも、今日は外食で済ませるって。子供も大ハシャぎ」


「そ、そうですか」


「そんな風に気遣ってくれるなんて、山本くんは本当に優しいのね。初めて会った時から……うふふ」


「あはは……」


 俺と湯崎さんが会話をしている間、光さんは黙々と鍋を食べている。


 けど時折、チラッとこちらの様子を伺っていた。


「そういえば、二人はいつからお付き合いをしているのかしら?」


 唐突に、湯崎さんが言う。


「えっと……春に光さんが引っ越してきて、それをきっかけに……です」


「あら、山本くんってば。いきなり、年上のお姉さんに手を出しちゃったの?」


「て、手を出したと言いますか……」


 俺がたじろいでいると、


「きちんと同意の上です」


「えっ?」


 俺と湯崎さんが光さんを見た。


「私も伊織くんが良いなって思ったから、エッチをしました……まぁ、お酒の勢いもあったけど」


「へぇ……町田さんって真面目そうに見えて、案外ヤルのね」


 湯崎さんはくすりと笑う。


「でも、そんな風に言われると、ちょっと嫉妬しちゃうな」


「え?」


「だって、私の方が先に山本くんと出会っているのに……」


「湯崎さん?」


「私も、伊織くんって、呼んじゃおうかな?」


 湯崎さんはじっと俺のことを見つめて言う。


「ゆ、湯崎さん……近いです。光さんが見ているから……」


「じゃあ、彼女が居なければ良いの?」


「そういう問題じゃ……」


 ああ、何だこれは。


 すごく良い匂いがする。


 これが、年上の色香というやつか。


 光さんはとにかく爽やかで健康的な年上のお姉さんだけど。


 湯崎さんはまたタイプが違う。


 酸いも甘いもかみ分けた、本当に大人の女性という感じ。


 正直、俺みたいな童貞を卒業したばかりのウブな男には、なかなかにヘビーな味わいだ。


 胃がもたれそう。


 その時だった。


 ダン!と大きな音がする。


「えっ?」


 ビクッとして振り向くと、光さんがテーブルを叩いていた。


「……私、ちょっと外に出て来ます」


「ひ、光さん? もう暗いし、危ないですよ?」


「良いの……放っておいて」


 そのまま、光さんは部屋から出て行ってしまう。


「あっ、光さん!」


 立ち上がろうとする俺の腕を湯崎さんが掴む。


「山本くん。せっかくだし、二人きりで楽しみましょう?」


 湯崎さんは微笑んで言う。


 けど……


「ごめんなさい。俺、光さんを連れ戻します」


 軽く湯崎さんの手を解いて、それから部屋を出た。


「光さん!」


 思いのほか、彼女は遠くに行ってしまっていた。


「光さーん!」


 俺は必死に走って、ようやく彼女の背中に追い付いた。


「はぁ、はぁ……光さん、ごめんなさい」


「……何が?」


 光さんは俺に背中を向けたまま言う。


「いや、その……実は俺、この前のバイトで……湯崎さんにキスをされたんです」


 言わない方が良いと康太には言われたけど、それでもきちんと言っておきたいと思った。


「俺が隙だらけだったせいで……俺には光さんしか居ないとか言っておきながら……今もこうして、光さんのことを傷付けて……最低だ」


 ぎゅっと拳を握り締める。


「……伊織くんって、バカだよね」


「うっ……おっしゃる通りです」


「本当に、バカ正直なんだから」


 振り向いた光さんは、呆れたように微笑んでいた。


「えっ?」


「これくらいの距離を走って息を切らすなんて、まだまだ運動が足りないわね」


「す、すみません……」


 俺の目の前に来た光さんは、ニコリと笑う。


「ごめんね、私のせいでそんなに汗をかかせちゃって」


「いや、俺が悪いですから」


「ありがとう」


 ちゅっ、と光さんはキスをしてくれた。


「はぅ! こ、こんな道の真ん中で……光さん、大胆です」


「い、良いでしょ。もう夜だし、人通りも少ないから」


「そうですか……じゃあ、俺も良いですか?」


「へっ?」


 目を丸くする光さんの耳を軽く噛んだ。


「あっ……そ、それ……ダメ……」


「はぁ、はぁ……光さんの耳……美味しいです」


「こ、こら、ダメなの……んぁ……っ!」


「じゃあ、おっぱいを揉みますね」


「そ、それはもっと……ダメ……はッ、あッ!」


 外灯が照らす中で、俺と光さんはしばらく、弄り合っていた。




      ◇




「もう、伊織くんってば。やり過ぎだよ」


「ご、ごめんなさい……」


「まあ、ちょっと気持ち良かったけど」


「え、ちょっと? だいぶ感じていたような……」


「こら!」


 俺は光さんに怒られつつ、部屋に戻った。


「湯崎さん、すみません。遅くなって……あれ?」


 そこに湯崎さんの姿はなかった。


「トイレかな?」


 そう言いつつ、俺はテーブルに置かれている紙に気が付いた。



『今日は勝手にお邪魔してごめんなさい。二人とも、よくお似合いの素敵なカップルだと思いました。良ければ、鍋は最後まで召し上がって下さい。   湯崎より』



 俺は手紙から顔を上げる。


「湯崎さん、帰ったみたいです」


「そう」


「俺と光さんがお似合いだって」


「やだ、そんな……恥ずかしい」


「じゃあ、せっかくだし。最後までいただきましょう」


「うん」


 それから、俺と光さんは二人で仲良く鍋を食べた。








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