彼女たちを守るために俺は死ぬことにした
11/14(土) 小鳥遊知実①
病院の受付を9時55分に訪ねて、美原先生とのお約束ですと伝えた。受付の人が電話でどこかに連絡を取り、指定された部屋の地図を渡されてそこへ向かう。そこは入院している建物ともあたしが治療を受けたところとも違う病棟だった。
地図の指示通り、「処置室・A」と書かれているドアをノックした。がちゃりとドアが開き、中学生くらいの女の子が顔を出す。
「おはようございます。いちごちゃんですね。いらっしゃい♡」
招かれて中に入ると小さな白い部屋で、診察用の机と椅子、丸椅子が2つ。いろいろな機械が壁に寄せられていた。視力検査ボードもある……。
それよりもこの子。どうして白衣を着ているんだろう。
!? まさか、この子が知実くんと夏にお付き合いをした中学生……!? あたしだけじゃなくて、こっちの子も呼んでるって感じ?
「念のため、上着を脱いでこちらを羽織っていただき、アルコール消毒をお願いしてもいいですか?」
中学生ちゃんに机の上に置いていた白衣を渡された。言われるがままに上着を脱いで、白衣を羽織る……けど……、だからこの子、なに??
「初めまして、私、佐倉エミです。なっちゃんの担当してます」
担当……? 単推し……推しメンって話!?
「あ、あのっ、夏はそうだったって聞いてます。エミちゃんってもしかして、まだ知実くんのこと……」
すぐに別れたって聞いたけど、今も好きなのかな。
「そうですね、夏で確かに(退院して)一度は区切りをつけました。だけど私、なっちゃんのこと忘れられなくて。彼と一緒にいるとポジティブになれる。だから立候補して担当になったんですよ。私ここまで(仕事に対して)積極的になれたの初めてで!」
えーっ! 二股ってこと……?
ううん、知実くんに限って、そんな器用なことできない……よね?
でも虎蛇では流されまくってたし、言い切れない〜〜〜〜〜!!
「でも知実くんには、もう別で(恋人が)いるっていうか……」
「はい、私以外にも(担当の看護師さんは)たくさんいますよ♡」
「うぇ!? エミちゃんそれ本当!? あなたはそれでいいの!?」
「はい。みんなのなっちゃんです♡」
「嘘でしょ! 愛情深すぎ〜〜〜〜!」
「お前ら、なにやってんだよ!」
勝てない……と、がくりと膝をついたところに、奥のドアが勢いよく開いて、知実くんが顔を出した。
ってか浮気相手も呼んでおいてそれはなくない!?
┛┛┛
「あらー♡ まさか中学生だと思われるとはー♡」
「ごめんなさい!! すごく失礼な思い込みをしちゃいました!!」
ぺこぺこと佐倉さんに何度も頭を下げる。
「なんで俺が看護師さんをはべらしてるって信じるわけ……」
「だって、知実くんそういうことありそうだもん……」
半泣きのあたしと壁に頭を当てうなだれている知実くんを見比べながら、佐倉さんが大笑いしていると、奥から美原先生も出てきた。
「いらっしゃい、日野さん。噂には聞いてたけど、朝から愉快ね、あなた」
「あっ、よろしくお願いします。うわさ……?」
知実くんが目を合わせてくれない。
「これから投薬治療を始めます。小鳥遊くんは慣れてるから、なにがあっても治療の邪魔をしないように。それから中では静かにしておくこと。このふたつが守れない場合、即座に外に出てもらいます」
「は、はい」
ごくりとつばを飲み込んだ。
いよいよ。緊張する……。
「しんどくなったら外に出ていいからね。本当はこんなの付き合わせたくなかったけど、いちごがそんなに思ってくれてるなら、俺も覚悟したよ」
隣で知実くんが微笑むでもなくつぶやく。
……美原先生、なんて伝えたんだろう。
知実くんが美原先生の脇を通って、慣れた様子で奥の部屋へ入っていった。
「ちょっとグロいですけど……頑張りましょうね!」
隣の佐倉さんが胸の前で拳を握りながら、あたしを見上げた。……大丈夫かな……。
地図の指示通り、「処置室・A」と書かれているドアをノックした。がちゃりとドアが開き、中学生くらいの女の子が顔を出す。
「おはようございます。いちごちゃんですね。いらっしゃい♡」
招かれて中に入ると小さな白い部屋で、診察用の机と椅子、丸椅子が2つ。いろいろな機械が壁に寄せられていた。視力検査ボードもある……。
それよりもこの子。どうして白衣を着ているんだろう。
!? まさか、この子が知実くんと夏にお付き合いをした中学生……!? あたしだけじゃなくて、こっちの子も呼んでるって感じ?
「念のため、上着を脱いでこちらを羽織っていただき、アルコール消毒をお願いしてもいいですか?」
中学生ちゃんに机の上に置いていた白衣を渡された。言われるがままに上着を脱いで、白衣を羽織る……けど……、だからこの子、なに??
「初めまして、私、佐倉エミです。なっちゃんの担当してます」
担当……? 単推し……推しメンって話!?
「あ、あのっ、夏はそうだったって聞いてます。エミちゃんってもしかして、まだ知実くんのこと……」
すぐに別れたって聞いたけど、今も好きなのかな。
「そうですね、夏で確かに(退院して)一度は区切りをつけました。だけど私、なっちゃんのこと忘れられなくて。彼と一緒にいるとポジティブになれる。だから立候補して担当になったんですよ。私ここまで(仕事に対して)積極的になれたの初めてで!」
えーっ! 二股ってこと……?
ううん、知実くんに限って、そんな器用なことできない……よね?
でも虎蛇では流されまくってたし、言い切れない〜〜〜〜〜!!
「でも知実くんには、もう別で(恋人が)いるっていうか……」
「はい、私以外にも(担当の看護師さんは)たくさんいますよ♡」
「うぇ!? エミちゃんそれ本当!? あなたはそれでいいの!?」
「はい。みんなのなっちゃんです♡」
「嘘でしょ! 愛情深すぎ〜〜〜〜!」
「お前ら、なにやってんだよ!」
勝てない……と、がくりと膝をついたところに、奥のドアが勢いよく開いて、知実くんが顔を出した。
ってか浮気相手も呼んでおいてそれはなくない!?
┛┛┛
「あらー♡ まさか中学生だと思われるとはー♡」
「ごめんなさい!! すごく失礼な思い込みをしちゃいました!!」
ぺこぺこと佐倉さんに何度も頭を下げる。
「なんで俺が看護師さんをはべらしてるって信じるわけ……」
「だって、知実くんそういうことありそうだもん……」
半泣きのあたしと壁に頭を当てうなだれている知実くんを見比べながら、佐倉さんが大笑いしていると、奥から美原先生も出てきた。
「いらっしゃい、日野さん。噂には聞いてたけど、朝から愉快ね、あなた」
「あっ、よろしくお願いします。うわさ……?」
知実くんが目を合わせてくれない。
「これから投薬治療を始めます。小鳥遊くんは慣れてるから、なにがあっても治療の邪魔をしないように。それから中では静かにしておくこと。このふたつが守れない場合、即座に外に出てもらいます」
「は、はい」
ごくりとつばを飲み込んだ。
いよいよ。緊張する……。
「しんどくなったら外に出ていいからね。本当はこんなの付き合わせたくなかったけど、いちごがそんなに思ってくれてるなら、俺も覚悟したよ」
隣で知実くんが微笑むでもなくつぶやく。
……美原先生、なんて伝えたんだろう。
知実くんが美原先生の脇を通って、慣れた様子で奥の部屋へ入っていった。
「ちょっとグロいですけど……頑張りましょうね!」
隣の佐倉さんが胸の前で拳を握りながら、あたしを見上げた。……大丈夫かな……。
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