彼女たちを守るために俺は死ぬことにした
10/30(金) 日野 苺⑦
突然、上半身に適度な重みを感じ、閉じていた目をゆっくりと開けた。
いちごの頭が俺の右肩付近にある。
えーと。どうなってるの?
「知実く……っ、ごめん。もう、やだよ……っ」
いちごが胸の上で、嗚咽を漏らしながら泣いていた。
恐る恐る右手をあげて、生まれたばかりの赤ちゃんを触るくらい慎重にいちごの頭を撫でた。
特にいやがられなかったから、そのまま撫でながら考えてみる。
それで、たぶんだけど、結論が出た。
あーこれ、いちごにとって渾身の、“いやらしいこと”だわ。
無理して一生懸命こたえてくれたのかと思うと、笑ってしまいそうになった。
一旦、眉間を寄せて堪えて、なるべく心を落ち着かせて。
「なんで泣くの。そんなに嫌なら、こんなこと、やめたらいいのに」
「ちがっ……!」
この子、本当に天然でおもしろいわ。
……だからずっと、この子のこと目で追ってたんだろうな、俺。
「いちごちゃん。顔、見せて?」
「泣いてて変だから、無理」
「大丈夫だって。いちごはどんなときでも可愛いよ」
「うう」
全然顔をあげてくれない。俺の肩がそんなに好きなのだろうか。
「ほら、俺眠いし。あんま見えてないから」
「うう……」
やっと肩から顔が離れてくれた。
だけどしっかりと体を起こせばいいのに。
恥ずかしがってちょっとしかあげないから、逆に顔が近くなる。
髪をすいていた手を頬に移して、流れたままの涙を親指でぬぐった。
それでも溢れた涙が、自分の顔に落ちて来た。
(嘘つき。目、バッチリ開いてるじゃん)
そんな目で責められたけど、超絶に慈愛に満ちた瞳で封殺しておいた。
それからまばたきを3回する間、瞳に吸い込まれていくように。
最後に目をつむったとき、唇が湿る感覚がした。
人生で一番、重く感じたまぶたをゆっくりと開けて、真っ赤になってボロボロと泣いている女の子を目の前に捉えて。最初に感じた気持ちがまさかの“絶望”だったから。
俺はふたたびまぶたを閉じ、暗闇に意識を落とした。
いちごの頭が俺の右肩付近にある。
えーと。どうなってるの?
「知実く……っ、ごめん。もう、やだよ……っ」
いちごが胸の上で、嗚咽を漏らしながら泣いていた。
恐る恐る右手をあげて、生まれたばかりの赤ちゃんを触るくらい慎重にいちごの頭を撫でた。
特にいやがられなかったから、そのまま撫でながら考えてみる。
それで、たぶんだけど、結論が出た。
あーこれ、いちごにとって渾身の、“いやらしいこと”だわ。
無理して一生懸命こたえてくれたのかと思うと、笑ってしまいそうになった。
一旦、眉間を寄せて堪えて、なるべく心を落ち着かせて。
「なんで泣くの。そんなに嫌なら、こんなこと、やめたらいいのに」
「ちがっ……!」
この子、本当に天然でおもしろいわ。
……だからずっと、この子のこと目で追ってたんだろうな、俺。
「いちごちゃん。顔、見せて?」
「泣いてて変だから、無理」
「大丈夫だって。いちごはどんなときでも可愛いよ」
「うう」
全然顔をあげてくれない。俺の肩がそんなに好きなのだろうか。
「ほら、俺眠いし。あんま見えてないから」
「うう……」
やっと肩から顔が離れてくれた。
だけどしっかりと体を起こせばいいのに。
恥ずかしがってちょっとしかあげないから、逆に顔が近くなる。
髪をすいていた手を頬に移して、流れたままの涙を親指でぬぐった。
それでも溢れた涙が、自分の顔に落ちて来た。
(嘘つき。目、バッチリ開いてるじゃん)
そんな目で責められたけど、超絶に慈愛に満ちた瞳で封殺しておいた。
それからまばたきを3回する間、瞳に吸い込まれていくように。
最後に目をつむったとき、唇が湿る感覚がした。
人生で一番、重く感じたまぶたをゆっくりと開けて、真っ赤になってボロボロと泣いている女の子を目の前に捉えて。最初に感じた気持ちがまさかの“絶望”だったから。
俺はふたたびまぶたを閉じ、暗闇に意識を落とした。
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