彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

11/4(水) 小鳥遊知実

「大好きだよ——っ!」


 目の前で息を切らせて笑う少女は、屋上で、苦しそうに唇を噛んで、涙を落としていた女の子とはまるで別人のようだった。
 うれしくて頬がゆるみそうになる。
 けれど。
 美原先生に入院日を聞いたあの日、俺の中で答えは決まっていた。

 きっと俺の表情が消えていたのだと思う。いちごが不安そうに口を開こうとする。もうこれ以上彼女に辛い思いをさせてはダメだとあわてて遮った。


「い、いえーい! 俺もめっちゃ好き! アッミーゴ!!」


 隣の音和に結構な力で叩かれる。
 いちごが泣きそうなのを抑えて、笑ってくれたのが胸に突き刺さった。



………………

…………

……




 家の前でいちごと別れるも、音和は帰らずにじっと責めるように見つめてくる。


「……話があるんだけど。部屋行っていい?」


 珍しく迫力があり、ごくりと生唾を飲み込んだ。……だけど。


「今度でもいい?」
「えっ」
「俺、普通に今ダメっぽい。泣いちゃいそうだから……ごめん」
「知ちゃん……」


 音和に背中を向けて、玄関の扉を開けた。後ろ手で閉めてすぐに、やっぱり涙が溢れてきた。
 玄関で崩れ落ちる。

 ごめんね、いちご。
 俺なんかより絶対にいい人、見つかるから。
 好きになってくれてありがとう。本当に、俺なんかにはもったいない女の子だよ。

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